出版社内容情報
《内容》 免疫領域の特に注目すべきトピックスを選び,それぞれ第一人者が内外の文献をふまえて,最新の進歩をreviewしている.単なる文献抄録ではなく,その内容,評価が理解できる.どのような業績,文献があったかを毎年確実にフォローできる.主要な文献を網羅していることにより,reference sourceとしても便利.序 研究者には柱を立てる人と,その柱の間に一生かかって営々と1枚の煉瓦を積む人との2種類がある.誰しも目立つ柱を立てようと思うのだが,少数の才能のある人々だけが,努力し,運にもめぐまれて成功する.大多数は柱と思って作って運んでいるのは実は一枚の煉瓦なのである.これは一生懸命やった結果だから仕方がない.柱だけでは建物はできないから,その努力も惜しんではならない.あまり勧められないのは,他人の立てた柱に,小さなナイフで彫刻めいたことをする事である. 本書は最近立てられた柱の位置を出来るだけはっきりさせ,建物の構成が少しでも見通せるようになることを願って編集された.毎年少なくともこれだけを読めば,おぼろげながら壮麗な全貌がうかがわれ,急速に進展する免疫学についていくことが出来るであろう.読者は,更に新しい柱をどこにうち立てるかを考えていただきたい.また,どの柱の間に臨床への応用を築くことが出来るかを真剣に考えていただきたい. 幸い本年も第一線の,第一級の若手研究者が,一瞬の時も惜しい中を,貴重な時間をさいて執筆してくださった.深い感謝を捧げたい.またこの有意義な企画を推進された中外医学社の各位に敬意を表する次第である.1997年10月編者一同 《目次》 目 次I.T細胞1.T細胞への分化と転写因子 <藤本真慈 畑 啓明 河本 宏> 1T細胞分化の過程 T細胞分化に関与している転写因子 T細胞初期分化におけるTCF-1,GATA-3の役割2.pre-TCRα鎖の発現と機能 <吉田由紀 垣生園子> 9pTαの発現 pTαの機能 その他のpre-TCR候補分子3.腸管上皮内T細胞の胸腺外発達分化と機能 <南野昌信 石川博通> 18IELの特性と胸腺外発達分化 腸管局所で活性化されるIEL IELの生理的機能 今後の展望4.T細胞アナジーとIL-2遺伝子の転写調節 <榊田 悟> 24IL-2遺伝子の発現に関わる核内転写因子 T細胞アナジー5.T細胞における細胞周期制御の分子機構 <曽ヶ端克哉 鳥越俊彦> 34T細胞抗原受容体の構造と機能 IL-2受容体の構造と機能 末梢T細胞の細胞周期制御機構 末梢T細胞の細胞死抑制機構6.T細胞エピトープとTh1/Th2細胞の分化 <松岡多香子 松下 祥> 42co-stimulatory signalとTh1/Th2 抗原の濃度とTh1/Th2 T細胞エピトープの構造とTh1/Th2 MHCを介するシグナルはAPC応答を変化させる7.Vα14NKT細胞欠損マウス <佐藤 宏 崔 俊青 谷口 克> 50Vα14NKT細胞欠損マウスの表現型 Th1-Th2バランス制御との関係 IL-12による抗腫瘍効果との関係II.B細胞1.B細胞レセプター(BCR)シグナルとチロシンキナーゼ群 <黒崎知博> 58BCRの構造 BCR刺激による細胞内PTKの活性化 PTK下流のシグナリング IgH鎖細胞内領域の機能 BCR及びBCRシグナル分子のB細胞発生分化における機能2.B細胞の分化とPax-5 <工藤 明> 69B細胞初期分化の分子機構 Pax-5のB細胞分化における役割 B細胞分化を制御する転写因子のカスケード3.Ig遺伝子の転写活性と体細胞突然変異 <東 隆親 寺内亜希子> 79Ig遺伝子の発現を制御する調節因子 体細胞突然変異 遺伝子導入技術を用いた体細胞突然変異とタンパク発現の研究4.抗体のaffinity maturationと抗体の分子構造 <高橋栄夫> 86germline diversityとsomatic mutationに伴う抗原結合部位構造の変化 抗NP抗体におけるaffinity maturation 抗原結合部位に存在する構造多形とaffinity maturation kinetic maturation5.B細胞活性化の調節 <鍔田武志> 93抗原の性状とsIgシグナル sIgを介する負のシグナルとそれを阻害する共刺激 共受容体によるsIgを介するシグナルの調節 負のフィードバック6.自己反応性B細胞の出現におけるFas-FasL系の関与 <広瀬幸子> 100正常マウスでのB細胞免疫寛容機構 IprマウスのB細胞免疫寛容機構の破綻 (NZB×NZW)F1マウスのB細胞免疫寛容機構の破綻7.B細胞レセプターとチロシンホスファターゼ <片桐達雄 長谷川公範 矢倉英隆> 107CD45によるB細胞レセプターシグナルの制御 SHP-1とB細胞レセプター B細胞レセプターシグナルとPEPIII.接着分子・補助シグナル分子1.Transmembrane 4 superfamily(TM4SF)-T細胞活性化におけるCD9の役割- <豊岡和人 旭光 藤原大美> 118TM4SF TM4SFの機能 T細胞におけるCD9の役割2.キラーリンパ球とDNAM-1(ダム1) <渋谷 彰> 127キラーリンパ球活性化レセプター群 新たにみいだされたキラーリンパ球活性化レセプターDNAM-1 MHCクラスIを認識するキラーリンパ球活性化抑制レセプター 正と負のシグナルによるキラーリンパ球の活性化制御機構3.白血球の血管外遊走を修飾する新しい細胞膜糖蛋白 <仙道富士郎> 138細胞膜上における分子間相互作用を介したインテグリン結合性の制御 新しいインテグリン機能調節分子GPI-anchored regulator of integrin function-1(GRIF-1) 白血球遊走の分子機構IV.