内容説明
“モナド(個世界)”の“ロゴスコード”が“モナドロギー”=“セカイ系”となるのに対し、モナド的な探偵小説ははたして成り立つのか?還元公理によって主体の唯一性を保証する論理観のもとでこそ、唯一の真理を特定する探偵小説が成立する。しかし、現在性を反映した、ループする時間、分岐し複数化する主体のもとで、たったひとつの真理を決定する探偵小説は極めて成立しにくくなっている。“セカイ系”的、モチドロギー的な探偵小説ははたして成立するのか、それとも別の探偵小説の形態の可能性はあるのだろうか。現代の最先端のミステリ作品と、分析哲学の様相論理をつきあわせる、スリリングな現代思想的探偵小説論。
目次
第1部 ロゴスコードの変容と探偵小説(二一世紀的推理法の諸潮流;社会派の輪郭、本格派の光と影―戦後探偵小説史一九六一~一九八五;一九九六年以降の探偵小説ジャンル新人の輩出と動向 ほか)
第2部 探偵小説と様相論理(ラッセル論理学における記述理論と還元公理;ラッセルの論理的原子論;様相論理をめぐる諸相 ほか)
第3部 探偵小説論への様相論理学的適用の試み(モナドロギーからみた“涼宮ハルヒの消失”―谷川流論;モナドロギーからみた舞城王太郎;『綺想宮殺人事件』とゲーデル問題 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Yapuppy
4
前提となる知識が不足しており用語に慣れていないので、何を書いているのか断片的にしかわからない。しっかり勉強してから読み直すことにする。2012/12/09
kaizen@名古屋de朝活読書会
2
推理小説を様相論理学と関係づけて説明している。 「モナドロギーからみた<涼宮ハルヒの消失>」のように具体的な作品に触れて,論を展開している。 ラキスタにおけるツンデレの元々の意味についての紹介のように,細かいことに拘っているところがよいかも。 探偵小説というよりは,推理小説と言った方が正確かもしれない。 推理小説を読む前,読みながら,読んだ後の三度楽しめる本だと思った。2012/11/11
あんすこむたん
2
「神のみぞ知るセカイ」が出てきたのは驚きました。戦後探偵小説史も参考になります。しかし肝心の第二部は頭が追いつかず。2013/01/12
缶
1
様相論理学について学びたいと思ったら探偵小説というよりオタクのサブカルチャーの本でした・・。でも、聞いたことのあるタイトルだが読んだことはない作品の紹介がかなりありましたが、だいたいどんな作品か分かるように書いているので問題はなかった。全体を通して言うと、様相論理学という新たな視点を与えてくれて、なかなか楽しめました。欠点は、一冊本としての編集や構成の悪さだ。一章はとにかく冗長だ。二章は分かる人にとっては正確性に不安があるし、内容も薄めで、かといって初心者にとっては具体性に欠く分かりにくい文章だ。2013/05/30
MKSzk
0
前作で食い足りなかった石持浅海に一節が割かれており、『扉は閉ざされたまま』や『水の迷宮』に感じた気持ち悪さがうまく分析されていた。そこまでは良いのだけれど、後半の分析は探偵小説と呼びがたい作品中心でちょっと首を傾げた。探偵小説の枠を広げたいのかな。