インターネットのためのAcrobat/PDF―Acrobat4技術詳述

インターネットのためのAcrobat/PDF―Acrobat4技術詳述

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  • サイズ B5判/ページ数 274p/高さ 24cm
  • 商品コード 9784501530204
  • NDC分類 021.4
  • Cコード C3055

出版社内容情報

はじめに

 次に挙げる組織の共通点は? 国税庁,IBM,アンチマクドナルド・抗議の会,FBI,ロサンゼルス・タイムズ,結晶成長研究所。そう,いずれも,Acrobat文書でインターネットに情報を発信している組織である。本書の執筆中,私はよく,次のように言われたものだ。「インターネットのためのAcrobat活用法,ですか…何か特別書くことってありましたっけ?」。たしかに,Adobe AcrobatのPDFファイルをWebサーバに載せるときの手軽さは,HTMLやテキストやマルチメディアのファイルを載せるときと変わりない。Acrobatをインターネットで活用するにはさまざまな方法があるから,それはこの本でもきちんと述べていく。
 だがこれ以外にも,書くことはちゃんとあるのだ。文書をPDF形式に変換したとき,後から何か編集を加えなくてはならないのか? それとも変換前に,リンクその他のハイパーテキスト要素を組み込んでおけるのか? 分野によっては,それがかなり重大な意味あいを持つ場合も多いのである。ここで,pdfmarkオペレータが大変役に立つ。本書は,このpdfmarkオペレータを解説した初めての書籍である。具体例もたくさん併載してある。ただし,プログラミングの知識はほとんど必要ない。
 Acrobatにはもう1つ,見すごされがちな機能がある。それは,Acrobat 3.0で登場した豊富なフォーム機能だ。Adobeは,AcrobatにJavaScriptプログラミング言語を組み込んで,このフォーム機能をさらに柔軟で便利なものにした。このホットな新機能を使えば,企業内のイントラネットでも,世界大のインターネットでも,Acrobatをもっとずっと効率的に利用することができるのだ。
 そしてAcrobat 4では,インターネット利用がブラウザからAcrobatそのものに移行している。Acrobat Web CaptureをWebブラウザのかわりに使って,Webサイト全体をPDFファイルとして保存することができるのである。
● 本書の対象読者と構成
 この本では,インターネットのためのAcrobat活用に役立つ最新技術を,大きな視野ですべてカバーすることを試みている。もちろん,さまざまな言語やインタフェースをすべて網羅することなど,できるはずもない。CGI,JavaScript,VBScript,ASP(Active Server Pages)…ちょっと挙げてみただけでもこんなにあるのだから。本書の執筆の重点は,初心者にはすぐ使える具体例を紹介し,熟練の開発者にはさらなるプログラミング意欲をかきたたせることに置かれている。
 この本は,内容を利用しやすいよう,3つの部に分けてある。それぞれの部は,「Acrobatとインターネット」という本書のテーマを,読み手の興味範囲に応じて異なる視点から見たものとなっている。このように,技術項目で分けるのではなく,読み手の必要本位に構成したことによって,本書がぐっと便利になっていれば幸いである。
 第1部では,情報利用者(Webサーファー)の視点から,文書形式としてのPDFとHTMLを簡単に比較し,両形式の組み合わせを論じる。Acrobat 4のWeb Captureについては,この第1部の3章で紹介する。 第2部では,情報発信者(パブリッシャー)の視点から,PDF文書の作り方を考える。本書で「情報発信者」とは,執筆者,翻訳者,技術編集者,グラフィックデザイナーなど,情報発信のために文書を作る人すべてを指すものとする。最新のDTP技術に関する基礎知識を前提とした内容である。また,Webブラウザを見慣れた読み手が対象だ。ここでは,Acrobatの基本機能を簡単に,かつ包括的に解説する。そして,スクリプトのプログラミングへも脱線していく。この脱線では,もっと知りたいと感じる読み手もいるだろうし,プログラミングなんておもしろくないというこれまでの想いを,さらに強くする読み手もいるだろう。
 第3部では,管理者(Webマスター)の視点から,本書のテーマに立ち向かってみる。管理者とは,Webサーバを運用する役目を持った人のことである。第2部で述べた項目のうち,いくつかを再度取り上げて,より詳しく論じる。CGIインタフェースや,ASP(Active Server Pages)の実装や,Cやスクリプトのプログラミングについても述べる。そのため,さらに深い基礎知識が前提となるが,管理者にとっては難なく理解できる内容のはずだ。また情報発信者にとっても,サーバ上でいろいろな物がどんなふうに相互作用しているのかをざっと知ることができるという意味で,ここは有益であろう。
● ヘルパーアプリケーションたち
 本書の執筆を,それぞれいろいろなやり方で支えてくださったすべての人に,心からの感謝をささげたい。Katja Karsunkeは,いつだって物事のやり方を知っている。誤字脱字のやっつけ方から,壊れたISDN機器の直し方まで。バルコニーの植物の世話から,ソフトウェアのインストールまで。Allesio Leonardiは,慢性的に働きすぎなのに,どこまでも根気をなくさずに,いつでも喜んで私の話に耳を傾けてくれる。そのフレンドリーな協同作業に,感謝したい(そして,ワインとパスタの分野における助力にも)。Margit Mullerは,印刷技術の経験が豊富で,おかげで私はずいぶん助かった。そのうえ女史は,重要なことを語り合える人である。そう,ダイビングと旅のことを。 私の本の中身をチェックしてくれる,無私で誠実な人たちは,デッドラインが不当にギリギリでも,決して投げ出そうとはしない。本書のクオリティは,この人たちに多くを負っているのだ。オリジナルのドイツ語版は,次の方々に内容をチェックしていただいた。Detlev Droege(コブレンツ大学)は,PDF形式について,まるで自分のたなごころを指すように知りつくしている。Alexander Gabrielの,電子メールでの修正は驚異の速さでやって来た。Dieter Gust(技術文献研究所,ミュンヘン)は,いつも技術資料(や顧客)と取っ組んで疲れているのに,専門家としてのディスカッションをする時間を必ずとってくれた。Michael Heinzelは,内容チェックを先延ばししようとはしなかった。そう,たとえチンクエテッレにいる時でも。Tobias Hollrich(Adobe Systems,サンノゼ)は,休暇でレイクタホに行っている間も,仕事を続けてくれた(Candice,ごめん!)。Peter Korner(Adobe Systems,ミュンヘン)の,パーソナルな関与支援に感謝したい。Thomas Muller(デュッセルドルフ)は,時代遅れの紙のプリントアウトに甘んじなければならなかった。Frank Schumacher,ベルリンから来たパテントホルダーは。さまざまなつまづきにもかかわらず,がんばって資料と戦ってくれた。Florian Su?l(CitySatz & Nagel,ベルリン)は,ちっちゃい娘さんとゲラ刷りと,その両方に注意力を割かなくてはならなかった人である。
 インターネットは驚異の速さで成長を続けている。そのため,本書のドイツ語版のほんの数ヶ月後に出した英語版にしてすでに,いくつかの章を書き直す必要があった。その際数人の方から,それぞれ違ったやり方で内容の向上に助力をいただいた。Nelson H. F. Beebeは,いろいろなことを教えてくださった。特に,英語の細かなニュアンスを苦心して説明してくれた。そして,文章の数学的な厳密性を,私の望むレベルにまで引き上げてくれた。私はネイティブではないから,自分ではそこまでは無理だったのである。D. P. Storyは,実り多いいろいろなディスカッションのきっかけを作ったり,すべての章を正確な内容に手直ししたりしてくれた。Sebastian Rahtzは,重要な訂正や新たな素材を提供してくれた。しかも,その頃御病気だったにもかかわらず,文章の内容をインドでチェックしてくれた。Mark DeVriesと御家族は,pdfmarkとその関連資料のために,あやうく冬期オリンピックの開会式を逃すところであった。そして読者諸賢からいただいた,重箱の隅をつつくような…いやいや,そんなことを言ってはいけない…さまざまなコメントのおかげで,本書のクオリティは確実に向上したのである!
 本書の和訳が終わりかけた頃,Acrobat 4がベータテストの段階を終えた。この幸運なタイミングのおかげで,この日本語版は,Acrobat 4に関する多くのアップデートや追加を盛り込んだ形で,その発売に合わせて上梓することができた。翻訳の労をとってくれた広田健一郎には,土壇場の大量修正を受け入れてくれたこともあわせて,感謝の念でいっぱいである。

