出版社内容情報
《内容》 細胞の癌化と増殖のメカニズムについては近年研究が急速に進み,その新しい全体像が明かになろうとしている.本書は,細胞膜から核へのシグナル伝達系,核内転写因子,細胞周期の制御など癌化を引き起こす情報の伝達の分子機構に焦点をあて,新しい知見をとりいれつつ明快に解説したものである.現在最も注目を集め爆発的な勢いで研究結果が積み重ねられている癌化分子機構を俯瞰するために欠かせない書である. 《目次》 目次1.細胞癌化のシグナル伝達 1 1.癌遺伝子〈秋山 徹〉 1 A.ウイルスの癌遺伝子 1 B.癌細胞の癌遺伝子 2 C.癌における癌原遺伝子の構造変化 3 1.遺伝子増幅 3 2.染色体転座 4 D.癌原遺伝子の正常機能 5 1.増殖因子・増殖因子受容体 5 2.シグナル伝達経路 5 3.転写因子 8 2.癌抑制遺伝子〈秋山 徹〉 9 A.癌抑制遺伝子の概念 9 B.癌抑制遺伝子のクローニング 10 C.Rb遺伝子 11 D.p53 12 E.WT1遺伝子 12 F.NF1遺伝子 13 G.DCC,APC 14 H.多段階発癌 14 3.細胞癌化のアルゴリズム〈高橋智聡/野田 亮〉 15 A.rasをめぐるカオスとコスモス 15 B.ras関連癌抑制遺伝子 17 C.多段階発癌のレトリック 192.チロシンキナーゼ 26 1.チロシンキナーゼ癌遺伝子産物と増殖因子受容体〈門脇 孝/戸辺一之/春日雅人〉 26 A.チロシンキナーゼの情報が多分岐するメカニズム 27 1.活性化した増殖因子受容体キナーゼは,いかにして細胞内に多様な情報伝達を行い細胞増殖という共通した現象を引き起こすのであろうか 27 2.増殖因子受容体チロシンキナーゼの構造 29 B.rasを介した増殖作用 32 1.チロシンキナーゼはrasを活性化することによってその増殖作用を伝える 32 2.Rasの活性化はどのようなパスウェイによってなされうるか 33 3.哺乳類におけるrasの活性化はいかにしてなされるか? 35 4.SH2/SH3 adaptor molecule 36 5.SH3領域 36 2.非受容体型チロシンキナーゼの標的蛋白質と癌化刺激伝達系〈浜口道成〉 41 A.srcファミリーキナーゼの構造と機能 41 1.遺伝子構造の特徴と癌化能 41 2.膜結合領域 41 3.キナーゼ活性領域 41 4.調節領域SH2 43 B.標的蛋白質と癌化刺激伝達機構 43 1.多種の標的蛋白質の発見 43 2.癌化に決定的な標的蛋白質のリン酸化は,細胞膜の近辺で起きる 44 3.SrcはRasを必要とする プロトオンコジーン産物によるネットワーク 44 4.セリン-スレオニンキナーゼの活性化 45 5.形態変化の機構 細胞骨格の変化は核を必要としない 46 6.細胞間接着,ギャップ結合とチロシンリン酸化 463.リン酸化チロシン結合蛋白質 50 1.SH2/SH3領域の構造と機能:CRK遺伝子の解析〈田中伸哉/長嶋和郎/松田道行〉 50 A.SH2/SH3領域を有する蛋白質群 50 B.SH2の機能と構造 51 C.SH3の機能と構造 52 D.CRK遺伝子 53 E.CRK遺伝子による形質転換 54 F.CRKを介するシグナル伝達 554.G蛋白質 62 1.Ras蛋白質の動的な機能構造〈吉垣純子/横山茂之〉 62 A.Ras蛋白質の高次構造解析 62 B.グアニンヌクレオチド結合部位の高次構造 63 C.「エフェクター領域」の動的高次構造 65 2.細胞の癌化と低分子量G蛋白質〈武者孝志/田中一馬/高井義美〉 71 A.低分子量G蛋白質の構造 72 B.低分子量G蛋白質の翻訳後修飾とその意義 75 C.低分子量G蛋白質の活性制御機構 76 D.ras p21の活性制御機構とその機能 78 E.rho p21の活性制御機構とその機能 80 F.低分子量G蛋白質と腫瘍形成 815.リン脂質情報伝達系 93 1.細胞増殖とイノシトールリン脂質代謝〈深見希代子〉 93 A.