ストックホルムへの廻り道―私の履歴書

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  • サイズ B6判/ページ数 220p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784532176235
  • NDC分類 289.1
  • Cコード C0047

出版社内容情報

研究費が不足する。産学共同研究にして企業から研究資金の支援をいただこう――
特許料で研究する人はいるが、病院までつくったのは私が初めてではないだろうか――

2015年にノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智・北里大学特別栄誉教授が歩んできた82年の生涯。それはアカデミズムのエリートが歩む最短経路からは大きくはずれ、前を照らす光もささない険しい山あり谷ありの文字通り「ストックホルムへの廻り道」だった。
異色のノーベル賞学者の自伝にしばしば顔を見せる自賛の言葉は、無邪気な明るさに満ち、多くの読者に希望を与える成功譚になっている。

読みどころは北里研究所でポストを得た大学紛争の余韻が残る70年代前半に、研究を続けるための資金を確保するために米国企業と産学協同研究を始めていくところ。その研究も「流行に乗らない」ことをモットーに新化合物を探すこと。しかも従来であれば「病原菌の働きを抑える」とか「酵素の機能を妨げる」といった活性をまず考え、その活性を持つ物質を探すのが研究の主流だったが、最初に採取した土から化合物を見つけ、性質や活性を調べるという逆転の発想がノーベル賞受賞につながったことだ。受賞理由でもある、のちに寄生虫を殺す薬として動物だけでなく、アフリカなど熱帯の国の感染症への特効薬として莫大な利益を挙げることになる「エバーメクチン」は静岡県伊東市の土から発見されたものだった。
このような常識破りの逆転の発想は、経営危機に瀕していた名門・北里研究所の再建でも発揮され(エバーメクチンの特許料が役立った)、14年間理事長を務めることになった女子美術大学でもばらばらになっていた教授陣をひとまとめにする役割を担わせることになる。
読む人を必ずややる気にさせる希有な自伝である。

内容説明

苦境を乗り越え、世紀の発見へ。誠を尽くせば、道は開ける―国をまたいだ産学共同研究で、ノーベル生理学・医学賞受賞。微生物と一緒に歩んだ半世紀を、数々の思い出と共に振り返る。

目次

第1章 一期一会
第2章 自然の中で育つ
第3章 科学の道へ
第4章 はばたく
第5章 世紀の発見
第6章 研究の経営
第7章 芸術とふれあう
第8章 仲間とともに
第9章 郷里を大切に
第10章 至誠惻怛

著者等紹介

大村智[オオムラサトシ]
1935年山梨県韮崎市出身。58年山梨大学学芸学部自然科学科卒業。58年東京都立墨田工業高等学校教諭。63年東京理科大学大学院理学研究科修士課程修了。山梨大学助手を経て、65年北里研究所入所。75年北里大学薬学部教授。2001年同大北里生命科学研究所教授。02年同大大学院感染制御科学府教授。07年同大名誉教授。13年から同大特別栄誉教授。1981年から北里研究所監事、理事、副所長、所長などを歴任。93年から女子美術大学理事、理事長などを歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

シフォン

33
2015年にノーベル生理学・医学賞受賞。微生物の産生する天然有機化合物の感染症治療薬の研究者だが、学生時代からその道を目指していたわけではないのですね。大切なのは「一期一会」、すべての中心は、美術やスポーツという趣味、「健康管理」「研究推進(社会貢献)」が黄金のトライアングルとは。また、早い段階から企業との共同研究、特許料やロイヤリティ契約を考えていたなんて、まさに、「研究で経営する」、産学連携の成功例。美術にも力を入れていて、女子美術大の理事長に、美術館創設、陶芸に興味あり、温泉まで掘るとは。2021/11/27

すしな

14
097-21.先に読んだ「人間の旬」と同じエッセイもありましたけど、こちらは研究者の面よりも経営者的な部分の話が多かったです。あとから出来た北里大学とギクシャクしていた北里研究所の立て直しから、女子美術大学の理事をやったり、埼玉の北本市の北里大学メディカルセンターの立ち上げまで、起業家精神も持ち合わせている人なのだなぁと。今一部で話題のイベルメクチンの特許料が入ってきたのもあったみたいですが、ノーベル賞の受賞者には今の時点で使いみちがわからない研究をされている方も多い中、現世でだいぶ還元されてますね。2021/09/15

toshi

13
いきなり父親の話から始まり、終わったと思ったら母親の話、そしてようやく本人の少年時代の話が始まる。 学生時代から高校の教員時代の話が続き、3章の終わりに北里研究所の助手になり研究者の人生が始まり、物語もようやく面白くなっていく。 その後の研究人生は理系の私にとってワクワクする展開。その延長にノーベル賞が有るけれど、ことさら強調する訳でもなくサラッと流しているのがカッコイイ。2017/11/11

ピスタチオ

4
日経新聞を購読する父親から紹介されたため購入。研究者というと人間関係を軽んじて実験に打ち込むような印象があるが、筆者は「人との出会いを大切にする」という座右の銘を持つほど、人とのかかわりを重要視していたことが本書で書かれている。それがティシュラー先生との出会い、さらにはメルク社との売上比率歩合制交渉につながったと感じた。目の前の人間と真摯に接することで、いい仕事に出会えることを筆者の人生を通じて学ぶことができた。「共創」がキーワードとなった現代では今一度「人とのつながり」を顧みるべきではなかろうか。2020/04/29

Humbaba

3
他者から意見されたと場合に、それをそのまま受け入れるだけでは自分として納得できない。そのときにしっかりと自分の意見を主張して、自分の納得できる道を進む。場合によってはそれによって不利益を被ることがあったとしても、自分を曲げるよりは苦しい道を歩む方がよほど良い。2017/12/13

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