出版社内容情報
《内容》 血小板は巨核球から産生されるにもかかわらず巨核球と血小板とはあたかも別個の細胞のごとく扱われている.本書は最近急速に進歩をみせている巨核球の分化と成熟から血小板の産生と機能についての研究の現況をupdateな内容でしかもわかり易くまとめた書である.特に最近は血小板の時代といわれるように血小板蛋白の解析などに代表される血小板にまつわるホットな話題が豊富に盛り込まれている.序 私が研修医を終わり内科(血液学)を専攻したころの血小板の領域では直接法での血小板数の算定,血小板粘着能,血小板凝集能が測定できれば血小板専門家の仲間入りも可能であった. 特発性血小板減少性紫斑病の血小板回転を研究テーマに頂き,血小板との付き合いが始まったが,血小板回転を研究するうちにどうしても巨核球回転の解明が不可欠となり,巨核球との付き合いが始まった.しかし,巨核球の研究は数量の増減を正確に把握することすら難しく,巨核球回転の研究は,巨核球系前駆細胞の培養から順次着手せざるをえなかった.最近になってようやく血小板産生過程をin vitroで再現できるようになり,10年を経てまたもとの血小板にようやくたどり着いた. 血小板は巨核球から産生されるにもかかわらず巨核球と血小板とはあたかも別個の細胞のごとく扱われ,両者をつなぐ部分の研究が欠けているのが現状であろう.一方,血小板の研究は飛躍的に進歩し,その全貌を理解するのも困難となった.ここでは巨核球の分化成熟から血小板産生と血小板機能についての現状を筆者らの知見を中心にまとめてみたい.1993年1月長澤俊郎 《目次》 目次はじめに 1I.巨核球系前駆細胞の分化と成熟 5 A.巨核球刺激因子の概念 7 B.巨核球コロニー刺激因子(Meg-CSF) 8 C.巨核球コロニー増幅因子(Meg-Pot) 8 D.巨核球コロニーの性状 9 1.巨核球コロニー形成法 11 2.CFU-Megと巨核球コロニーの関係 12 3.CFU-Megの分化,成熟 14 a.CFU-Megの分裂と増殖 14 b.胞体内核分裂(endomitosis) 18 c.胞体の成熟(cytoplasmic maturation) 18 E.各種造血因子の巨核球-血小板系に及ぼす影響 19 1.erythropoietin(Epo) 19 2.granulocyte-macrophage colony stimulating factor(GM-CSF) 20 3.macrophage colony stimulating factor(M-CSF) 20 4.granulocyte colony stimulating factor(G-CSF) 20 5.stem cell factor(SCF) 21 F.各種サイトカインの巨核球刺激作用 21 1.IL-3 22 2.IL-6 22 3.IL-7 25 4.IL-11 25 5.LIF 26 6.IL-1 26 G.thrombopoietinをどのように考えるか 27 H.巨核球産生のフィードバック機構 29 I.培養巨核球の血小板産生 29 J.in vivoにおける巨核球の血小板産生 32 K.血小板産生の最終過程 33 L.巨核球の構造 34 1.正常巨核球の形態と構造 34 a.顆粒の生成 35 b.血小板分離膜 36 c.血小板ペルオキシダーゼ(PPO)反応 37 2.電顕における培養巨核球の成熟 38 M.巨核球の表面形質 40 N.巨核球の分離法 42 O.急性巨核球芽球性白血病 43II.血小板 47 A.血小板の構造とその役割 48 B.血小板膜蛋白と機能 51 1.GP Ia 52 2.GP Ib 53 3.GP IIb/IIIa 54 4.GP IV 57 5.GP V 57 6.GMP-140 57 C.血小板由来特異物質とその作用(α顆粒分泌蛋白) 58 1.血小板第4因子(PF4) 58 2.β-thrombogloburin(β-TG) 58 3.血小板由来増殖因子(PDGF) 59 4.thrombospondin(TSP) 59 5.血小板活性化因子(PAF) 60 D.血小板の凝集 60 アゴニストとレセプター 60 a.ADP 61 b.エピネフリン 61 c.コラゲン 62 d.トロンビン 62 E.血小板のアゴニストと刺激伝導系 63 F.血小板のプロスタグランディン代謝 65 G.血小板の放出反応 67文献 69索引 93