内容説明
なぜ経済学史を学ぶのか?時代とともに社会も経済も変化します。社会や経済を支配するメカニズムも変化し続けていると考えるのが自然です。物体の落下法則は、ガリレオやニュートンの時代も現在と同じだと考えていいでしょうが、社会や経済の仕組み・制度や人びとの振る舞いは、時代を通じて同じではないのです。いや同じ時代であっても、国、地域によって異なっていると考えるべき理由があります。とりわけ、経済開発や経済危機への対応という文脈で、これまで経済学は、一つの経済政策をあらゆる国に自信満々に適用して失敗してきたのだと思います。
目次
第1章 近代国家登場!(近代国家とは?;利己的な個人―社会契約論 ほか)
第2章 自由放任主義の台頭(なすに任せよ!―フィジオクラット;見えざる手―スミス ほか)
第3章 自由放任主義へのいら立ち(階級対立―シスモンディ;労働者の惨状を見よ―社会主義思想 ほか)
第4章 自由放任主義、ついに敗れる(市場の失敗―ピグー;福祉国家の到来―三人の政治家 ほか)
第5章 小さな政府の逆襲(インフレの責任―フリードマン;財政赤字の責任―ブキャナン ほか)
著者等紹介
西孝[ニシタカシ]
杏林大学総合政策学部教授。1961年東京生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業、同大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。専攻は、マクロ経済学、国際金融論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
to boy
19
思った以上の内容で良かった。「経済学は科学ではない、どちらかというと社会思想に近い」という著者。17世紀のホッブスから現代の経済学をわかりやすく述べています。そして何よりも政府の役割はどうあるべきかについて詳しく書かれているところも良い。政府はどこまで市場に介入すべきかを巡る現代の論争もその長所、短所が分かりやすかた。いつか再読したい一冊。2023/07/01
to boy
11
経済学にまったく疎くて新聞をにぎわす金融政策の意味を理解できず再読。経済学の歴史をとてもわかりやすく記述されています。利益を追求する個人の自由を尊重することで市場が調和すると言う意見に対し、それでは社会的な不都合(経済格差、公害など)が生ずるため政府の関与が必要だとする意見。いやいや、政府だって神様ではなく選挙で当選するため地元への利益誘導など不完全だという意見。いろいろな学説があって経済学って意外と面白いかも。2023/12/22
takao
1
ふむ2024/09/25
293
0
「いずれにしても、そういう状況下では、人びとの貯蓄が必ず投資されるという保障はないということになります。そして、投資されない貯蓄があるということは、需要されない生産物があるということです」(p189〜190) 不況に備えて行われる貯蓄が不況の原因なんて驚いた。だけど、話はそんなに単純ではない。なぜなら周りも貯蓄をしているから。加えて政府の行う財政出動によってそれまで使えなかった人々が使うことで乗数効果で経済が回るから、そのまま貯蓄をしていても問題ない。でもこれ、課税の正当化にも使われそうで嫌だなあ。2024/11/02
Nianko
0
伝統/司令(政府)/市場のバランス 時代背景の理解により納得する理論 △普遍性 科学的客観性2024/03/03