出版社内容情報
「痴漢」という犯罪に関わる者の苦悩と葛藤を通して、痴漢事件の内実、日本の刑事司法の問題を描き出す小説。
内容説明
刑事弁護に取り組む弁護士たちが描く本格的小説!電車内で発生した痴漢事件をきっかけに動き出す様々な人間模様。そこから見えてくるのは、被害者・加害者・弁護人・検察官・裁判官それぞれの悩みと葛藤、そして日本の刑事司法の厚い壁。物語に出てくる刑事手続についての解説も収録し、面白くて勉強になる、新感覚の刑事司法小説。
著者等紹介
大森顕[オオモリアキラ]
弁護士、かたくり法律事務所。2000年10月弁護士登録、2016年4月~2019年4月最高裁司法研修所弁護教官(刑事)
山本衛[ヤマモトマモル]
弁護士、今西・山本法律事務所(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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てくてく
4
痴漢の加害者、被害者、加害者の家族、身に覚えのない痴漢で逮捕された人、そして彼らに関わる法曹のそれぞれの立場から見た痴漢を描いている小説。痴漢やそのほかの犯罪の弁護における正義とは何かについて考えさせられた。痴漢依存症と考えられる人の描写もあって、学生に勧めたい。2022/11/09
亀子
0
著者は弁護士ですが、実用書じゃなくて小説です。ハラハラドキドキのストーリーは無いけど、事件に関わるたくさんの人達の心理描写が丁寧で読み応えがあります。決して特別な世界ではなく、いつ自分が関わるかもしれない痴漢事件。あまり積極的に知りたい世界ではありませんが、知っておかなければいけない世界だと感じました。単純ではない。2024/06/05
チバ
0
なんとなくしか知らなかった刑事事件の流れがよく理解出来た。それぞれの立場がどんな思いなのかも知る事が出来た。弁護士の方が書いた本だからか弁護士の段が特に強い思いを感じた。拘留に対する歪んでいる!という叫びとか。自分も思えば何度か痴漢に会ったなと思うがトラウマになる事はなくすっかり忘れている。2章での被害者の気持ちに触れ今でも痴漢は存在し苦しんでいる人がいるのかと思うと悲しくなった。ただ全体的にはどんなに間違っていても被疑者には自分しかいないのだと割り切れない思いを抱えながら寄り添う弁護士の姿が印象的だった2023/01/25
ユウ
0
新進気鋭の刑事弁護人を中心に、卑劣で許し難い存在とされる「痴漢」を弁護する理由を記した小説。痴漢に限らず、刑事弁護人がなぜ被疑者・被告人の言い分を主張するのか、また、なぜ罪を犯した人間を弁護するのか、一義的でない正義についても示す。若手法曹の苦悩や刑事手続の壁など、リアルに描かれている。中でも、被疑者・被告人の言い分が、有罪・無罪の結論次第でいかようにも評価されてしまうとの点は、強く首肯せざるを得ない。若手法曹にも是非読んでもらいたい一冊であった。2022/10/24
芳屋歌丸
0
日本評論社の新刊案内に珍しく小説が入っていたので、興味から購入。弁護士が書いた刑事司法小説なので、一文が短く含みの少ない法律家的な文章になっている。そのため、緻密な伏線回収や人間関係の描写はあまりなく、推理小説的な面白さはない。ただ、いわゆる痴漢冤罪問題もそうだが、痴漢をめぐる刑事司法のあり方や実務を知るには手軽に読みやすい作品なので、法学部の刑訴法の初学者におすすめしたい。2022/10/14