出版社内容情報
QS-9000の発展を振り返ってみると,1990年代のめまぐるしい激動する世界情勢を象徴するかのごとき思いがする。日本のビジネス環境の今後を考えた場合,ひとつの歴史的な意味をもつことになるかもしれない。それは,日本の発展に大きな影響を与えるといっても過言ではない。
その動きは,まずアメリカで軍の統計的管理手法として開発され,NATO連合軍を通じてヨーロッパ,特にイギリス軍にもち込まれた後,イギリスでBS5750として1979年に制定されている。この時点で,従来のQC活動でみられる現場担当者が技法として製品に関わる管理を行うことから全社的な展開になる契機となった。直接,製品の製造に関わらない部門でも,製品のかわりに文書や記録の作成を行うと置き換えることで製造部門と同様の管理が行えることも理解された。組織の全体のクオリティーを考えることは,全体のビジネスプロセス(製品のコンセプト化,製品仕様,製造工程,指定規格への満足)を対象にすることになる。したがって,このBS5750の制定ではっきりしたことは,最終製品の品質のみでなく,その製品の生産の全工程に関するプロセスの管理に注目しなければビジネス競争には勝てないという結論である。そのためには,マネジメントの決意と協力が欠かせないことも同時に認識された。
ヨーロッパコミュニティー(EC)と呼ばれるヨーロッパ統一の経済圏であるEC統一のプロセスが完成されると,世界で最大の単一な経済マーケット圏が構成されることになる。このマーケット圏の誕生は,多くの点で日本の企業がヨーロッパでビジネスを行う方法を簡素化することにつながる一方,統一が日本にとって新たなる戦を挑まれることにもなる。この挑戦に対処する方法がBS5750をもとに制定されたISO9000と呼ばれる国際規格である。
アメリカにおいては,このISO-9000を基礎として,新たな品質システムのモデルが作成された。それがQS-9000である。1994年9月1日にクライスラー,フォード,ゼネラルモーターズ(GM)の三社の供給者品質要求事項のタスクフォースがQS-9000を発表した。これはクライスラー社の「供給者品質保証マニュアル」,ゼネラルモーターズ社の「エクサレンスのための北米オペレーション(NAO)の目標」,「フォードのQ101品質システム規格」トラックメーカーからのインプットより作成された。
この発表に至るまでに三大自動車メーカーが6年間の歳月を費やしたことを忘れてはならない。これは,世界マーケットの競争力強化のためのアメリカ自動車工業会の指導的役割を果たしてきた三大メーカーの将来の品質の改善に対してなみなみならぬ決意の表明であることは明らかである。
この新たな品質規格であるQS-9000とIOS9001との違いは,前者にはたゆまぬ改善(continusous improvement)とAPQP(製品品質事前計画)を新たに加えたことである。したがって,品質経営の観点からはまた一歩前進したといっても過言ではなく,例えば品質コストの概念もISO9000シリーズでは2000年の改訂で導入されるといわれているが,QS-9000では既に入っている。また,英語のshallで表現される強要事項もQS-9000では関連規格を含めると500ほどあり,ISO9001と比べると約4倍もあることになる。そのうえ,審査で小さな不適合事項が一件でもあると,それが是正されて,すべて適合な状態になるまでは認証習得できないことになっている。
この新たな品質システムは国境を越えて,あらゆる業種で,すべての会社(特に一次下請け)に顧客満足を強調し,品質の高い製品を製作することに基礎をおいている。タスクフォースのメンバーな,改善の精神に則って,コスト削減を図ることで品質システムの向上が可能であるという確信をもっている。
本書は,QS-9000の要点と思われる箇所の解説と実施方法のやり方を説明している。主にQS-9000の独自の要求事項に焦点をあてているが,QS-9000がISO9001の全項目をすべて網羅していることから,ISO9001認証習得の参考書として利用できるように構成されている。また,ISO9000登録済みの企業にはISO9000の上にさらにQS-9000として追加された事項のみを考慮して品質システムの再構築もできるように編集されている。さらに,ISO9000やQS-9000の認証習得と関係なく,品質経営を行う目的で体質改善や顧客満足の拡大・追求に役立つように最新の手法に言及しているので参考されたい。
