出版社内容情報
刑務所の生活水準について、諸概念や刑罰論
・処遇論を手がかりとした理論研究に加え、
生活水準を規定する概念の生成過程に着目し
た歴史研究、そしてドイツ行刑を対象とした
比較法研究を通じて、刑務所の目指すべき方
向性の提示を試みる。
日本の刑務所の生活水準は、漠然と「恵まれ
ている」という評価をされがちであるが、実
際には様々な制約を課され、他者との自由な
コミュニケーションをとることもままならな
い。また生命や健康を守る医療も貧弱な刑務
所内の生活実態を見れば、その評価は揺らぐ。
一方、受刑者処遇について国際社会のスタン
ダードを定めた国際人権文書や、ドイツの法
律の中には、社会との同一化という原則が定
められている。同一化原則とは、「刑務所に
おける生活は、社会の生活状態にできる限り
同一化されるものとする」という内容の指針
のことである。この原則は時代が下るにつれ
て重みを増していき、今では、行刑の基本原
則としての地位を確立するに至っている。こ
こにはそもそも日本と発想の違いがあること
が見てとれる。
この違いはなぜ生じるのであろうか。本書
は、そのような疑問から出発した。
目次
刑務所の生活水準を考えることの意味
第1編 刑務所の生活水準に関する理論的前提(刑務所における生活水準の現状;刑務所における生活水準をめぐる概念 ほか)
第2編 日本における「行刑の社会化」(明治・大正・昭和戦前期における社会との近接化の諸相;戦後における「行刑の社会化」の展開 ほか)
第3編 ドイツ行刑における社会との同一化原則(同一化原則前史―自由刑草創期から19世紀行刑改革まで;同一化原則の萌芽と衰退―ワイマール共和国期から第三帝国期まで ほか)
第4編 「市民」としての受刑者像の確立に向けて(刑務所の生活水準モデルの構築;生活水準の設定基準および正当化根拠に関する考察)
著者等紹介
大谷彬矩[オオタニアキノリ]
1988年山口県に生まれる。2017年九州大学大学院法学府博士後期課程修了、博士(法学)、九州大学大学院法学研究院助教。2019年立命館大学立命館グローバル・イノベーション研究機構専門研究員。2020年日本学術振興会特別研究員PD(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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