出版社内容情報
《内容》 本書の内容:1.正常の末梢血と骨髄における血球の形態 1.血球個々の形態異常と,それからどのような疾患,病態が考えられるか 2.主要な血液疾患にみられる末梢血,骨髄血球の形態本書の特色:随処に質問を設け,知識の復習,再確認ができるように配慮した.779枚(カラー378枚)の標本写真は著者自らの撮影による最高の写真を,今日望みうる高度の製版,印刷技術で見事に再現した.第2版の序 本書が世に出て早くも3年半を経過したが,その間幸い好評を得て,この度改訂第2版を上梓できる運びとなった. 血液学はめまぐるしいほどの進歩を続けており,最近2,3年だけをみても,たとえば分子遺伝子学の導入,造血調節機構に関する知見の展開,遺伝子工学的に作成したエリスロポエチンやG-CSFの臨床応用などが短期間に実現し,血液病のなかにはその原因,病態,診断,治療などについてかなり大幅に書き改める必要を生じたものがある.このような時代を迎えても,末梢血と骨髄塗抹標本の鏡検が血液病の診療に当たって最も基本的な事項のひとつであることは依然として変わりがない.そして,血球形態は万古不易である.しかし,末梢血なり骨髄標本から入手した情報の解釈は変わってよいはずであり,血球形態を対象とした本書の内容もこのあたりで見直してみることにした. ひとつは急性白血病のFAB分類の解説で,現在も広く使われているこの分類では1985年に新たに,急性骨髄生白血病の一亜型として急性巨核芽球生白血病(M7)が加わり,さらに骨髄異形成症候群(MDS)とのかねあいで急性骨髄性白血病の各亜型の分類基準に変更があったので,これに伴い必要な補足訂正を行った.改訂のもうひとつの要点は,モノクローム写真からカラー写真への差しかえである.初版の序文で述べたように,血球形態を把握するにはモノクローム写真の方がむしろ適している場合もあるという考えに変わりはないが,読者の方々からの要望もあって,改訂に当たりその一部をカラー写真で掲載してみることにした. 諸般の事情で,今回は小改訂にとどまったが,引き続きご批判を仰ぎ,今後の改訂へ向けての参考資料とさせて頂ければ幸いである.1989年5月著者序 近年の臨床検査の進歩はまことにめざましい.血液病学の領域でも例外ではなく,免疫学,生化学,核医学などの最新の手法があいついで取り入れられ,広く臨床に応用されるようになった.しかし,血液病の診断をすすめるにあたり,血球の数量と形態の検査が最も基本になるのは今でも変りがない.ところが最近は,臨床検査はすべて検査室まかせという風潮があり,内科医ですら自ら末梢血と骨髄の標本を顕微鏡でのぞく機会が少くなっているようにみうけられる.1枚の血液標本なり骨髄標本を入念に観察すれば,非常に多くの貴重な情報が入手できることを強調したい. 血球形態学を学ぶ際に,手近に経験豊富な指導者がいればよいが,現実にはそのような機会にいつも恵まれるとはかぎらず,参考図書を頼りに自己研修に励むことになる.血球のアトラスは国内と海外で多数出版されているが,必ずしも初心者向けとはいえない.そこで,ごく初歩から血球のみかたを解説しようとするのが本書のねらいである. 第1章では正常の末梢血と骨髄における血球形態をとりあげた.正常の形態を充分承知していなければ,患者の標本について異常所見を的確にとらえることはできない.次いで第2章では,血球個々の形態異常を扱い,それに基いて何を考えればよいかという問題に触れた.そして最後に第3章では,主要な血液疾患について血球形態から眺めた特徴を記した.第2章と第3章はいわば縦糸と横糸の関係にある. 本書のもう一つの特徴は通常の血球カラーアトラスと異り,モノクローム写真を多用した点である.実際に顕微鏡でみるのは色彩がついた血球であるが,アトラスではカラーに幻惑されて,形態の詳しい観察がおろそかになりかねない.血球の特徴をとらえるためには,むしろモノクロームのほうがよい場合がある.往年のモノクローム映画の良さが見直されているのと一脈あい通じるところがあろう. 本書はトレーニングシリーズの一冊として企画された.医学生と研修医のみでなく,血液病に興味をお持ちの各科医師,そして臨床検査技師の方々が利用できるように配慮を加えたつもりである.座右において血球形態学の知識を深め,日常の診療や検査業務に役立てていただければ幸甚である. 本書に採用した標本は著者が最近数年間に収集したもののなかから選んだが,一部は獨協医科大学第三内科古沢新平教授,東京警察病院検査部血液検査室所蔵の標本を利用させていただいた.また,本書の企画から出版まで種々便宜をはかって下さった中外医学社の各位に深甚な謝意を表する.1985年10月著者 《目次》 目次1部 血球形態の基本的知識とそのトレーニング 1I.血球トレーニングを始める前に 2 A.良い標本と悪い標本 2 B.標本の調べ方 4 C.標本から何がわかるか? 8II.正常の末梢血球 14 A.