癌放射線治療ハンドブック

癌放射線治療ハンドブック

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  • サイズ B5判/ページ数 91p/高さ 28cm
  • 商品コード 9784498065062
  • Cコード C3047

出版社内容情報

《内容》  癌放射線治療の基本的知識をわかりやすく,かつ明快にまとめたガイドブックである.疾患ごとに適応と標準治療,効果,副作用などについて図表をおりまぜながらコンパクトに解説した.放射線治療に携わる医療スタッフにとっては知識の整理と実践に役立つ書である. 序  私が入局間もない頃に出席した日本医学放射線学会関東地方会で,当時の放射線治療の大御所の先生が「放射線治療の成否は7割が病理組織型に,2割が治療する側の熱意に,残りの1割が装置(すなわち治療法)に依存している.」といわれたのを記憶している.放射線治療に限らず,すべての治療の成否は相手とする疾患の悪性度に大きく依存していることを冷静に分析した上でのご意見であったのだと思われる.しかしそれにしても治療法の内容が寄与する度合いが低すぎはしないだろうか? このような治療法への過少評価が,放射線照射を行いさえすれば詳細は関係なしとする風潮につながり,ひいては我が国における放射線治療の方法論の標準化や最適化に対する取り組みを遅らせてきた一面がありはしないだろうか?  1970年代後半以降,X線CT,MRIそして各種の造影剤などの放射線診断あるいは画像診断の技術革新はめざましいものがある.ともするとその影に隠れがちではあるが,放射線治療の分野でも定位放射線治療,粒子線治療,そして病巣の線量分布の最適化をめざすIntensity Modulated Radiotherapy(IMRT)と続々と新たな技術が診療に導入されている.このような「切れ味の鋭い」最新の治療法を,照射方法の詳細を問わない従来の姿勢で使いこなすことはできるのだろうか?  中川恵一講師が執筆した「癌放射線治療ハンドブック」はこのような危惧に対する放射線治療専門医からの一つの解答である.本書では放射線治療の理論的背景と主な方法論をまとめた総論に引き続いて,放射線治療の対象となりうる全身の悪性疾患を26のカテゴリーに分類し,それぞれについて治療方針とその判断基準となる病期分類,具体的な治療方法,いままでに集積された治療成績が記載されている.特にこれまでに報告された知見を「エビデンス」としてまとめた点に,個人的な思い入れを排除した客観性の高い放射線治療の確立をめざす執筆者の明確な意図が感じられる.  放射線治療に携わっている医師,診療放射線技師の方々は知識の整理とリフレッシュのために,これから放射線治療の専門家をめざす若い方々は最適の入門書として,おおいに本書を活用されることを願っている. 2000年3月6日 東京大学医学部附属病院放射線科 大友 邦 はじめに  癌に対する放射線治療の最大の特徴は,非侵襲で,機能・形態を温存できる点です.乳癌温存治療における放射線治療の活躍は,この利点を社会に明示した点で重要でした.続いて普及した定位的放射線治療は,外部放射線治療単独でも,手術に匹敵する治療成績が得られるという点で,放射線治療医に大きな自信と勇気を与えたと思います.さらに,陽子線治療,Intensity modulated radiotherapy(IMRT)など,技術革命の果実を直接享受できるこの分野の進歩には目を見張るものがあります.  著者は,5年前に中外医学社より,「癌放射線治療エッセンス」を上梓し,幸いにも,多数の読者を得ました.今回,5年間の新知見を取入れた上で,「さらにわかりやすく」,「もっとビジュアルに」,そして「とてもハンディーな」教科書を作りたい,という出版社側の要望に答えて本書が生まれました.著者の非力は明らかですが,「放射線治療の現場で役に立つ」というもう一つのテーマは,幾分かでも達せられたかと思っています.  いうまでもないことですが,癌治療は,医学の一部であると同時に,社会の一部です.社会の成熟とともに,癌の告知が充分に常識的となった今日では,医療者側から提示される情報をもとに,患者さんが治療方法を選択するようになってきています.真の意味での,癌治療の自由化の流れが定着しつつあるといえましょう.放射線についても(東海村被曝事故など,繰返される不祥事にもかかわらず),60代以下の患者さんでは,アレルギーが少ないのに驚かされます.  医療の世界では,個人の限られた経験や勘に頼ることなく,科学的なエビデンスを尊重することの重要性が強調されてきています.このことと,ほとんど等価といえましょうが,国際的なコンセンサスの重みも以前よりずっと増しています.  放射線治療にとっては,こうした潮流は大歓迎です.放射線治療は,もともと多くの疾患で,化学療法を圧倒するエビデンスをもっていますし,国際的にも,国内におけるよりはるかに高い評価を得ています.患者さん自身がインターネットなどで知識を収集して,放射線治療を選択されるケースも少なくありません.実際に,東京大学医学部附属病院でも,放射線治療の新患数は,この5年間で,実に2倍になっています.  本書でも,放射線治療の関わるエビデンス,コンセンサスをできるだけ記載してあります.治療方針や治療方法をできるだけ客観的に決定するために参考になると思います.また,手術や化学療法との組み合わせについても,頁を割いています.集学的治療の重要性が叫ばれている今日,放射線治療を専門としない読者が放射線腫瘍学を理解する上で,放射線治療医にとっても,集学的癌治療を理解する上で,有益と考えたからです.放射線治療の専門家のノートがわりに,研修医,医学生の教科書として,各科の医師,看護婦,放射線技師への手引書として,少しでも役に立てば幸いです.  また,前著に引続き,本書の企画,編集の労をとって頂いた中外医学社の小川孝志氏,森本俊子氏,校正等でご協力を頂いた教室員の方々に感謝の意を表します. 2000年3月 著 者     《目次》 目 次 1 総 論  1  A.治療に用いられる放射線の種類と装置  1  B.治療計画と線量分布  2     治療計画  2     照射技法  3     照 合  4     密封小線源治療  4     定位照射  4  C.放射線生物学  5     時間的線量配分  5     放射線効果の修飾  6     正常組織耐容線量と腫瘍致死線量  8  D.放射線治療の適応  9     TNM分類  9     適応の決定  9     根治的放射線治療  10     姑息的放射線治療  10 2 脳腫瘍  11 3 口腔・口唇癌  15 4 上顎癌  19 5 上咽頭癌  21 6 中咽頭癌  24 7 下咽頭癌  27 8 喉頭癌  30 9 食道癌  33 10 胃 癌  37 11 肝・胆道癌  38  A.胆管癌  38  B.胆嚢癌  39  C.肝 癌  39 12 膵 癌  41 13 肺 癌  43 14 縦隔腫瘍  46 15 乳 癌  47 16 直腸癌  54 17 子宮頸癌  56 18 子宮体癌  60 19 膀胱癌  62 20 前立腺癌  64 21 睾丸腫瘍  68 22 Hodgkin病  70 23 非Hodgkinリンパ腫  74 24 白血病  78 25 骨腫瘍  80 26 軟部組織・皮膚腫瘍  82 27 小児癌(Wilms' tumor, neuroblastoma)  84 索 引  89