出版社内容情報
インターネットの普及・発展が目覚ましい.その中でWWW(World Wide Web,以降,Webと略称)による情報発信・情報流通が幅広く利用されている.当初は単なる情報発信の道具として利用されていたが,その簡便性,経済性,汎用性などから,様さまざまな応用がなされてきている.ビジネス場面でWebによる情報の利用が活発になるにつれ,高度な利用法が求められてきている.
そのような新たなビジネス面の要求に応えるために,XML(Extensible Markup Language)言語は誕生した.これまでは,Webを使った情報作成に,HTML(Hypertext Markup Language)という言語が用いられてきた.HTMLでは,定められたマークを使ってWebページ上に情報を作成することになるがXMLではビジネス・アプリケーション向けに固有のマークが定義できる.このため,アプリケーション・プログラムから情報を抽出・編集でき,情報の再利用や異なる用途に活用しやすくなっている.ビジネスの世界では,誰もが,どこでも手軽に利用できることが期待されている.XMLは,そのような要求に応えるべく登場してきたといえよう.
本書では,XMLの技術内容を概観し,ビジネスの世界でXMLがどのように活用されるか,XMLで記述されたデータがアプリケーション・プログラムからどのように扱われるかについて紹介する.XMLについての詳細な文法を解説するのではなく,ビジネスの世界においてXMLをどう活用するかを理解していただくことを目的としている.
本書の読者としては,インターネットに関心をもち,特にWebを通した情報の有効利用やビジネス展開を計りたいという社会人,研究者,学生を対象にしている.
前提知識として,Webの利用経験があり,Webページに記述する言語としてのHTMLの概要を理解し,多少のプログラミング知識があることを想定している.特に,本書の技術編ではプログラミングの例としてPerl言語を用いているため,Perl言語を知っていることが望ましい.しかし,Perl言語を知らなくても,C言語,C++言語またはJava言語などのプログラム言語を知っている人であれば,プログラミング上でXMLをどう扱うかの感覚については十分に理解できるはずである.XML活用を概観したい人はプログラミングの部分については読み飛ばしていただきたい.
本書は,活用編,技術編および付録から構成されている.その主な内容は「本書の概要」を参照していただきたい.
なお,XML 1.0については,その仕様が勧告されているが,その他のXMLに関連する仕様については,まだ仕様が確定されていないものが多い.そのため本書に記述してある技術内容およびアプリケーションにおけるXML活用法を適用するときには,できるだけ最新情報をもとに検討していただきたい.
本書の1章と2章は高木康夫が,3章と4章は宮本義昭が,5章,6章,7章,8章および付録は小林茂がそれぞれ分担して執筆した.また,全体にわたる監修は,笛木祥平と神成弘昭が担当した.
本書の作成にあたり,適切なアドバイスとコメントをいただいた日本ユニシス株式会社の横山正敏氏と青木稔氏に感謝します.また,本書の出版に至るまでに,東京電機大学出版局編集課の植村八潮氏と松崎真理さんに大変お世話になりました.この機会に,感謝の意を表します.
平成11年3月
編者しるす
1章 XML概要
1.1 XML登場の背景
1.2 XMLの設計目標
1.3 HTML,SGMK,XMLの関係
1.3.1 Webを意識したXMLの規格
1.4 HTMLの問題とXMLによる対応
1.4.1 HTMLの問題
1.4.2 XMLにおける検索の有効性
1.5 SGMLの問題とXMLによる対応
1.5.1 SGMLの問題
1.5.2 XMLによる対応
1.6 レイアウト処理
1.7 用途から見たデータ形式の比較
2章 XMLの仕組み
2.1 XMLによる情報表現
2.1.1 妥当なXML文書
2.1.2 整形式のXML文書
2.2 XML文書の論理構造
2.2.1 XML宣言
2.2.2 DTD
2.2.3 名前空間
2.3 マニュアルを例にしたXML文書の階層構造の例
2.4 XMLの物理構造
3章 XML文書間の連携-ハイパーリンク機構
3.1 HTML形式のリンク機構
3.2 Xlinkの拡張リンク機構
3.2.1 複数リンク
3.2.2 表示の処理方法
3.2.3 双方向リンク
3.3 リンクの指定方法
3.3.1 リンク,リソース,ロケータ
3.3.2 標準リンクと拡張リンク
3.3.3 標準リンクの指定方法
3.3.4 拡張リンクによる複数リンクの指定方法
3.3.5 表示の指定
3.3.6 行内リンクと行外リンク
4章 XMLにおけるスタイル
4.1 HTMLにおけるスタイル指定
4.1.1 ブラウザに依存する表示スタイル
4.1.2 スタイル・シート
4.1.3 HTMLとCSS
4.2 XMLのスタイル指定
4.2.1 文書構造の変換
4.2.2 処理の指定
4.3 スタイルの指定方法
4.3.1 文書構造変換の指定
4.3.2 処理の指定例
4.4 請求書用のスタイルシート
