出版社内容情報
《内容》 免疫領域の特に注目すべきトピックスを選び,それぞれ第一人者が内外の文献をふまえて,最新の進歩をreviewしている.単なる文献抄録ではなく,その内容,評価が理解できる.どのような業績,文献があったかを毎年確実にフォローできる.主要な文献を網羅していることにより,reference sourceとしても便利.序 情報化の時代である.インターネットを用いて,e-mailによる個人的情報交換を介して,real timeに最新の情報が手に入る.自分の研究に関連している分野についてはそのようにして十分な情報を得ているであろうが,免疫学の全域にわたって同じようにして知識を収集するにはあまりにも情報量が多すぎて圧倒されてしまうであろう.誰かがそれらを上手に整理して紹介してくれたら大変に有難いことである. そのような要望に応えようとしているのがこの“Annual Review”である.知識を偏ったものにしないようにするのに大いに役立つと思う.今回も免疫学の各分野について注目されるトピックスが数項目ずつ紹介されている.同じテーマであっても1年たてば様相が一変しているようなこともしばしばである.この魅力的な免疫学の進歩に遅れをとらないよう本書を利用して頂きたいと思う.執筆頂いた方々には大変な負担をおかけした次第であるが,内容を拝見して相当に力を注いで下さったことが窺われ感謝している. せっかくの充実したreviewである.充分に活用して頂ければと願ってやまない.1999年11月編者一同 《目次》 目 次 「免疫」領域のホームページとリンク集の紹介 viiiI.B細胞 1.プレB細胞レセプターシグナルの機能解析 <加藤いぶき 工藤 明> 1 B細胞分化におけるプレB細胞レセプターの発現 プレB細胞レセプターの機能 プレB細胞レセプターの構造 プレB細胞レセプターのシグナル伝達 2.IL-5と免疫グロブリンクラススイッチ <溝口智恵子 高津聖志> 9 IL-5によるクラススイッチの誘導作用 免疫グロブリンクラススイッチの分子機構 CD38とIL-5によるIgG1産生誘導 今後の展望 3.CD22,CD19によるBCRシグナル伝達の調節 <佐藤伸一> 16 CD19/CD21複合体の構造・機能 CD22の構造・機能 KOマウス解析によるCD19,CD22の機能 CD22とCD19のシグナル伝達経路 4.Germline Cε transcriptを発現させるシグナル <生澤公一 柳原行義> 24 germline Cε transcriptの構造と機能 Iεプロモーターと転写因子 IL-4RとIL-13Rの構造 IL-4Rを介したシグナル IL-4Rαの遺伝子多型 5.B細胞活性化におけるアダプター分子群 <石合正道 黒崎知博> 31 BCRシグナル伝達に必須なアダプター分子BLNKの同定 PLC-γ2経路におけるBLNKの機能 MAPK経路におけるBLNKの役割 BCRシグナル伝達におけるGrb2,Schの役割 6.IgA産生臓器としての腸管 <廣井隆親 木下直俊 清野 宏> 38 IgA誘導組織としての粘膜関連リンパ組織 IgA循環帰巣経路(CMIS) CMIS独立型IgA産生B-1細胞 粘膜実効組織でのIgA産生B-1細胞とIL-5 B細胞とIgAクラススイッチ IgAの誘導にはαβ型CD4+Th細胞だけでなくγδ型も関与するII.T細胞 1.pre-TCRの表出制御機構 <高瀬 完> 46 pre-TCR/CD3複合体の構造 pre-TCRからのシグナル pre-TCRを構成する分子の発現 pre-TCRの表出に関与する分子 2.胸腺T細胞positive selectionの分子機構 <佐藤健人 垣生園子> 55 CD4/CD8細胞への細胞系列決定の問題 ポジティブセレクションと細胞増殖制御 ポジティブセレクションと細胞増殖能(AP-1被活性化能)の獲得 ポジティブセレクションとNotch 3.胸腺T細胞のpositive/negative selectionとMAP kinase <菅原剛彦 高浜洋介> 64 正の選択と負の選択を規定するTCR信号 TCRから誘導される信号伝達経路 MAPキナーゼカスケードによる細胞制御 T細胞のクローン選択におけるMAPキナーゼカスケードの役割 4.