内容説明
平和と経済統合の理想から出発したユーロは、当初からの構造矛盾を克服できず、南欧諸国の経済危機を拡大させている。この経済・金融危機は全世界を震撼させる大恐慌へと発展する勢いだ。独仏伊など欧州各国の利害対立や、国際機関の行動、深まる危機の様相を明快に解説。
目次
第1章 大恐慌の神話
第2章 危機は今回もアメリカから欧州へ
第3章 危機は周辺から始まる
第4章 インフレに群がるマネー
第5章 ギリシャ債務不履行の政治経済学
第6章 苦悩するリーダー国ドイツ
第7章 危機拡大の構造
第8章 ユーロ分裂のシナリオ
著者等紹介
竹森俊平[タケモリシュンペイ]
慶應義塾大学経済学部教授。1956年東京生まれ。81年慶應義塾大学経済学部卒業。86年同大学院経済学研究科修了。同年同大学経済学部助手。86年7月米国ロチェスター大学に留学、89年同大学経済学博士号取得(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ライアン
8
ちょっと難しくて読むのに時間かかった。ユーロという仕組み自体に無理があるね。今は延命治療的な感じで何とか保ってると。どっちに進んでもドイツには茨の道しか残ってなくて大変だな・・・2016/01/10
日の光と暁の藍
4
著者は、大恐慌とリーマンショックによる金融危機とを比較し、この二つの危機は共に、アメリカから欧州へ波及し、どちらの時代にも欧州には危機が拡大する構造的な問題があったと述べる。ギリシャ危機と呼ばれる問題の原因と背景が、「経済が成熟するほど『金融業は不要化する』」(P118)、周辺と中核、不可能性の三角形、TARGET、逆バブルなどの言葉を用いて語られている。興味深いと感じた所は、ヒト、モノ、カネ、の自由な移動を促進させるための統合は、大量の移民の発生は望まなかったという矛盾である。非常に読み応えがあった。2017/12/31
KAZOO
4
竹森先生の著書は国際経済学の分野では比較的分析結果がユニークでかなり辛口でいつも興味を持って読ませてもらっています。この著書も2年前のユーロ危機を分析していますが、切り口が鮮やかで資料も現地のものをかなり引用していて信頼のおけるものだと感じました。2013/07/26
プラス3
3
なんで新書で出たのか不思議なくらいの出来の良さ。特に7章のターゲット・印刷機のはなしは新鮮だった。8章のユーロ分裂のシナリオはどちらも大きな傷跡が残るモノ。万能薬や魔法の杖は存在しないということですな。2012/11/21
Melody_Nelson
2
ギリシャ問題に端を発したユーロ危機について手軽に知りたいな、という意図で選んだにも関わらず、この方面についてはさして明るくないため、ところどころ少々理解できないところがあり、サラッとは読めなかった。とはいえ、なるほどと思う箇所も少なくなく、そもそものユーロ発足についての適当さもわかり、それなりに勉強になった。2015/07/29