アポトーシス1.多機能分子としてのBAG-1 <松澤秀一 高山晋一> 146BAG-1の分子構造 BAG-1の機能 BAG-1の発現調節2.アポトーシスシグナル伝達機構におけるASK1の役割 <一條秀憲 宮園浩平> 155MAPキナーゼカスケードの構成 アポトーシスシグナル伝達経路としてのMAPキナーゼカスケード ASK1の機能 ASK1の活性制御機構V.抗原提示・MHC1.HLA class Ibの発現と機能 <石谷昭子> 163HLA-E HLA-G2.T細胞レセプターとMHCの相互作用と分子構造 < 野温子 小園晴生> 176TCR-MHC/ペプチド複合体間相互作用 TCR-MHC/ペプチド複合体の3次構造 新しく想起される問題点VI.サイトカイン1.新規リンパ球特異的CCケモカインTARC,LARC,ELC,SLC,PARC <義江 修> 188ケモカインスーパーファミリーとケモカインレセプター ケモカインの生物作用 TARCとCCR4 LARCとCCR6 ELCとCCR7 SLC PARC2.STATファミリーのノックアウトマウス <竹田 潔 審良静男> 202STATファミリー STATの活性化 STATファミリーのノックアウトマウス STATノックアウトマウスからの知見3.IL-1レセプターのシグナル伝達機構 <竹内雅博> 209IL-1レセプター IL-1によって誘導される細胞内シグナルVII.腫瘍免疫1.癌拒絶抗原ペプチドによる治療 <佐原弘益 佐藤昇志 高橋延昭 菊地浩吉> 216腫瘍拒絶抗原ペプチドの分類 抗原ペプチドとクラスIとの親和性,CTL反応性 natural antigenic peptideの同定の重要性 抗原ペプチドを用いた新しい免疫療法 癌におけるCTLからのエスケープ機能の新発見2.腫瘍拒絶抗原エピトープ生成とプロテアソーム <新原直樹 田中啓二> 226腫瘍拒絶抗原ペプチド クラスI-MHC結合ペプチド生成の分子機構 プロテアソームの作用機構モデル プロテアソームとPA28による腫瘍拒絶抗原ペプチドの生成3.腫瘍特異的キラーT細胞に発現するキラー抑制性および活性化レセプター分子 <池田英之 Pierre G.Coulie> 236ヒトNKRクローニング T細胞に発現するNKR LB33システムとCTL KIRのリガンドであるクラスIに結合しているペプチドはKIR特異的か?4.LAK細胞遊走因子・阻止因子 <細川真澄男> 249LAK細胞の腫瘍組織集積性 化学療法後腫瘍組織におけるLAK-attractantおよびLAK-MIFの産生VIII.免疫疾患1.眼疾患とアポトーシス・Fas/Fasリガンドシステム <海老原伸行> 256眼の免疫学的特殊性とFasLの発現 眼疾患との関連 Fasリガンドのパラドックス2.好中球細胞質自己抗体-ANCA <鈴木和男> 266血管炎の血清診断マーカーとしての好中球の細胞質自己抗体ANCA ANCAの標的蛋白質の同定-P-ANCAとC-ANCAからMPO-ANCAおよびPR3-ANCAへの進展 ANCAの対象疾患 MPO-ANCAと病態 ANCA対応抗原の分子性状 エピトープ解析 MPO-ANCA関連疾患患者の好中球機能 好中球の過剰反応の抑制の薬剤 その他の治療をめざした研究 モデル動物による病因解明と治療研究 第7回国際ANCAワークショップおよびANCA会議(Melbourne)での開催内容の報告3.粘膜免疫の進歩と疾患への応用 <名倉 宏 大谷明夫> 279粘膜バリア-粘液と分泌型IgA 上皮細胞とリンパ球の相互対話-上皮細胞間リンパ球 粘膜のユニークなリンパ装置―パイエル板 粘膜免疫機構による全身免疫機構の制御-経口免疫寛容4.ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に対する宿主防御機構 <神奈木真理> 289ウイルスの細胞親和性とHIV感染副レセプター HIV初感染におけるウイルス選択とHIV副レセプター 急性期における生体防御 無症候期のHIV複製 無症候期のCD8陽性T細胞依存性HIV抑制機構 ケモカイン,IL-16とCD8細胞因子 HIV複製抑制機構の破綻5.AIDS治療薬の進歩 <満屋裕明> 297ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤とその臨床 非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤 プロテアーゼ阻害剤とその臨床 逆転写酵素阻害剤に対する薬剤耐性HIV-1の出現 プロテアーゼ阻害剤に対する耐性変異株の出現 多剤併用療法はいつ開始するか? 多剤併用療法はどのようなときに変更するか?IX.その他1.マスト細胞における高親和性IgE受容体シグナル伝達機構におけるSyk/Cbl複合体について <太田康男> 306マスト細胞における高親和性IgE受容体(FcεRI)刺激による活性化機序について-特にSykチロシンキナーゼの活性化機序について プロトオンコジンプロダクトp120Cbl マスト細胞におけるSyk/Cbl複合体2.Fcレセプター ノックアウトマウス <高井俊行> 312FcRの分子構造の概観 FcεRIαおよびFcRγノックアウトマウスにおける過敏症反応の消失 FcεRIIノックアウトマウスとIgE産生 FcγRIIBノックアウトマウス 抗原提示とFcR索 引 321Annual Review 免疫 1997 目次 326Annual Review 免疫 1996 目次 327