β1インテグリンの共刺激シグナルにかかわる分子群 <上口権二郎> 72 T細胞は共刺激シグナルの存在下でのみ活性化できる β1インテグリンのシグナル伝達 β1インテグリンシグナルとT細胞レセプターシグナルとの合流 5.T細胞活性化のアビディティー(avidity)モデル <宇高恵子> 79 抗体によるエフェクター機能誘導のしくみ アフィニティーとアビディティー T細胞の抗原認識におけるアビディティー仮設とは TCRのMHC-ペプチド複合体に対する結合親和性 4量体,あるいは2量体MHC,TCRの示すアビディティー TCR活性化を引き起こす最小単位のMHC-ペプチド複合体 アビディティー仮説の限界とアンタゴニズム 少数のMHC-ペプチドによるTCRの漸次刺激(serial triggering) T細胞認識にかかわるその他の分子間会合の結合親和性 細胞膜上の脂質微小ドメイン(rafts) 6.ペプチド/MHCのクロスリコグニションとTCR高次構造 <小野俊朗> 88 TCR-ペプチド/MHC複合体相互作用 抗原認識におけるクロスリアクティブTCRIII.NK細胞・NKT細胞 1.NK活性化レセプター <荒瀬規子> 98 C型レクチン様レセプター イムノグロブリン様レセプター 接着分子/co-stimulatory分子 NK活性型レセプターのシグナル伝達機構 2.抑制性NK細胞レセプター <屋部登志雄> 105 NK細胞レセプターとリガンド特異性 NK細胞レセプター遺伝子複合体 NKレセプターの結晶構造,リガンド結合性 レセプター発現調節 3.NK細胞制御機構とCD44 <神吉和重 佐藤昇志> 118 CD44の分子構造 NK細胞活性化分子としてのCD44 NK細胞標的分子としてのCD44 4.Vα14NKT細胞のCD1認識とその機能 <河野 鐵 谷口 克> 126 Vα14・Vα24NKT細胞抗原レセプターおよびCD1d分子 CD1d分子に結合する糖脂質抗原の構造 Vα14NKT細胞の機能 臨床医学への応用 5.TRAIL/TRAILレセプターシステム <榧垣伸彦> 135 TRAILとTRAILレセプター 抗癌剤としてのTRAILの有用性 TRAIL分子を介したキラー細胞による標的細胞破壊 免疫制御および疾患との関連 6.IL-15によるNK細胞の分化,活性化とそのシグナル <小笠原康悦> 146 NK細胞の分化経路 NK細胞分化因子としてのIL-15 IL-15シグナルとNK細胞 7.MHC class I分子以外のNK制御リガンド分子 <赤澤 隆 平井 到 佐藤昇志> 155 KIR研究の発展 KIR研究の発展から発見されたリガンド不明およびMHC class I以外のリガンドを認識する抑制性レセプター 標的細胞上での探索から発見されたMHC class Iと異なるNK細胞制御リガンドIV.マクロファージ・抗原提示細胞 1.樹状細胞の分化とTNF/TNFRファミリー分子 <大嶋勇成> 161 TNF/TNFRファミリー分子 樹状細胞の分化成熟過程のoverview CD40/CD40L TNF-αと前駆細胞 OX40/OX40L TRANCE-R/TRANCE FasLとlymphoid樹状細胞 2.樹状細胞による死細胞由来抗原の提示とその意義 <山出史也 玉城征郎 稲葉カヨ> 169 アポトーシス細胞の取り込みと提示 クロスプレゼンテーションによる特異的免疫応答誘導制御とDCの役割 3.外来性抗原のMHCクラスI分子による提示 <藤巻春香 南 陸彦> 178 外来性抗原によるCTLの誘導 生体内における外来性抗原の提示V.サイトカイン・ケモカイン 1.ケモカインと接着分子のハイブリッド分子fractalkine <今井俊夫> 186 FKNの構造と発現 インテグリン細胞接着系とFKN細胞接着系の比較 FKNレセプターの発見とその機能 セレクチン細胞接着系とFKN細胞接着系の比較 末梢血単核球の遊走と血管内皮認識におけるFKNの役割 糸球体腎炎におけるFKNの役割 樹状細胞におけるFKNの役割 脳におけるFKNの役割 2.ケモカインSDF-1-/PBSFとケモカインレセプターCXCR4の生体における役割 <橘 和延 川端健二 氏川郁穂 栄川 健 長澤丘司> 193 SDF-1/PBSFの同定および生理的役割 SDF-1/PBSFのレセプターCXCR4の同定 主要な機能におけるCXCR4とSDF-1/PBSFのリガンド,レセプター関係 SDF-1/PBSF,CXCR4と胃腸管を栄養する血管形成 CXCR4と小脳顆粒細胞層の形成 造血細胞制御因子としてのSDF-1/PBSF,CXCR4 3.TGF-βシグナルとSmad群 <川畑正博> 201 TGF-βレセプター レセプターによるSmadの活性化 Smadの核内での作用 抑制型Smadの作用 他のシグナル伝達系とのクロストーク 4.IL-10シグナルとSTAT3 <竹田 潔 審良静男> 208 サイトカインシグナル伝達とSTATファミリー STATファミリーのノックアウトマウス マクロファージ特異的なSTAT3欠損マウス マクロファージにおけるSTAT3とIL-10シグナル マクロファージの機能におけるSTATs 免疫系におけるSTAT3の多彩な機能 5.IL-12/IL-12レセプターの発現を誘導するシグナル <成内秀雄> 216 IL-12とIL-12Rの分子構造 IL-12産生誘導刺激 IL-12産生の制御 IL-12R発現誘導とその制御VI.