5章 ビジネス向けへの展開
5.1 中古車販売モデルの概観
5.2 マニュアル類の作成
5.2.1 内容を求める
5.2.2 XMLで記述する
5.2.3 体裁を考える
5.2.4 目次・索引をつくる
5.2.5 図形・画像・写真を指定する
5.2.6 ほかの要素から参照可能にする
5.2.7 文書全体を分割する
5.3 電子カタログへの展開
5.3.1 電子カタログの内容を決める
5.3.2 XMLで記述する
5.3.3 Webで公開する
5.3.4 データを取り出す
5.3.5 メタデータを補足する
5.3.6 データの部品化を考える
5.3.7 公開情報を拡張する
5.4 基幹データベースへのアクセス
5.4.1 電子カタログを見て在庫を調べる仕組み
5.4.2 基幹データベースとの連携を図る
5.5 中古車の見積り・注文
5.6 実際のシステム構築
5.6.1 XML文書の作成
5.6.2 XMLデータの作成
5.6.3 ユーザAPの作成
5.7 XMLデータの処理
5.7.1 XMLデータの特徴
5.7.2 XMLデータの扱い方
5.7.3 XMLパーサの役割
6章 さらなる発展-本格的ビジネス向け拡張
6.1 XMLを電子ビジネスに利用する
6.1.1 電子ビジネスでのXMLデータの役割
6.1.2 HTMLからXMLへ,そして新たなビジネス展開へ
6.1.3 XMLデータの利用形態
6.1.4 XMLデータの再利用
6.2 ビジネスAPの典型的な例
6.2.1 文書作成型
6.2.2 異種データベース間でのデータ交換型
6.2.3 負荷分散処理型
6.2.4 複数ビュー提供型
6.2.5 エージェントAP型
6.3 ワールド・カップ・サッカーでの例題
6.3.1 全体的なシナリオの考案
6.3.2 ビジネスAP
6.3.3 システム説明
6.3.4 ユーザ・インターフェース
6.3.5 流れの説明
6.3.6 異なる立場でのメリット
6.4 基幹業務APへのアクセス
6.4.1 フィルタによる変換システム
6.5 エージェント技術を使用した情報収集
6.5.1 自動処理を可能にする
6.5.2 ワン・ツー・ワン・マーケティング
6.5.3 仮想企業の誕生
6.6 電子メールでのXML利用
6.7 複数企業間でのEDI
6.7.1 インターネットEDI
6.7.2 EDIエージェント
6.8 モバイル環境から基幹業務へアクセス
6.8.1 モバイル機器の特徴
6.8.2 モバイル環境でのXMLデータの役割
6.8.3 同一XMLデータからの異なる表示
6.8.4 ユーザ・エージェントによる処理の選択
7章 XMLデータの処理
7.1 XMLデータの処理系
7.1.1 NSGMLSでのXMLの扱い
7.1.2 Perlなどでの変換処理
7.2 XMLデータ作成プログラム
7.2.1 CSV形式データからXML文書に変換する例(1)
7.2.2 CSV形式データからHTML文書に変換する例
7.2.3 CSV形式データからXML文書に変換する例(2)
7.3 XMLデータ入力プログラム
7.3.1 XMLデータ解析の例
7.4 XMLデータからの変換例
7.4.1 ESIS形式データの処理
7.4.2 XMLからプレーン・テキストへの変換
7.4.3 XMLからHTMLへの変換
7.4.4 XMLからRTFへの変換
7.4.5 数式を含むXMLからTeX文書への変換例
8章 XMLの実用化
8.1 W3Cでの規格の検討過程
8.2 XMLに関する提案・規格の紹介
8.2.1 名前空間に関する規格
8.2.2 DOM-プログラム・インターフェースに関する規格
8.2.3 メタデータ表現
8.2.4 数式表現-MathML
8.2.5 マルチメディア表現-SMIL
8.2.6 グラフィック表現
8.3 ビジネス界での実用例
8.3.1 WIDL
8.3.2 XFDL
8.4 W3C以外でのXMLの使用例-XMI
付録
A ツール
A.1 NSGMLS
A.2 ESIS形式データ
A.3 Perl
B 参考文献
B.1 関連サイトのURL
B.2 関連文書のURL
B.3 参考書籍
C 用語集
D CD-ROMの内容について
D.1 プログラム(Perl,SP)のインストール手順
D.2 7章にあげた例題プログラムの実行手順
あとがき
索引
内容説明
本書では、XMLの技術内容を概観し、ビジネスの世界でXMLがどのように活用されるか、XMLで記述されたデータがアプリケーション・プログラムからどのように扱われるかについて紹介する。XMLについての詳細な文法を解説するのではなく、ビジネスの世界においてXMLをどう活用するかを理解していただくことを目的としている。
目次
活用編(XML概要;XMLの仕組み;XML文書間の連携―ハイパーリンク機構;XMLにおけるスタイル;ビジネス向けへの展開;さらなる発展―本格的ビジネス向け拡張)
技術編(XMLデータの処理;XMLの実用化)
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- 和書
- 明治のお嬢さま 角川選書