出版社内容情報
中東はなぜ民主主義体制が構築されないのか。中東は、(1)オリエント集権体制の遺産、(2)戦略的重要性・石油資源→集権(強大な軍)体制の必要性→そうした体制に絡む既得権の存在、(3)能力主義の困難といったメカニズムになっており、かつてのオスマン朝のような高度集権的な体制で開放的人材登用でもしなければ現状の打破は難しい。
日本では、このように民主的とはいえない政権が多い現在の中東の状況を、イスラームによって説明しがちだが、それは実は無理筋。他の伝統的な一神教と比較してみても、イスラームの教義自体が民主主義の否定で取り立てて突出しているわけではなく、初期のイスラーム共同体には合議によって指導者を選出した例も存在していた。
現代の中東を理解するに当たっても、イスラーム化以前の中東をも視野に、同様の条件下の他の地域との比較という視点が必要なのではないか。そしてそうした視座を採用したとき、イスラーム自体もまた、古代以降に蓄積された中東の歴史の産物と捉えることができるのではないか。本書は、そうした問題意識によって中東社会のメカニズムを日本と比較して明らかにしようという試みである。
内容説明
なぜ中東に民主主義が根づかないのか。なぜ日本の権力者は決断できないのか。先史時代にさかのぼる比較によって中東と日本の権力構造の違いを浮き彫りにし、それを支える「古層」的な思考枠組みを大胆に提示する比較文明論。環境と人間の相互作用から権力構造を解明。
目次
1 大仏像爆破と廃仏毀釈、聖像破壊
2 沙漠が一神教を生み出したのか―環境と人間行動
3 集権的権力と分権的権力―その自然・社会環境的起源
4 気候の寒冷化と古代国家の成立
5 オリエント集権体制の形成
6 オリエント集権体制の完成
7 中東の集権体制は変化するか―分権的日本との比較において
著者等紹介
立花亨[タチバナトオル]
拓殖大学政経学部教授。1981年慶應義塾大学法学部卒業、同年中東経済研究所に入所。2004~13年日本エネルギー経済研究所中東研究センター研究理事、04年拓殖大学政経学部助教授、05年より現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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