接着分子・補助シグナル分子 1.インテグリンの接着性を制御する分子機構 <木梨達雄> 225 インテグリンの構造 インテグリンの立体構造 インテグリンの接着性調節 2.CTLA-4(CD152)の機能発現にかかわる細胞内分子群 <宮武昌一郎> 235 CTLA-4遺伝子欠損マウスの解析 CTLA-4の免疫応答における機能 CTLA-4とアナジー CTLA-4のシグナル伝達系 CTLA-4分子の細胞表面での発現の制御とシグナル伝達VII.感染と免疫 1.GVHDにおけるサイトメガロウイルス再燃の機序 <野田敏司 石川裕樹 松本尊子 田中和生 古賀泰裕> 243 CMVのウイルス学 移植後ウイルス感染症の感染経路・発症病理 CMVの潜伏感染と再活性化 GVHD GVHDによるCMV再活性化の機序 2.HIV-1 gp120とケモカインレセプターの結合にかかわるモチーフ <鳥越直彦 米田明弘 杉村和久> 250 HIV-1感染の分子機構 HIV-1の感染にかかわる分子 結合モチーフ HIVエントリーインヒビター 3.HIV-1感染とTh1/Th2反応 <田中勇悦> 260 Th1とTh2 HIV-1の細胞親和性とcoreceptor Th1/Th2感染性 Th1/Th2のケモカインレセプター Th1/Th2理論に基づくHIV-1の人為的増殖制御VIII.腫瘍免疫 1.T細胞が認識するヒト腫瘍抗原同定の最近の進歩 <河上 裕> 267 T細胞認識腫瘍抗原同定の進歩 新しく単離されたCD8+T細胞認識ヒト癌抗原 新しく単離されたCD4+T細胞認識ヒト腫瘍抗原 腫瘍抗原・HLAテトラマーの応用 2.腫瘍抗原ペプチドのアナログによる抗腫瘍免疫の増強 <尹 忠秀 西村泰治> 280 抗腫瘍免疫を増強するためのくふう APLに対するT細胞応答の基礎知識 APLを用いたin vitro抗腫瘍免疫応答の増強 APLを用いたin vivo抗腫瘍免疫の増強 3.腫瘍免疫におけるストレス蛋白質―抗原として,シャペロンとして <鳥越俊彦 旗本恵介 岸 明彦> 289 ストレス蛋白質とは 癌抗原ペプチドシャペロンとしてのHSP 癌ワクチンとしてのHSP 癌細胞表面に発現するHSPとその抗原提示機能 4.ストレスによる抗腫瘍免疫の低下とその機序 <玉田耕治 野本亀久雄> 296 免疫・神経・内分泌系の相互作用 ストレス刺激と免疫応答 ストレス刺激による抗腫瘍免疫反応の抑制 5.非通常型の蛋白,ペプチド翻訳機序により生じた腫瘍抗原T細胞エピトープ <廣橋良彦 山中 昇 佐藤昇志> 305 これまで同定された非通常型の蛋白,ペプチド翻訳機序により生じた腫瘍抗原 非通常型の蛋白,ペプチド翻訳の機構についてIX.アレルギー・自己免疫・免疫不全症 1.CD25+CD4+ T細胞の自己免疫反応抑制の機序 <高橋武司 坂口志文> 312 制御性T細胞と自己免疫病 免疫制御性CD25+CD4+ T細胞の免疫学的特性と制御機構,抗原特異性 CD25+CD4+ T細胞のアナジー/抑制状態とその操作による自己免疫病の誘導 胸腺によるアナジー/抑制性CD25+CD4+ T細胞の産生 制御性CD4+ T細胞についての研究課題と展望 2.Paired immunoglobulin-like receptor(PIR)の細胞活性化調節作用 <高井俊行 小野栄夫 久場川博三> 320 PIRの構造 PIRの発現 細胞の活性調節分子群としてのPIRシグナル伝達 PIR-AとPIR-Bによるアレルギー,自己免疫疾患の制御の可能性 3.Omenn症候群とRAG遺伝子異常 <和田泰三 谷内江昭宏> 328 RAGの構造と機能 B-SCID(Complete RAG deficiency) Omenn症候群(Partial RAG deficiency) Omenn症候群と類似した症状を示す免疫不全症 4.X連鎖リンパ増殖疾患(Duncan病)とSAP遺伝子異常 <金兼弘和 宮脇利男 須磨崎亮> 335 XLPの臨床像 XLPの原因遺伝子の同定 わが国におけるXLP 今後の展望 5.alyマウスの原因遺伝子 <新蔵礼子 北田一博> 342 aly/alyマウスのリンパ組織の異常 aly/alyマウスの免疫応答の異常 ヒトシェーグレン(Sj喩ren)症候群のモデルとしてのaly/alyマウス aly/alyマウスの原因遺伝子の解明 NIKの変異と末梢リンパ組織の構築異常索 引 350