Thomas Merz

 訳者より
 Thomas Merzさんと組ませていただいて出す訳書の第2弾です。今回もまた,土壇場でさまざまなバタバタがあり,まわりの皆さんには多大なご迷惑をおかけしてしまいました…。
 PDFの示した,ネットワーク文書としての革命性は,JavaScriptの実装によって生まれたチャレンジングな拡張性とあわせて,非常に刺激的なものです。そこから,さまざまな応用が生まれることが期待されるという意味においてです。私自身,そのあたりに特化したAcrobat本を出せたら,という願いをかねがね持っていました。 しかし本書の原著に出会って,その夢はついえました。
 なぜなら,すでに必要なことはここに全部書かれていたからです。しかも,pdfmarkやサーバのことまでこと細かに…。もはや私の出る幕はなかったようなのでした。あとはこれを日本語にするだけです。 持つべきものはよき先人かな。
 翻訳にあたり,著者のThomas Merzさんは前回にもまして,内容のアップデートに力を注いでくれました。特に,2年半ぶりのメジャーバージョンアップを迎えた「Adobe Acrobat 4.0」に関する内容は,すべて本書のための書き下ろしであると言っても過言ではありません。
 Acrobat 4の売り文句は「インターネット時代のドキュメント共有プラットフォーム」であり,時代をまともに反映して,インターネット関連の機能が驚くほど拡充されています。それは,Thomasさんのうれしい驚きでもあったでしょう。この本の目のつけどころは間違っていなかったといえます。
 今回も,技術書として,この本の内容の豊富さと実用性が,わが国の読者に愛されることをねがってやみません。

