出版社内容情報
内容説明
ミステリの形式や題材を更新しつつ、ジャンル外の諸要素も取り入れた現代ミステリを気鋭の作家10人から見定めるミステリ論集。
目次
二〇一〇年代ミステリの小潮流、あるいは現代ミステリの方程式
シャーロック・セミオシス―円居挽論
燃ゆる闘魂―森川智喜論
想像としての「社会派」―深緑野分論
推理と想像のエンターテインメント―青崎有吾論
特殊設定ミステリ プロトタイピングの可能性―白井智之論
唯物論的な奇蹟としての推理―井上真偽論
我們の時代―陸秋槎論
作家だって一生推してろ―斜線堂有紀論
あらかじめ壊された探偵たちへ―阿津川辰海論
連帯と推理―今村昌弘論
謎を多割せよ―「本格推理ゲーム」とSOMI論
あとがきに代わる四つのエッセイ、あるいは、ミステリの未来に向けて
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
中玉ケビン砂糖
62
「現代ミステリとは何か」とは言い条、「新本格ミステリはこれから何を目指すのか」という感。宮本同人の白井智之的発想応用論やアジア圏におけるミステリ受容の動向報告はともかくとして、未だに亡霊として作品論に居座り続ける「後期クイーン問題」において、イマの戦線に立つ作家たちはどう対峙し、あるいは超克を試みているのかという点でかろうじての一貫性。先達たちは「もし真剣に取り組むとするならば」という前提はありながらも「作家自身が物語内に投身し、知りえないことはまさに知りえないと明言する」ことで2023/09/03
さいと
4
2010年代の潮流として、ライトミステリ(ライト文芸)、特殊設定、異能バトルミステリ、新社会派、を挙げ、主に特殊設定、異能バトル系の作者評で構成されている。色々な見方があるなと感心させられた。2023/04/15
in medio tutissimus ibis.
2
推理小説をフェアなゲームとして扱おうとするばかりに、小説の登場人物とはいえ、人間が一つの事件に過不足ない情報を集めるのは事実上不可能ではないか、と思い詰めた人間たちの試行錯誤が面白い。自分がいかにミステリをパズルとして読んでいないかを再確認できた。彼らは例えばファンタジーを読んでドラゴン退治を本気で考えるのか、と意地悪なことを考えてしまうが、恐らくそういう事ではない。人間の死を意味づけることは、定命の人間にとって永遠のテーマだから、なのだろう。そういう気持ちは私にもある。パズルへの興味にはならないけれど。2023/06/01
tachibana
1
未読本があるので深緑野分と今村昌弘は読み飛ばし。各作家ごとに新しい読み方を授けてくれるような本だった。あと SF プロトタイピングという言葉は知らなかったので普通に勉強になった。2024/10/09
サイトー
1
2010年代までのミステリジャンルの状況を射程に論じられた評論集。現代ミステリのシーン(それ自体業界や一部界隈の意図したいものとも言えなくもないが)に目を通す意味で読んだ。10年代の潮流を大きく4つに見立てながら「現代ミステリ」を問う。作者論に立脚しているためなのか、作者への擁護がやや理想論に思える着地をしているものもある。本書では、スリリングな構成をしてまでその先にある解釈の地平に手を伸ばそうとする坂嶋竜「我們の時代――陸秋槎論」が一番読み応えがあった。2023/07/30
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