イノシトールリン脂質代謝とは 93 B.PLCの活性化機構 95 C.PI(3)キナーゼの活性化 96 D.チロシンキナーゼとrasをつなぐもの 97 E.PIP2による細胞骨格系の調節 996.セリン/スレオニンキナーゼ 104 1.Cキナーゼ〈大野茂男〉 104 A.ジアシルグリセロールやフォルボールエステルの受容体としてのPKCの分子多様性 104 B.PKCの細胞内活性化に至るシグナル経路 107 C.PKCではないPKC,aPKCζとλ 108 D.PKCと細胞の増殖分化 109 2.キナーゼカスケード〈西田栄介/後藤由季子〉 114 A.MAPキナーゼ 115 B.MAPキナーゼの活性化に必須なリン酸化部位 117 C.MAPキナーゼキナーゼ 118 D.MAPキナーゼキナーゼキナーゼ 119 E.キナーゼカスケードの普遍性 120 3.c-mos遺伝子産物による細胞周期制御と癌化作用〈岡崎賢二/佐方功幸〉 126 A.生体におけるc-mos産物の発現と機能 126 1.c-mos遺伝子産物は蛋白質リン酸化活性を持っている 126 2.c-mos遺伝子は生殖細胞で特異的に発現される 127 3.Mosは卵成熟の始動に必須である 127 4.Mosはリン酸化によって安定化される 129 5.第二減数分裂にもMosが必要である 129 6.未受精卵はMosによって分裂中期で止まっている 130 7.Mosは受精により不活性化される 131 B.癌遺伝子としてのc-mos 132 1.Mosは体細胞を癌化する活性を持っている 132 2.Mosの癌化能と生理活性は相関している 132 3.Mosの癌化機能にはG1期での発現が必要である 132 C.展望 Mosの機能における今後の課題 133 1.作用点 133 2.生理的基質 134 3.減数分裂 134 4.細胞癌化 1347.核蛋白質 139 1.DNA複製〈菅澤 薫/花岡文雄〉 139 A.真核細胞のDNA複製開始点 139 1.酵母の自律的複製配列 139 2.高等真核細胞の複製開始点 140 3.真核細胞の複製開始因子 142 B.染色体複製の分子機構 142 1.T抗原によるDNA巻き戻し反応 143 2.複数のDNAポリメラーゼによるDNA鎖合成 144 3.DNAトポイソメラーゼの関与とDNA複製の終結 145 4.クロマチン構造の複製 146 C.染色体複製の制御機構 147 1.複製関連遺伝子の発現制御 147 2.複製蛋白質のリン酸化による制御 148 2.転写調節〈梅園和彦〉 156 A.調節因子ファミリー 156 B.核内レセプター 158 C.TRとv-erbA 159 D.RARとPML 160 E.調節因子と化学発癌 162 3.Fos,Jun〈中別府雄作〉 167 A.Jun,FosファミリーとAP-1複合体 167 B.Jun,Fosファミリーによる転写調節 171 C.リン酸化によるJun,Fos蛋白質の機能調節 174 D.細胞増殖とJun,Fos 175 1.細胞周期とJun,Fos蛋白質の発現 175 2.Jun,Fos蛋白質と細胞のトランスフォーメーション 176 4.mycとmyb〈有賀寛芳/有賀早苗〉 181 A.myc 181 1.myc遺伝子の構造 182 2.c-myc蛋白質複合体とDNA結合性 182 3.転写因子としてのmyc蛋白質 184 4.DNA複製因子としてのc-myc蛋白質 184 5.c-mycとアポトーシス 185 B.myb 186 1.myb蛋白質のDNA結合性 186 2.転写制御因子としてのmyb 186 5.転写因子Rel/NFκBの制御機構と癌化〈井上純一郎〉 191 A.Rel/NFκBとその関連蛋白質の構造と機能 191 B.制御蛋白質IκBの構造と機能 193 C.Rel/NFκBを介するシグナル伝達経路の異常と細胞の癌化 1978.