 ※ なお,本書のAcrobat 4に関する内容のうち,日本語版の項目名や画面などは評価版によっていることをおことわりしておきます。

1999年5月
広田健一郎

情報利用者の視点
1 HTMLとPDF
 1.1 HTMLとは
 1.2 PDFとは
 1.3 HTMLとPDFの比較
2 PDFをブラウザで見る
2.1 WebブラウザとAcrobat
 2.2 最適化PDFとページごとのダウンロード
 2.3 PDFをブラウザで利用する
 2.4 HTMLをPDFに変換する
 2.5 PDFをHTMLに変換する
3 Acrobat Web Capture
3.1 Acrobat 4でWebサーフィン
 3.2 WebページのPDF化の設定項目
 3.3 Web Captureの機能と制約
情報発信者の視点
4 PDF文書の計画
4.1 PDFかHTMLか
 4.2 PDFのハイパーテキスト機能
 4.3 小さなファイルを複数作るか,
    それとも大きなファイル1個にするか
5 PDFファイルを作る
5.1 PDFへのいろいろな道
 5.2 Distillerの設定
 5.3 最適化されたPDFファイル
 5.4 全文テキスト抽出
 5.5 PDFファイルを暗号化する
 5.6 Acrobatのプラグイン
 5.7 PDFファイルをテストする
6 アプリケーションのPDFへの対応
6.1 PDF対応のアプリケーション
 6.2 Adobe FrameMaker
 6.3 Adobe PageMaker
 6.4 QuarkXPress
 6.5 Microsoft Word
 6.6 TEX
 6.7 グラフィックソフト
7 pdfmark入門
7.1 あらまし
 7.2 準備
 7.3 アプリケーション独自の埋め込み方法
 7.4 pdfmarkのいろいろな基本機能
 7.5 移動先とアクション
8 PDFフォーム
8.1 フォームの機能
 8.2 フォームフィールド
 8.3 フォームフィールド作成の技
 8.4 PDFフォームをWebで使う
 8.5 PFN(Personal Field Names)
 8.6 Acrobat Forms
9 PDFをHTMLページに載せる
9.1 NavigatorとInternet Explorer
 9.2 PDFをHTMLに貼り込む
 9.3 PDFのためのVBScriptプログラミング
 9.4 どのブラウザにも通用するHTMLコード
 9.5 HTML作成ツール
 9.6 ナビゲーション
管理者の視点
10 PDFをWebサーバに載せる
10.1 MIMEタイプとPDFアイコン
 10.2 バイトレンジプロトコル
 10.3 PDFをSSLサーバに載せる
11 フォームデータ処理
11.1 FDFとFDFツールキット
 11.2 FDFとCGIインタフェース
 11.3 FDFとASP 230
 11.4 PDFフォームのためのソフトウェア
12 全文テキスト抽出とサーチエンジン
12.1 動機
 12.2 Microsoft Index ServerとPDF Ifilter
 12.3 検索文字列のハイライト
13 ダイナミックPDF
13.1 ダイナミックなWebページ
 13.2 ダイナミックなPDF生成
 13.3 PDFlib Cライブラリ
A CD-ROMの内容
 B PDF関連のWWWリソース
索引

内容説明

この本では、インターネットのためのAcrobat活用に役立つ最新技術を、大きな視野ですべてカバーすることを試みている。もちろん、さまざまな言語やインタフェースをすべて網羅することなど、できるはずもない。CGI、JavaScript、VBScript、ASP(Active Server Pages)…ちょっと挙げてみただけでもこんなにあるのだから。本書の執筆の重点は、初心者にはすぐ使える具体例を紹介し、熟練の開発者にはさらなるプログラミング意欲をかきたたせることに置かれている。

目次

情報利用者の視点(HTMLとPDF;PDFをブラウザで見る;Acrobat Web Capture)
情報発信者の視点(PDF文書の計画;PDFファイルを作る;アプリケーションのPDFへの対応 ほか)
管理者の視点(PDFをWebサーバに載せる;フォームデータ処理;全文テキスト抽出とサーチエンジン ほか)

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