出版社内容情報
《内容》 肺機能についてをマスターすることは数式などもあって必ずしも容易ではない. しかし臨床的には重要なので, できればなるべく短時間で効率よく学習したい. 本書はそのようなことを目的にシンボルマークを用いることにより, 単純, 明快に解説し, 初学者が容易に理解できることを目的に著わされたものである. 著者が独創したシンボルマークによって基本をマスターしてゆけば, 血液ガスや酸塩基調節のデータも, このマークを使うことにより一定の方式で読むことが出来るようになる. ユニークな学習書である.はじめに電話やトイレなどの場所を表示するマークは優れた情報伝達手段である.目につき易く直感的に明確で印象がよい.むろん文字は一般的な状況では,情報伝達手段として絵画にはるかに勝る.文字が汎用的かつ的確であるのに,絵画は特殊的であいまいであり,多くの場合は書くのに手数がかかる.しかし限られた状況で受け手に予備知識があるときは,回りくどい文章より一目で分かる絵画が優れていることがある.物理学や化学の図は,一連の規約のもとに単純な要素を結合して作られる.電気回路の配線図などはその典型である.本書の図はできるだけこの考え方を取り入れ,概念をシンボルマーク化したものの組み合わせで構成するように努めた.興味深く感じられたのはシンボルマークを使った結果,これまでと異なる論理展開になった部分が生じたことである.かなりの字数を費やしていた説明が不要になる反面,無視していた部分の重要性に改めて気付いたところもある.シンボルマークの論理は通常の言語・文章とは違っているようであり,表現方法が思考に影響を与えることを実感した.シンボルマークを用いると,血液ガスや酸塩基調節のデータを一定の方式で読むことができる.これらの章の末尾には例題を掲げて,練習ができるようにした.肺機能はもはや先端的な研究領域ではないが臨床的重要性は大である.できるだけ短時間で効率よく学習することが望まれる.本書のシンボルマークが呼吸機能を学ぼうとされる医学部の学生,研修医,コメディカルの方々にお役に立てば,望外の喜びである.肺機能の本が書きたい一心で思い立ったのは,4年以上も前であった.納得の行く構想が浮かばず,一時はあきらめかけたこともあった.シンボルマークの構想が芽生えてから,さらに2年近い歳月が流れてしまった.長い年月,辛抱強く見守り有益な助言を下さった中外医学社の荻野氏に心から感謝申し上げ,序文としたい.1997年3月著 者 《目次》 目 次第1章 基本的シンボルマーク 1 A.生体機能の「箱」と「矢」による表現 1 B.濃度等の異常の「矢」による表現 3 C.機能の異常と数値矢の異常 4 D.数値の変動 6 E.機能の変動 7第2章 呼吸不全-O2を取り込めない 8 A.呼吸とは 8 B.体内O2分圧の分布 9 C.低換気を伴わないAaDO2開大 10 D.肺胞低換気 13 E.例題 14第3章 呼吸不全と臨床 16 A.呼吸不全の定義・診断基準・分類 16 B.急性呼吸不全 18 C.慢性疾患の急性悪化に伴う呼吸不全 19 D.慢性呼吸不全 20 E.多臓器障害 20第4章 酸塩基調節 23 A.酸塩基調節の指標 23 B.酸塩基調節障害のメカニズムと指標 26 C.呼吸性酸塩基調節障害 27 D.代謝性酸塩基障害 30 E.例題 33第5章 呼吸調節 35 A.影響の表示 35 B.呼吸の2重制御 37 C.呼吸中枢に対する入力 38 D.意識的呼吸制御の異常 40 E.意識的呼吸制御と自動呼吸の同時障害 46 F.意識的呼吸制御正常な自動呼吸の障害 47 G.呼吸の化学調節 50 H.例題 52第6章 肺の形態と換気機能 54 A.形態と換気機能検査 54 B.肺気量 54 C.肺気量の異常 58 D.気流速度と気道虚脱 60 E.健康者の最大吸気流速および最大呼気流速 64 F.気流速度の異常な低下 66 G.換気機能障害の区分 69 H.フローボリューム曲線の指標 70第7章 間質性肺炎,肺線維症 71 A.概観 71 B.胸部X線写真 71 C.静肺コンプライアンスの低下 74 D.自発呼吸しているときの肺胸郭系と息切れ 74 E.血液ガス異常 76 F.CO拡散能力の低下 77第8章 気管支喘息 80 A.概観 80 B.気道過敏性 81 C.気道抵抗の増大 82 D.発作が起きるとどうなるか 84 E.閉塞性換気障害 86 F.喘鳴を主訴とする他の疾患 88第9章 肺気腫 89 A.概観 89 B.肺弾性収縮圧の低下 91 C.なぜ閉塞性換気障害になるか 93 D.自発呼吸時の病態 95 E.肺毛細血管床の破壊と肺循環 98第10章 肺水腫 100 A.概観 100 B.胸部X線写真 101 C.血液ガス 102 D.肺水腫の呼吸管理 103 E.血管外水分量増加のメカニズム 104 F.類似病像を呈する疾患 106第11章 肺血栓塞栓症 108 A.概観 108 B.画像診断 108 C.肺ガス交換に対する影響 110 D.塞栓の種類と肺循環系に対する影響 112第12章 過換気症候群 114 A.概観 114 B.過換気発作 114 C.過換気の呼吸調節 116 D.非発作時の呼吸 119 E.過換気症候群の診断と治療 120第13章 睡眠無呼吸症候群 121 A.概観 121 B.睡眠について 123 C.睡眠無呼吸症候群の呼吸 126 D.肥満と呼吸機能 127第14章 不均等分布 129 A.不均等分布とは 129 B.局所機能の表示 129 C.重力性の換気不均等分布 132 D.びまん性肺疾患による換気不均等分布 135 E.重力性の肺胞換気不均等分布 135 F.血流不均等分布 136 G.重力性換気血流比不均等分布 139第15章 ヘモグロビンの構造と機能 140 A.ヘモグロビンのシンボルマークと分子構造 140 B.O2飽和度,O2含量 142 C.ヘモグロビンとO2の反応 143 D.Bohr効果,Haldane効果 145 E.CO2と血液の反応 146索 引 149
内容説明
肺機能についてをマスターすることは容易ではない。しかし臨床的には重要なので、できればなるべく短時間で効率よく学習したい。本書はシンボルマークを用いることにより、単純、明快に解説し、初学者が容易に理解できることを目的に著わされたものである。著者が独創したシンボルマークによって基本をマスターしてゆけば、血液ガスや酸塩基調節のデータも、このマークを使うことにより一定の方式で読むことが出来るようになる。ユニークな学習書である。
目次
基本的シンボルマーク
呼吸不全―O2を取り込めない
呼吸不全と臨床
酸塩基調節
呼吸調節
肺の形態と換気機能
間質性肺炎、肺線維症
気管支喘息
肺気腫
肺水腫〔ほか〕