出版社内容情報
カーボンニュートラルを宣言する企業が増大しています。いまやこの宣言なしにはビジネスは成り立たなくなりつつあるのです。投資家もまたカーボン排出企業への出資・投資を拒否しはじめています。資金面だけでも気候変動が企業の戦略に及ぼす影響は、広範で、また「待ったなし」の状況です。
こうしたなか、企業が感じている危機感以上に、この問題を重要視しているのが世界の金融機関です。そして、投融資というツールを通じた、変革への期待(圧力)は、企業側が考えているより激しいものがあります。その一方で金融機関自体がカーボンニュートラルであるかが問われています。海外の多くの金融機関はこのようなトレンドに対応し自らを改革しています。
例えば、英大手のスタンダードチャータード銀行は、石炭への利益依存度が高い企業への投融資を取りやめる方針を明らかにしており、2021年から段階的に実施するとしています。まず2021年から、石炭への依存度が100%の企業を投融資先から外し、25年には60%超、27年に40%超と基準を徐々に厳しくし、最終的に2030年には依存度10%超の企業には関与しないことを公表しています。同様の動きとして、ロイズ・バンキング・グループは、投融資先の炭素排出量を「2030年までに5 割超減らす」と宣言しました。
このような新しい金融の潮流は、サステナブル・ファイナンスと呼ばれています。この新しい金融をめぐって各国の駆け引きは激しくなっており、グリーンBIS規制の制定なども話題となっています。
本書では、そうした世界の新たな金融機関の動き、新ルール制定の思惑を解説し、周回遅れも甚だしい邦銀がどのようにして対応すべきかを明らかにします。
内容説明
日本は新しい金融に対応できているのか。持続可能な金融を意味するサステナブル・ファイナンスが、世界を席巻している。目先の「利益」や「市場」などを重視してきた金融の在り方が、中長期の視点で「環境」や「社会」を優先する新しい価値観で見直され始めている。弱肉強食やむなしとする強者の論理は、弱い人も取り残さない包摂の論理にとって代わられつつある。新しい金融の指針は何か、お金の流れはどうなるのか、規制はどういう形になるのか、銀行はどういう対応を迫られるのか、などを日経新聞編集委員が最新情報にもとづいて解説。
目次
1 新しい銀行像の模索(浮かび上がる5つの指針;時代を開いた先駆者たち)
2 お金の流れを変えろ(タブーファイナンス―問われる因習;サステナブル・ファイナンス―金融の新しい流儀)
3 変わる枠組み、変わる銀行(公的機関・投資家が突き付けるサステナブル基準;グリーン・バーゼル規制の足音;銀行版「文化大革命」)
4 日本と邦銀の行方(再び遅れる日本)
著者等紹介
太田康夫[オオタヤスオ]
日本経済新聞編集委員。1959年京都生まれ。82年東京大学卒業、同年日本経済新聞社入社。金融部、チューリヒ(スイス)支局、経済部などを経て現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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