血球の種類について 14 B.赤血球 15 C.白血球 16 1.顆粒球 16 2.単球 20 3.リンパ球 20 4.白血球百分比 22 D.血小板 24III.正常の骨髄細胞 34 A.骨髄細胞の種類について 34 B.赤血球系統 34 1.前赤芽球 38 2.好塩基性赤芽球 39 3.多染性赤芽球 39 4.正染性赤芽球 39 C.顆粒球系統 42 1.骨髄芽球 46 2.前骨髄球 46 3.骨髄球 47 4.後骨髄球 47 D.巨核球系統 49 1.巨核芽球 51 2.前巨核球 52 3.成熟巨核球 54 E.非造血細胞 57 1.リンパ球 57 2.形質細胞 57 3.単球 58 4.大食球 58 5.脂肪細胞 61 6.肥満細胞 62 7.造骨細胞 64 8.破骨細胞 65 F.骨髄細胞百分化 692部 異常血球の知識とそのトレーニング 73I.末梢血塗抹標本について 74 A.赤血球の異常 74 1.標本全体を見渡して 74 a.赤血球大小不同症と変形症 74 b.連銭形成と凝集 76 2.染色性と大きさの異常 77 a.多染性赤血球 77 b.低色素性赤血球 77 c.赤血球の2形性 78 d.小球状赤血球 78 e.大赤血球 78 3.形状の異常 80 a.楕円赤血球 80 b.涙滴赤血球 80 c.acanthocyte 80 d.burr cell 82 e.鎌形赤血球 82 f.分裂赤血球 83 g.標的赤血球 83 h.stomatocyte 84 4.封入体と核 94 a.好塩基性斑点 94 b.PAPPENHEIMER小体 94 c.HEINZ小体 94 d.HOWELL-JOLLY小体 94 e.CABOT環 95 f.有核赤血球 95 B.白血球の異常 97 1.増加と減少 97 2.顆粒球の形態異常 98 a.好中球核の過分葉 98 b.PELGER異常 98 c.中毒性顆粒 102 d.DOHLE小体 102 e.LE細胞 103 3.異型リンパ球 104 4.類白血病反応 105 C.血小板の異常 112 1.増加と減少 112 2.形態異常 112II.骨髄塗抹標本について 115 A.赤芽球の異常 115 1.巨赤芽球 115 2.ヘモグロビン生合成が不良の赤芽球 121 3.核形態不正の赤芽球 123 4.数の増減 128 B.顆粒球系細胞の異常 137 1.巨大後骨髄球 137 2.異常な幼若顆粒球 137 C.巨核球系細胞の異常 140 1.小型巨核球 140 2.多核巨核球 140 3.血小板付着像を欠く巨核球 140 D.リンパ球と形質細胞の異常 148 1.異常なリンパ球 148 a.急性リンパ球白血病のリンパ芽球 148 b.慢性リンパ球白血病のリンパ 148 c.Hairy cell 148 d.リンパ腫細胞 148 e.成人T細胞白血病細胞 152 f.SEZARY細胞 153 2.異常な形質細胞 154 a.骨髄腫細胞 154 b.リンパ形質細胞 154 E.単球と大食球の異常 161 1.急性単球性白血病の単芽球 161 2.血球またはその遺残物を貧食する大食球 161 3.蓄積症の大食球 161 a.GAUCHER細胞 161 b.NIEMANN-PICK細胞 165 c.Sea-blue histiocyte 161 F.転移腫瘍細胞 1653部 主要な血液疾患についての血球トレーニング 175 1.再生不良性貧血 176 a.末梢血 176 b.骨髄 176 2.赤芽球癆 181 a.末梢血 181 b.骨髄 181 3.巨赤芽球性貧血 184 a.末梢血 184 b.骨髄 184 4.鉄欠乏性貧血 189 a.末梢血 189 b.骨髄 189 5.鉄芽球性貧血 194 a.末梢血 194 b.骨髄 194 6.溶血性貧血 199 a.末梢血 199 b.骨髄 199 7.真性多血症 204 a.末梢血 204 b.骨髄 204 8.急性白血病 208 a.末梢血 208 b.骨髄 208 c.白血病細胞の形態 208 9.骨髄異形成症候群 221 a.末梢血 221 b.骨髄 223 c.病型分類 223 10.慢性骨髄性白血病 227 a.末梢血 227 b.骨髄 229 c.急性転化 229 11.一次性骨髄線維症 232 a.末梢血 232 b.骨髄 232 12.無顆粒球症(アグラヌロチトーゼ) 236 a.末梢血 236 b.骨髄 236 13.慢性リンパ性白血病 238 a.末梢血 238 b.骨髄 238 14.悪性リンパ腫 242 a.末梢血 242 b.骨髄 242 15.多発性骨髄腫 245 a.末梢血 245 b.骨髄 245 16.特発性血小板減少性紫斑病(ITP) 250 a.末梢血 250 b.骨髄 250 17.血栓性血小板減少性紫斑病(TTP) 254 a.末梢血 254 b.骨髄 254索引 257