内容説明
成熟という言葉が似合う街ロンドンで、日本企業の男性駐在員と女性舞台演出家が突然、恋におちる。お互い離婚歴があり、分別も備えた者同士、気後れやためらいを感じながら不器用なつきあいが始まる…。人生で最高の舞台を、端正な脚本で細やかにしっとりと演出した、極上のラブストーリー。第1回日経小説大賞受賞作。
著者等紹介
武谷牧子[タケヤマキコ]
1975年、慶應義塾大学文学部英文科卒業。1995年、『英文科AトゥZ』で小説すばる新人賞を受賞。『テムズのあぶく』で、第1回日経小説大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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巨峰
56
最後の数頁、危うく涙がこぼれそうになったので良作認定した!!いまどき珍しい大恋愛小説です。渡英23年の女性の舞台演出家と、51歳の男性駐在員。彼女の暮らすテムズ川沿いのアパートメント。霧に煙るロンドン。人生の中頃を過ぎたバツイチの二人は、人生を川の流れに喩え、テムズ川に浮かぶ泡のように、河口まで人生の終わりまで流れていこうとするのですが・・・2016/09/11
あつひめ
35
武谷さん2冊目。日経小説大賞受賞作だそうだ。これもまた、韓ドラで見ることができそうな物語。恋をするじゃなく恋に落ちた・・・そのものの展開に読んでいて恥ずかしくなってしまうことがいっぱい。ただ、いくつになっても恋はしていたいな~という気持ちにはさせられた。恋に年齢制限なんかつけたら老いる一方。心は求めても体がそれについていかないのもよくわかる。その歯がゆさ、切なさ・・・。高岡母のスマートで心のこもった対応が印象的。そんな女性になりたいと思った。2011/12/20
竹園和明
32
滑らかな滑り出し。初めて読んだ武谷牧子の作品は、落ち着いた大人の恋愛小説だった。英国駐在の企業戦士高岡50歳と、同じく英国で芝居の演出をしている聡美45歳。共にバツイチの2人はテムズ川に浮かぶあぶくのように自然に近づき河口へ流れ行く。しかし距離が縮んでもふと遠慮して言葉を飲む事もある聡美。その距離感が絶妙だ。色濃い日々のあと、残酷な結末が来た際の高岡の立ち振る舞いは立派だった。「ナイスジャーニー」と送った聡美も。最後の数頁、片方が割れてしまったのではなく1つになったあぶくを、見送った気がして涙が落ちた。2017/01/23
きさらぎ
10
大人の恋愛小説です。出会いから一年余りの短い時間の中で、高岡が誠実に接し、もう恋愛などすることがないと思っていた聡美の心がゆっくりと解れていく様子が無理なく自然に描かれています。お互いが惹かれあいながら、踏みとどまったり、躊躇したりするところが、英国で暮らすこの年齢の日本人らしく好感がもてます。別れが近づく場面では、二人と同じように涙を拭うこともなく流れるままに。忘れられない本になりそうです。2016/10/15
青豆
4
日経小説大賞受賞作であり人生で最高の恋を描いた大人の恋愛小説。酸いも甘いも噛み分けた男女が異国(イギリス)で出逢い恋に堕ちる。恋をするのに年齢は関係なくお互いの相性の問題なのだろう。韓流ドラマか、ハーレークイーンの様な味わいのある作品が日本のビジネスマンの象徴である日経小説大賞に選ばれるというのが面白い。しかし結末が余りにもお粗末なのが残念。2014/02/24