内容説明
19世紀のアメリカ女性作家ケイト・ショパンが宇宙と孤独に目覚めた女性の心理を鮮やかに描く問題作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まふ
100
瀧田佳子氏訳荒地出版社版で読む。19世紀後半のアメリカ南部クレオール(フランス系移民)の上流階級における既婚女性の自覚と挫折を描いた作品。女性のセクシュアリティの解放がテーマだが、不道徳だと非難され有害とされたという。とはいえ、今日の感覚では過激な要素は読み取られず、歴史的な価値を有する作品というべきだろう。フランス本国を想起させる登場人物の名前が多く、アメリカが舞台であることを忘れそうになった。G1000。2023/09/26
毒兎真暗ミサ【副長】
34
様々な大学で研究対象となっている米文学。南北戦争、奴隷制度を交え白人女性に及ぼす影響を示唆する作品。可憐で美しいバカンスが【ある出会い】により静かに悲劇に沈んでいく……。主人公、女主人エドナは『ボヴァリー夫人』とよく比較されるが、絹が擦れるような儚い描写が、更に繊細な死を踊っている。巻頭を飾る『デズリの赤ちゃん』も遜色ない美。その瞞しの裏にある本当の悲劇は、奴隷を従える主人の罠を恍惚なまでに白い炎で舞い上がらせている。謎の手紙。翻弄される二人の女性。そこに在る全てが、なにもかも正しいと信じ込まないことだ。2023/07/08
秋良
13
【G1000】人種差別がまだ差別と思われていなかった頃の南部を描く「デズィレの赤ちゃん」。最後が衝撃的。夫は自分の出自を知っていて、罪を妻に被せたんだろうか。人妻が自我に目覚めていく過程を追った「目覚め」。ジェンダーなんてくそくらえとは思うけど、って言っても彼女は夫の稼ぎで生活してるとこあるしな。スカーレット・オハラくらいやってくれたら応援したくなったのに。2019/03/12
びーとぅん
10
短編『ディズレの赤ちゃん』と中編『目覚め』の2篇収録。『目覚め』を課題の一環として読もうと思って読み始めたが、最初に掲載されていた短編のインパクトがかなりのものだった。ローカル・カラーの強い作家として知られているショパンだが、個人的に感じたのは「アメリカっぽくない」ということ。ヴァージニア・ウルフを彷彿とさせる詩的な文体と曖昧ながらも鋭い社会への指摘が評価の高さの理由を感じさせた。結末については議論があるようだが、私はとにかく美しいと思う。それ以上の感想はいらないように思う。解説も充実していてよかった。2014/12/14
viola
7
短篇「ディズレの赤ちゃん」も収録。『目覚め』は、精神的・肉体的どちらにしても「目覚め」が感じられなかったような・・・。女性の自立と性的な目覚めを書いたと言われるアメリカで重要なフェミニズム文学ですが、かなり小粒な『アンナ・カレーニナ』と『ボヴァリー夫人』にしか感じられず、残念。ヒロインに全く共感が出来ませんでした。ついていけない(苦笑)文学的にどうかは置いておいて、なにが面白いのかさっぱり分からない。あれぇーーー、学部の時の講義で知って、是非とも読んでみようと思っていた作品なのになぁ。2012/05/06