癌抑制遺伝子 202 1.Rb遺伝子〈秋山 徹〉 202 A.Rb遺伝子と癌 202 B.RB蛋白質の役割 202 C.RB蛋白質とDNA型癌ウイルスの癌遺伝子産物の結合 202 D.リン酸化によるRB蛋白質の機能制御 203 E.RB蛋白質リン酸化酵素 204 F.E2F/DRTF1 205 G.RB蛋白質-E2F複合体の細胞周期による変化 206 H.E2F-107kD蛋白質,cyclin,cdk2複合体 206 I.RAX 206 J.MyoD 207 K.Elf-1 207 L.ATF-2 208 M.cyclin D 208 N.RB蛋白質により転写を制御される遺伝子 208 2.p53の機能〈志関雅幸/横田 淳〉 210 A.p53遺伝子およびその産物の構造 210 B.p53の機能 211 1.p53と細胞周期 211 2.転写因子としてのp53 212 3.転写因子p53によって調節されているもの 212 4.DNA複製との関係 213 C.p53の機能喪失と癌化 213 1.p53遺伝子の変異 214 2.p53の機能を阻害する蛋白質の存在 214 3.p53の発現を調節する機構の異常 215 D.p53の正常細胞における役割(DNA修復との関係) 2159.細胞周期の制御 220 1.サイクリンとCDKキナーゼ〈辻 順/松本邦弘〉 220 A.細胞分裂の開始と終了をコントロールするサイクリンBとCDC2 221 B.G1サイクリンの発見 222 C.サイクリン-ファミリー 223 D.CDK2の発見 224 E.CDK(cyclin-dependent kinase)ファミリー 225 F.細胞周期調節の全体像 227 G.癌化との関係 227 2.cdc25とwee1:細胞周期G2期checkpointのkey因子〈永田昭久/五十嵐慎/岡山博人〉 232 A.cdc25遺伝子 233 B.wee1遺伝子236 3.cdc10〈野島 博〉 241 A.cdc10変異の特徴 241 B.SWI4,SWI6との類似性 242 C.パン酵母における細胞周期ボックス SCBとMCB 243 D.分裂酵母におけるG1/S期制御 246 E.アンキリンモチーフ 249 4.RCC1〈西本毅治〉 253 A.RCC1遺伝子の分離 253 1.tsBN2変異 253 2.tsBN2変異を相補するヒト遺伝子 255 B.RCC1蛋白質 255 C.RCC1蛋白質の機能 256 1.mRNA代謝異常 256 2.DNA合成開始の欠損 257 3.S期とM期のカップリング異常 257D.細胞周期チェック機構とRCC1 25810.細胞増殖分化とサイトカイン 261 1.IL-2シグナル伝達〈川原敦雄/谷口維紹〉 261 A.機能的IL-2レセプター(IL-2R) 261 B.IL-2シグナル伝達におけるIL-2Rβ鎖の役割 263 C.IL-2Rβを介する2つの異なるIL-2シグナル伝達経路 264 D.IL-2RγのIL-2/IL-4/IL-7シグナル伝達における役割 265 2.IL-3,IL-4,IL-5〈原田喜郎/渡辺すみ子/新井賢一〉 270 A.生理活性 270 1.IL-3 270 2.IL-4 271 3.IL-5 271 B.レセプターとシグナル伝達 271 1.IL-3RとGM-CSFR 271 2.IL-5R 273 3.IL-4R 274 4.シグナル伝達の様式 27411.細胞死 278 1.細胞死を誘導するFas〈米原 伸〉 278 A.apoptosis 278 B.免疫系におけるapoptosis 279 C.apoptosisの誘導機構 280 1.免疫系でのクローンの除去の機構 280 2.apoptosisの誘導 281 D.apoptosisを引き起こす細胞表層分子Fas 282 E.T細胞のクローン除去とFas抗原 284索引 289
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