内容説明
「漢とはいったい何だろうか」「なぜ一王朝名である漢が、文字や民族を表す呼称に用いられるようになったのか」という疑問を端緒として、漢から唐において、漢王朝がどのように規範化されていったのかをひもとく。
目次
第1章 集団から帝国へ―前漢
第2章 懐旧と称揚の狭間―後漢
第3章 「漢」を継ぐもの―三国西晋における「漢」
第4章 「漢」との距離感―五胡十六国
第5章 漢から周へ―東晋南朝
第6章 儀表としての漢―北魏の領域と漢の領域
第7章 漢王朝へのまなざし―唐王朝における先行王朝と故事
著者等紹介
岡田和一郎[オカダヤスイチロウ]
京都府立大学共同研究員
永田拓治[ナガタタクジ]
阪南大学国際コミュニケーション学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ピオリーヌ
16
前漢から唐まで、中国史上において漢王朝がどのように認識され、規範化されていったのかを明らかにすることが本書の狙いとされる。他注目すべき点として、三国期には後漢史は編まれたが前漢史の再構築は行われず、三国政権の中で魏朝だけが後漢史を残していない点、政権奪取を成し遂げた西晋政権が、禅譲劇の詳細を丁寧に叙述し、その行為を正当化すればするほど、禅譲による定位循環の可能性が高まる、という論理破綻を感じていたことは容易に想像できるという指摘があげられる。また唐王朝では当初自らが北周・隋の系譜に連なる王朝であるとしてい2022/08/26
kuroma831
14
「なぜ一王朝の名前でしかない漢が文字や民族を表す呼称になったのか」というテーマで、漢王朝がどのように中華王朝のモデル・規範となったのかを複数の研究者が紐解く。古くは前漢成立直後に劉邦集団が政権中枢から遠ざかり帝国化する経緯、新しくは唐代に北周・隋からのルーツを改めて漢王朝が二王三恪として扱われた経緯まで、時間軸や着眼点を変えて「漢」とは何かを探る。魏晋南北朝の分裂期に各王朝が史書編纂や五行や礼楽、爵位など様々な要素で漢に繋がる正統性を求めるのは面白い。めちゃくちゃ面白かった。2024/07/19
さとうしん
14
同時代の前漢から三国・西晋、唐代に至るまでの、官制、五徳の配当、史書編纂、年号、君主の諡号・廟号、祭祀などに現れる各時代の漢王朝観を概観。漢の記憶が薄れるにつれ、懐旧の対象に周王朝が加わるなど、変化が見られるのは面白い。ただ、第六章が本書のテーマとの関わりが薄いのは残念。2022/04/02
じょあん
6
「なぜ一王朝である漢が、文字や民族を表す呼称に用いられるようになったのか」そこまで象徴的存在となった漢王朝。 次に漢王朝に比肩する存在は唐王朝の登場を待たなければならない。というわけで本書は、漢が存在した時代から唐までのそれぞれの時代で漢がどういう存在だったかについて迫っていく内容になっている。各時代における漢認識を考察することで「漢とは何か」に迫ろうとするその試みは読み応えのあるものだった。2022/05/03
Mana
2
複数の筆者がそれぞれの切り口で執筆しているので、内容はバラバラだが概ね面白い。2022/06/30