内容説明
「嫁に出した娘はこぼした水も同然」―女性は嫁いだら夫の家を中心に生活を営み、父親の家からは排除されるという諺。結婚した女性は、父親の村であれ夫の村であれ土地を分配され、土地が収用された場合は補償金等を受け取る権利がある。しかし、この諺を制度化した規定によって、村外の男性と結婚し出身村で生活する女性、外国人や都市戸籍の男性と結婚して戸籍を移せない女性、離婚して生家に戻った女性、まもなく結婚して村外へ移住すると予測される未婚女性等が権利を剥奪され、「農嫁女」が生み出されていった。中国農村女性の農地をめぐる権利の侵害「農嫁女問題」はなぜ高度成長期に発生したのか。ジェンダー秩序の再編は資本蓄積の中でどんな役割を果たしたのか。本書は「農嫁女問題」の発生原因を歴史、政治経済の2つの側面から分析するとともに、農嫁女の抵抗運動についても実地調査をもとに紹介する。
目次
問題の所在と本書の目的
第1部 農嫁女問題の歴史分析(平均主義、フェミニズム、土地権;近代中国女性の土地権の変遷)
第2部 農嫁女問題の政治経済学的分析(改革開放以降の農村女性土地問題に関する報道―『中国婦女報』(1984~2010年)を中心に
女性への略奪を赦免された国家介入型資本主義―婦女聯の農嫁女問題に対する認識・対応
「農嫁女問題」とは―現代中国における進行中の本源的蓄積)
第3部 農嫁女たちの抵抗運動(現代中国土地開発における農嫁女と彼女らの抵抗運動―河北省A村を事例に;社会主義法治への探索―民間法律援助組織と農嫁女の連帯を中心に)
著者等紹介
李亜〓[リアコウ]
1987年中国河北省石家荘市生まれ。2019年お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科ジェンダー学際研究専攻博士後期課程修了。博士(社会科学)。お茶の水女子大学基幹研究院リサーチフェローを経て、現在、日本学術振興会外国人特別研究員(東京大学社会科学研究所)。専攻はジェンダー論、中国地域研究、フェミニズム経済学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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