出版社内容情報
スペインによる南米征服、インド大飢饉、スターリングラードでのドイツ敗戦――。異常気象がいかに世界の歴史を変えたを描く!
内容説明
海面水温の変化、特にエルニーニョに由来する異常気象をめぐる5つのエピソードを、歴史ドラマに仕立てて掘り下げる。突如襲う予想外の気候の変化によって歴史が思わぬ展開を迎えた例を、豊富な裏付けデータと共に紹介する知的読み物。
目次
第1章 征服者を導いた「神の子」
第2章 イースター島の先住民はどこから来たのか
第3章 アジアの大飢饉と新しい植民地支配
第4章 ナチス・ドイツを翻弄したテレコネクション
第5章 世界食糧危機(1972年~1973年)
エピローグ エルニーニョは今後も人類に問いかけ続ける
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
absinthe
182
歴史上の転機が天気に左右されていた。気象学、経済学、歴史を横断して解説する本。知的好奇心を満足させる良書。ピサロのペルー征服、ヘイエルダールの航海、ドイツ軍のモスクワ攻略、世界的大飢饉など。エルニーニョ、ラニーニャ。これらの現象の現在解っている現代の知識と、それが及ぼす影響について。わかりやすく歴史を交えて語る。こういう楽しい本は翻訳物と決まっていたが、最近は国産の良書が増えてきた気がする。今でもエルニーニョの長期の予報は難しい。2021/06/23
やっさん
20
異常気象=エルニーニョなんですな。カリフォルニアの海は南極からの海水が北上しているから意外と水温が低い。へぇ=。ピサロのインカ帝国侵略は3度目の正直。例年なら南下が難しいところ、エルニーニョで3度目はすんなり上陸。イースター島へ渡ったのは西からか東からか。19世紀末、エルニーニョ由来の大飢饉がインドで発生。それでもインドから穀物を英国に輸出したのはリットン調査団のリットンの父・叔父とな。へぇ~。ナチスのモスクワ侵攻は5週間延期されたことによって寒波に阻まれた。もし予定通り進行していたら…2024/01/21
雲をみるひと
10
異常気象が世界史に与える影響を論じたような印象のタイトルだが、実際はエルニーニョとその研究の進展を歴史事実という実例を通じて解説した本。やや専門的な気象学に振りすぎているきらいもあるが、教科書的な語彙が実例を通じてわかりやすく解説されており、個人的には凄くわかりやすかった。エルニーニョはかなり一般的に知られた現象なので、エルニーニョをリファーしたタイトルでもよかったかもしれない。2019/06/25
あんぽんたん
5
エルニーニョが歴史的なイベントに与えた影響を考察する。今年は暖冬だの台風が多いだの、そのようなニュースを聞いても日常生活への影響を少し気にするぐらいである。だがかすかにも思えるこの現象が、ここまで歴史を動かしていたことに興味深い。ピサロのインカ征服など、インカに到着→アタワルパを捕捉と簡単に事が進んだイベントと思っていたが、まずインカに到着するまでに多大な犠牲を払っていた点で驚きである。ナチス進軍時のソ連の冬将軍による防衛もイメージとはかなり異なっており、知識が一新された心地よさを味わうことができた2021/09/01
Masami.T.
5
誤字や言葉の誤用は多いが、それを補って余りある情報量。1970年代の世界食糧危機など、章ごとに五つのテーマ。たとえば、中学歴史や高校世界史Aでは、いつの間にかドイツが連合国に対して降伏していた。少し歴史の本を読めば、その敗因はドイツがソ連の冬を甘く見ていたからという事までは書いてあるが、1941年は実は強いエルニーニョ現象発生の年で、250年ぶりの大寒波。また、その翌年はラニーニャによる季節外れの土砂降りなど、データを用いてドイツ側が想定していなかった天候を具体的に示してある。2020/09/06