出版社内容情報
カルト作家が暮らした海辺の街に集いし、業深き者たち。命の限り、踊れや、歌え。阿鼻叫喚、抱腹絶倒、前代未聞の宴が、いま始まる。
内容説明
世紀末日本を舞台に、彩雲に魂を〓がれた五つの嬰児が、真の目覚めを迎える!徴兵されながらも戦争を生き抜き、戦後、文壇の寵児としてもてはやされた孤高の作家・堀永彩雲。しかしその後半生は、絶望と狂気に彩られていた。昭和四九年に享年五〇で自害した作家の作品は、世間からは忘れ去られたが、一部に狂乱の読者を生み、育んだ。
著者等紹介
飴村行[アメムラコウ]
1969年福島県生まれ。2008年『粘膜人間』で日本ホラー小説大賞長編賞を受賞し、デビュー。極彩色の悪夢のような強烈で唯一無二の作品世界で読者を熱狂させる。2010年『粘膜蜥蝪』で日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
186
飴村 行は、寡作のため、ほとんどの作品を読んでいる作家です。四年ぶりの新刊は、堀永彩雲幻想連作短編集の怪作、心が切り裂かれました。作中作、堀永彩雲の作品を読んでみたい。ハレルヤ♪ https://www.shinchosha.co.jp/book/354581/2022/07/16
しんごろ
171
他の作品と、あんまり比較したくはないんだげど、“粘膜シリーズ”と比較したら、大人しめの作品だと思う。でも、瞬間的に“粘膜シリーズ”を思い出すようなシーンもチラリとのぞいてる。グロさ抑えめ。ホラーっぽいかな。さて、物語はというと、孤高の作家、堀永彩雲の死後、狂気に満ちた読者(ファン)が現れた。なぜ、そこまでする。彩雲の作品に何が潜んでるんだ!ヒーッ!怖い!読者の狂気に満ちていく過程を垣間見るような気分。プロレスには思わず苦笑い。七月三十日に何かが起こる。いや、ここより始まる。ハレルヤァァァア! 2022/07/09
みっちゃん
154
淡々とした筆致だからこそ、尚更狂気を感じる。ある片田舎で同じ日に起きる凄惨な事件の数々。共通項は既に死んでいる作家の遺作、からの啓示。それぞれ緩やかに繋がって、お互いに作用しながら。読了してから見直す第一章のラスト「ここより始まる」に鳥肌。この物語世界では、1999年7月30日に「恐怖の大王」 が空を切り裂いて降臨したのだろうか。2022/08/17
たぬ
37
☆4 グロでホラーでファンタジーで残忍で非人道的で滑稽な粘膜シリーズでおなじみ飴村行氏の最新作。千葉県の架空の市を舞台にした5章からなるお話。出てくる人物が様々なジャンルでそれぞれ狂ってる。祖父の頭をパターで滅多打ちだの実の息子と交合だの何がどうなったらそうなるんだよ。こいつらみんな「恐怖の大王」にやられたのかもね。2022/12/19
えりか
35
まず第一章のラストで驚きのあまりひっくり返って、そこから畳み掛けるようにクラクラチカチカとさせる狂気が怒涛のように押し寄せてくる。読むのを止めたいのに止められない。むしろもっととほしくなる。甘く危険な誘惑だ。このまま読み進めたら精神崩壊するかもしれないと予感があっても、なおほしくなるのだ。最後には、貪るように読み乱れた。こういう読書体験は初めてだ。 狂人の書いた書物を読み、気が狂い始める人々。これは登場人物だけではない。これを読んだら最後。絶望と希望の隙間へと私も落っこちる。確かにこれは令和の『奇書』だ。2022/05/08