出版社内容情報
法律時報誌における同名の鼎談企画を出発点とし、現代日本社会に「憲法の土壌」があるかを徹底的に議論する。
社会的イシューの中心に位置しながら、その取扱いが表層にとどまりがちであり、社会基盤の要たる要請を憲法がどこまで受け止め、その学知を息づかせることに成功しているか、批判的な議論を通じて掘り下げることを目的とする書である。
さらには、政治、文学、歴史といった多用なファクターから、「知」のあり方そのものにも迫る一冊。
内容説明
憲法について、より根底的な地平から大きく、そして厳密に考えるために。鼎談と論攷を通じた批判的討議から、知のあり方を彫琢する。
目次
鼎談 憲法の土壌を培養する
近代国家の構造と法による「闇」への対処
憲法・国制・土壌
改革・階級・憲法―日本社会の歴史的条件
宣言的判決の生理と病理
木庭顕、ある人文主義者の肖像―「法律時報」誌上における蟻川・木庭・樋口三氏の鼎談に接して
簡単な応答
裁判における事実の解像度―民事訴訟法三二一条一項と自衛官合祀拒否訴訟最高裁判決
政治的階層と知的階層
私権力と公共
著者等紹介
蟻川恒正[アリカワツネマサ]
1964年生まれ。東京大学法学部卒業。日本大学教授
木庭顕[コバアキラ]
1951年生まれ。東京大学法学部卒業。歴史学者
樋口陽一[ヒグチヨウイチ]
1934年生まれ。東北大学法学部卒業。憲法学者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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まさにい
5
政治学と憲法の関係は切っても切り離せないものなのに、両方を総合した書籍は少なすぎる。憲法の土壌はこれまで、解釈論が中心であったが、その法文の拠って立つ基本(その当時の政治状況)とリンクさせる必要があるはずなのに。樋口先生が東大の教授になって以来この基本が浸透してきたようにも思われるが……。最近、といっても55年体制が崩れ、自民党が野党時代に出した憲法改正案以来、学者の間で立憲主義の危機が叫ばれてきたように思われる。樋口先生の最後の言葉、「公の私物化」「私の公化」は今の状況を端的に表していると思う。2022/10/20
jntdsn13
2
法律時報掲載の、政治学・歴史学にまで風呂敷を広げた憲法学という野心的な鼎談をベースにした論文集。話題の足立論考は、ある種のプロレス風味に書かれている点不明瞭さもあるが、ローマ法という専門外の者が突っ込みづらい「魔法の杖」で他分野に容喙して回る近年の木庭に対して(そして、講義中「内輪」の者とその外の温度差に対して)痛い点をついているようにみえ、反論もあまり奏功していなくに見える。収録論文は楽しく読めたが、肝心の鼎談はいまだにインテリの大衆化が受け入れられないお爺ちゃん達の対話と言う感じでこれも痛々しかった。2023/02/26
Go Extreme
1
憲法の土壌を培養する 近代国家の構造と法による「闇」への対処 憲法・国制・土壌 改革・階級・憲法―日本社会の歴史的条件 宣言的判決の生理と病理 木庭顕、ある人文主義者の肖像 簡単な応答 裁判における事実の解像度―民事訴訟法321条1項と自衛官合祀拒否訴訟最高裁判決 政治的階層と知的階層 私権力と公共2022/07/02
フクロウ
0
蟻川・木庭・樋口の2018年の同名鼎談に、木庭のいう意味での政治・デモクラシー・法理解あるいは問題意識を踏まえた毛利・林・西村・岡野論稿、蟻川・木庭・樋口の追加論稿、それに物議を醸すであろう足立論稿が並ぶ。笑 鼎談と木庭「政治的階層と知的階層」は2022年日本のどうにもならない窮境に対して非常に見通しがよい分析である(特に大学改革周りと近代以来の信用不在のデシフィット)。また林の国制としての憲法と実定法としての憲法の分類のおかげで非常に見通しがよくなった。2022/05/28