内容説明
精神症状は当事者の語りの中にある。当事者から自発的に寄せられた膨大な発言を蒐集・分類し、精神症状論の再構築を図る唯一無二の書。停滞する統合失調症の診断学に楔を打ち込む意欲作。
目次
1章 幻聴論
2章 幻視論
3章 妄想論
4章 他律論
5章 診断論
著者等紹介
村松太郎[ムラマツタロウ]
精神科医。医学博士。米国National Institutes of Health(Laboratory of Molecular and Cellular Neurobiology)などを経て、慶應義塾大学医学部精神・神経科准教授。専門は司法精神医学、神経心理学。著書多数
林公一[ハヤシキミカズ]
精神科医。医学博士。「Dr林のこころと脳の相談室」を20年以上にわたって運営し、同サイトの「精神科Q&A」では読者からの4,000以上の質問に回答している。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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幻聴、幻視、妄想の捉え直しを通して最終的には統合失調症の本質とでも言うべきものを「他律(自我障害)」と措定し、更にここに「主律感(SOA)」の概念を導入することで、未来の科学に一つの道標を与えることも見据えた本。できることだけを行い、現状の整理にとどめた内容は精神医学の困難さを浮き彫りにするものの、そこには同時に当事者の生の語りが生き生きとした形で残されている。「他律理論」は統合失調症を上手く説明しているように思える(勿論それはなんの正当性も保証しないが)。悩める人のためにも広まってほしいものだ。2024/10/16
RedQuesterz
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自分の病気について、なにか新しい知見が得られるかと思って購入。それで読んでみて思ったんだけど、これは患者側の人間としては、読むべきではなかったかも知れない。端的にいって、これを書いた方はきっといいお医者さんなのだと思う。そして、この本も精神病を扱ったものとしては良書なのだろう。ただ、どこか患者側の想いが置き去りにされてる印象を受けた。これは学術書で健常者が読む本なのだから仕方ないと思いつつも、心のどこかで別のなにかを期待していたようで、申し訳なくも少し残念。2021/05/01