出版社内容情報
まえがき
電気工学の学習分野の中に電気回路という科目がある.本書は著者がいままで専門学校などで授業をしたもの,および社会人教育の場で実務的な講習会を行った際の講義ノートを整理して,それらをまとめたものである.
電気回路という科目は幅と奥行きがあり,電気工学の最も基本となる事柄を受け持つものである.そのようなわけで,電気工学は電気回路に始って電気回路に終るとも言われている.そしてまた,電気の専門分野に関係している者ならば,高い低いにかかわらず越えなければならないハードルでもある.
その内容も発光ダイオード1個を乾電池で点灯するものから電気機器の制御回路,高圧受電設備など,複雑で危険を伴う難解なものまで広範囲におよぶのが現状である.
山に登るとして,頂上などの一つの目的地へ到達する道は一通りではない.途中で植物採集をしたり,草の庵で宿泊したりすることもある.自分がそれなりに適する道を見つけることも人生の一齣(ひとこま)である.著者が過去において道を模索する人たちとともに歩んだ内容をふり返ってできたのがこの本である.
本書はそのような立場にある人達の電気回路の入門書として,大学や専門学校で初めて電気回路を学ぼうとする学生諸君や,電気設備,その他電気関係の業務で活躍されている方々がそれぞれの受容の程度に応じて,少しでも分りやすく,少しでも早く,それらの課題に対処される手段として,お役に立つことを常に心がけて書いたものである.
以上のようなわけで,基礎事項にウエイトを置き,描写はできるだけ現実性をもたせるように配慮したつもりである.
また,第6章記号法においてはその表示の名称をそれに用いられる式の型を限定的に定義するなどの工夫をこらした.
したがって,本書は著者の独自性がインパクトされる面もあると考えられる.それは一つの方便として受け取って頂きたい.本書によって今まで難しい,暗闇であった道が一本の光によって打開され,わかる糸口になれば,この本の目的は達したことになる.
最後に本書の刊行企画のご縁をさずけて頂いた日刊工業新聞社,本社編集部長の鷲野和弘氏並びに編集担当の清水崇氏そして常に献身的なご協力,変わらぬ励ましと助言をして下さった日刊工業出版プロダクション制作担当の小川純子様にあつく感謝の意を表します.
平成13年11月 著者しるす
<<目 次>>
まえがき…ⅰ
第1章 直流回路
1.1 直 流…1
1.2 オームの法則…2
〈coffee time 一休みは人生の潤滑油なり!!〉…3
1.3 抵抗の直列接続…5
1.4 抵抗の並列接続…6
1.5 抵抗の直・並列接続…8
1.6 起電力・電圧・内部抵抗…10
1.7 電 力…11
1.8 電源の内部抵抗と負荷抵抗…12
1.9 抵抗の接続と比例式…13
1.9.1 直列接続と電圧…13
1.9.2 並列接続と電流…14
1.10 量記号,量単位記号,単位換算…17
1.11 抵抗率…18
1.12 導電率…20
1.13 パーセント導電率…21
1.14 電力量とジュール熱…22
1.15 ジュール熱とカロリー…23
1.16 抵抗体の温度係数…24
1.17 分圧回路と倍率器…25
1.18 分流回路と分流器…27
〔練習問題〕…31
第2章 法則・定理
2.1 名称別回路…36
2.1.1 対称回路…36
2.1.2 重ね小箱の回路…41
2.1.3 立方体の回路…42
〈coffee time 数値1も大切にしましょう!!〉…44
2.2 ブリッジ回路…44
2.3 重ね合わせの理…49
2.4 ,△変換回路…52
2.4.1 平衡回路の等価変換…52
2.4.2 不平衡回路の等価変換…55
〈coffee time 電気回路も信じるものかな……!?〉…57
2.5 テブナンの定理…59
〈coffee time 電気回路との対決は2刀流が常法!〉…63
2.6 キルヒホッフの法則…65
〈coffee time 行列式と連立方程式との関わり!〉…68
〔練習問題〕…71
第3章 交流回路
3.1 電流の種類…75
3.2 正弦波交流の種類…76
3.3 単相交流の波形…78
3.4 周期と周波数…80
3.5 角速度…81
3.6 交流の一般式…82
〈coffee time 千里の道も一歩から!!〉…84
3.7 交流の平均値…86
3.8 交流の実効値…87
〈coffee time いつもいっしょ,いつもいっしょ!!〉…88
3.9 抵抗回路…92
3.10 誘導リアクタンス回路…93
3.11 容器リアクタンス…94
3.12 R,L,C直流回路…96
〈coffee time チチンプイプイ 一プクしよう!!〉…97
3.13 インピーダンスZ…98
3.14 R,L並列回路…99
3.15 R,C並列回路…99
3.16 R,L,C並列回路…100
3.17 交流電力…101
〔練習問題〕…102
第4章 ベクトル
4.1 現象を図示する…105
4.2 ベクトルとスカラ…108
4.3 ベクトルの表わし方…108
4.4 平面ベクトル…109
4.5 三角形法と平行四辺形…111
4.5.1 三角形法…111
4.5.2 平行四辺形法…111
4.6 交流回路とベクトル…112
4.7 実効値のベクトル…115
