出版社内容情報
●新しい学問分野「計算科学」の
息吹きを紹介
20世紀後半のコンピューターの急激な普及・発展は,研究,開発,ビジネスの場を一変させた。中でも物の形や物への力のかかり方,熱の伝わり方など,いろいろな研究や製品開発などに使う,コンピューターシミュレーションは研究の場でも,開発の場でも欠かせない“道具”になっている。しかし,今やシミュレーションは,かつてのシミュレーションを超えて単なる“道具”以上の存在に脱皮した。シミュレーションをすることで今までわからなかったことが解決できるようになってきた。こうした新しいシミュレーションの使い方がでてきたのを受け,計算科学・工学という学問分野が誕生した。新たに誕生した学問分野の息吹きを届ける。
●コンピューターシミュレーション,計算科学の入門書に最適
コンピューターの進歩とともに計算科学は,自然科学をベースにした科学技術だけでなく,社会科学,芸術分野へも対象を広げている。このような状況で,多くの人に計算科学の現状と将来を知ってもらうのに良い時期と考え,高校生,大学生,計算科学に興味のある大学や研究機関の研究者や教育者,企業などの研究者,技術者,研究開発部門の管理者などに,計算科学の歴史や推進体制,使い方まで解説し,入門書として最適な構成になっている。
●全てオリジナル論文で,海外の一線の研究者も執筆
今回の別冊日経サイエンスは,すべて書き下ろしの論文。日本の計算科学・計算工学の専門家はもちろん,世界的にもこの分野をリードしているパデュー大学のJ.R.ライス教授が全体像をわかりやすく解説,ニュージーランド・マッセイ大学のL.グロス講師も計算科学のプログラムの具体例について執筆している。日本の執筆陣も,大学教授,高等専門学校で実際に計算科学の教育に当たっている教官から,企業で計算科学を具体的に応用している研究者まで幅広くカバーしている。
目次
CHAPTER1 計算科学とは何か
■ 計算の,計算による,計算のための科学
田子精男
■ 21世紀の計算科学・工学
J.R.ライス
CHAPTER2 高速コンピューターが開く計算科学
■ 計算科学誕生への道
田子精男
■ 並列処理でシミュレーション
中村純/日置慎治/青山幸也
■ モデル化からプログラミングまで
早勢欣和/川田重夫
CHAPTER3 可視化が開く世界
■ CGという顕微鏡と望遠鏡
田子精男/鳥山晃嗣
■ ミクロな世界を見る
宮地英生/高岡雄司/宮川博夫/半田享/高原浩志
■ 身の回りの物を見る
南多善/白山晋/高原浩志/中野英一/宮地英生
■ 地球・宇宙規模の現象を見る
宮地英生/高原浩志/白山晋
CHAPTER4 計算科学を支える道具たち
■ シミュレーションで問題解決
川田重雄/田子精男/梅谷征雄
■ シミュレーションを支援するシステム
川田重夫/藤田彰/ブンミー・チュンポル/中村恭志
■ シミュレーションツールPSILABで渦や電波を可視化する
平山裕之/太田忠/猪貝光祥/山賀晋/久保昭一/石田潤
■ FEELで有限要素法の問題を解く
藤尾秀洋/土肥俊
■ ウェブでシミュレーションを支援する
松本正己
■ 科学・工学のための問題解決システム
保志克則/藤井義巳
■ パッケージプログラムVECFEMで偏微分方程式を解く
L.グロス
■ 生物のように進化するプログラム 松本俊二
■ シミュレーション結果をグラフ化で検証する
真鍋保彦/川田重夫
CHAPTER5 計算科学と教育
■ 問題解決環境としての教育
日置慎治/中嶋航一
■ 教育の現場で問題解決支援を応用する
寺元貴幸
付録:計算科学関連ホームページ