本書の構成は,ISO9000(品質システム要求事項第3版1998年版)にしたがって,ISO9001に対応する20節のエレメントを記述している(例えば,エレメント4.1)。また,QS-9000の要求事項の要点は網を掛けた枠で囲った。さらに,ISO9001にはないQS-9000独自の追加要求事項を枠で囲って違いがわかるようにした。これらは,読者の目的にあわせて利用を可能にし,効果的に理解できるように工夫したものである。
なお,本書は『新たな品質経営への挑戦-ISO9001に基づくQS-9000』およびその改訂版をQS-9000第3版発行に際し,全面的に見直し,書名も改め『QS-9000第3版解釈と運用』としたものである。
1999年2月
著者記す
第1章 QS-9000とは
A QS-9000の歴史的発展
B QS-9000の適用
C QS-9000の目標と目的
D QS-9000品質システム開発とその与えた衝撃
第2章 ISO9001を基礎にした要求事項
A 経営者の責任(エレメント4.1)
B 品質システム(エレメント4.2)
C 契約の見直し(エレメント4.3)
D 設計管理(エレメント4.4)
E 文書およびデータの管理(エレメント4.5)
F 購買(エレメント4.6)
G 顧客支給品の管理(エレメント4.7)
H 製品の識別とトレーサビリティ(エレメント4.8)
I 程管理(エレメント4.9)
J 検査および試験(エレメント4.10)
K 検査,測定および試験装置の管理(エレメント4.11)
L 検査および試験の状態(エレメント4.12)
M 不適合品の管理(エレメント4.13)
N 是正処置および予防処置(エレメント4.14)
O 取扱い,保管,包装,保存および引渡し(エレメント4.15)
P 品質記録の管理(エレメント4.16)
Q 内部品質監査(エレメント4.17)
R 教育・訓練(エレメント4.18)
S 付帯サービス(エレメント4.19)
T 統計的手法(エレメント4.20)
第3章 顧客指定要求事項
A クライスラー指定要求事項
B フォード指定要求事項
C ゼネラルモーターズ指定要求事項
D トラック製造業者指定要求事項
第4章 QS-9000の審査の実施
A QS-9000システムの実施(付録A)
B 品質システム認証機関の運用規程(付録B)
C 特殊特性および記号(付録C)
D ISO9001/ISO9002規格に対する地域別同等規格(付録D)
E 略語とその意味(付録E)
F 変更の要約(付録F)
G QS-9000認定機関実施要求事項(付録G)
H 審査人日数(付録H)
I QS-9000登録追加要求事項(付録I)
J コントロールプラン(付録J)
第5章 QS-9000 関連マニュアル
A QS-9000のQSA(品質システム審査)マニュアル
B 量産部品承認プロセス(PPAP)
C 製品品質事前計画(APQP)およびコントロールプラン
D 故障モード影響解析(FMEA)
E 測定システム分析(MSA)
F 基礎統計的プロセス管理(SPC)
第6章 QS-9000に使用される用語
第7章 連絡先情報
第8章 QS-9000の実例
A QS-9000品質マニュアル(QS-9000規格に基づいて)
B QS-9000の組織内展開
C QS-9000審査員チェックリスト
付録
A QS-9000サイクル
B QS-9000の構成
C 製品品質事前計画の5段階とISO9001設計管理(4.4)の相互関係
D 品質システムの概要
E 是正処置の5段階
F 是正処置の手順
G 品質コスト
H 予防法の概念
I マルコム・ボルドリッチ・ナショナル・クオリティー・アウォードの概要
J ベンチマーキング
あとがき
索引
内容説明
本書は、QS‐9000の要点と思われる箇所の解説と実施方法のやり方を説明している。QS‐9000の独自の要求事項に焦点をあてているが、QS‐9000がISO9001の全項目を網羅していることから、ISO9001認証収得の参考書として利用できるように構成されている。また、ISO9000登録済みの企業にはISO9000の上にさらにQS‐9000として追加された事項のみを考慮して品質システムの再構築もできるように編集されている。さらに、ISO9000やQS‐9000の認証収得と関係なく、品質経営を行う目的で体質改善や顧客満足の拡大・追求に役立つように最新の手法にも言及している。
目次
第1章 QS‐9000とは
第2章 ISO9001を基礎にした要求事項
第3章 顧客指定要求事項
第4章 QS‐9000の審査の実施
第5章 QS‐9000関連マニュアル
第6章 QS‐9000に使用される用語
第7章 連絡先情報
第8章 QS‐9000の実例