4.8 3相交流とベクトル…116
4.9 正三角のベクトル図…118
〈coffee time リラックスというベクトルもある!!〉…120
4.10 送電線回路とベクトル図…124
〔練習問題〕…125
第5章 複素数
5.1 複素数の一般式…127
5.2 複素数の図表示…129
5.3 複素数と電流との関係…131
5.4 コンデンサと複素数…133
5.5 コイルと複素数…134
〈coffee time ドッコイショ 一休みも良いかな!!〉…135
5.6 R,L直列回路…138
5.7 R,C直列回路…139
5.8 R,L,C直列回路…141
5.9 複素平面による複素数の和…142
〈coffee time ド・モアブルの定理について〉…143
〔練習問題〕…144
第6章 記号法
6.1 交流回路の表現法…147
6.2 三角関数と極座標との関係…148
6.3 極座標表示の積と商…151
6.4 複素数の積…152
6.5 複素数の商…153
6.5.1 直交座標と指数関数表示…153
6.5.2 極座標表示と指数関数表示との関係…154
〈coffee time 休憩するのも人生の一齣(ひとこま),道づれなり〉…156
6.6 ベクトルインピーダンス表示…158
6.6.1 コイルのベクトルインピーダンス…158
6.6.2 コンデンサのベクトルインピーダンス…158
6.6.3 ベクトルインピーダンス表示とその互換性…159
〔練習問題〕…162
第7章 相互誘導
7.1 電磁誘導について…165
〈coffee time お互いに励ます{振動}する心!!〉…168
7.2 自己誘導…169
7.3 相互誘導現象…171
7.4 結合係数…173
〈coffee time 目的地への道は複数あるということ!!〉…174
7.5 インダクタンスの和,差…176
〈coffee time 誘導の心は右手の発電から〉…179
〔練習問題〕…180
第8章 三相交流
8.1 3相交流の波形…181
8.2 3相起電力の発生…183
8.3 3相交流の三角関数表示とベクトル図表示…185
8.4 3相発電機の結線方法…188
8.4.1 3個のコイルと結線方法…188
8.5 3相交流の電線の数…190
8.6 スター接続の電圧と電流との関係…192
8.7 デルタ回路の電圧と電流との関係…195
8.8 変圧器のV結線…197
8.9 変圧器の回路例…198
8.10 V結線のベクトル図…199
8.11 3相平衡負荷のインピーダンス…200
8.12 3相交流の電力…202
8.12.1 スター回路の交流電力PS…202
8.12.2 デルタ回路の交流電力PD…202
〔練習問題〕…203
第9章 端子回路網
9.1 端子回路網の捉え方…208
9.2 2端子回路網…209
9.2.1 LEDの点灯回路…209
9.2.2 リアクタンス2端子回路網…209
9.3 4端子回路網とは…213
9.4 4端子回路の定義…214
〈coffee time トランジスタは人間と似ている!!〉…216
9.5 トランジスタの4端子回路網…220
〔練習問題〕…223
第10章 ひずみ波
10.1 ひずみ波の捉え方…225
10.2 フーリエ級数…226
10.3 ひずみ波の体験…228
〈coffee time sinにサインを送って変身!?〉…230
10.4 ひずみ波交流の生成…231
(1)ひずみ波が生成されない場合…231
(2)ひずみ波が生成される場合…232
10.5 対称波と非対称波…232
10.6 ひずみ波交流の実効値…233
10.7 ひずみ波交流の電力…234
〈coffee time お化けや幽霊はにぎやかな所には出ない〉…235
10.8 ひずみ波交流のインピーダンス…237
10.9 波高率,波形率,ひずみ率…239
〔練習問題〕…241
第11章 過渡現象
11.1 過渡現象とは…243
11.2 C,Lの電気的な性質の捉え方…244
〈coffee time ε イプシロン〉…246
11.3 抵抗とコンデンサの直列回路…247
11.4 抵抗とコイルの直列回路…250
〈coffee time 絶頂感とは悟りの境地なり〉…253
11.5 パルス波と過渡現象…255
11.6 パルス波の充放電波形…256
11.7 微分・積分波形…258
〈coffee time 神仏が下界に降りて来た〉…259
11.8 積分回路…260
11.9 微分回路…261
〔練習問題〕…262
〔練習問題,略解ならびに指針〕…265
索 引…287"
内容説明
本書は著者がいままで専門学校などで授業をしたもの、および社会人教育の場で実務的な講習会を行った際の講義ノートを整理して、それらをまとめた電気回路の入門書である。
目次
直流回路
法則・定理
交流回路
ベクトル
複素数
記号法
相互誘導
三相交流
端子回路網
ひずみ波
過渡現象
著者等紹介
上坂功一[カミサカコウイチ]
昭和13年京都に生まれる。昭和38年関西大学工学部電気工学科卒業
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。