内容説明
『次郎物語』と台湾の間には直接的な繋がりはなにもない。台湾という地名すら出てこないであろう。しかし、湖人の主著『次郎物語』には、特に後半部には、作者の台湾での経験というものがさまざまな形で盛り込まれているように思われる。現代台湾人の著者が帝国主義下の台湾における下村校長の言動に注ぐ、ときに厳しく、ときに温かいまなざし。本書は大日本帝国のエリート文教官僚が植民地教育に挫折して内地の社会教育運動へと転向し、自伝的小説『次郎物語』『論語物語』を書き続け、帝国の崩壊後ようやく社会教育者、教養小説家へと成熟していく過程を描いている。
目次
第1章 下村湖人との出会い
第2章 九州から台湾へ
第3章 台中一中ストライキ事件
第4章 台北高等学校ストライキ事件
第5章 台湾時代の下村湖人の短歌
第6章 離台後の下村湖人
第7章 下村湖人の台湾経験と『次郎物語』
終章 台湾人にわびたい
著者等紹介
張季琳[チョウキリン]
1961年台湾の高雄生まれ。1984年、中国文化大学(台北)卒業、1988年、論文「六朝志怪における観世音信仰」により東京大学文学修士学位を取得、2000年、論文「台湾プロレタリア文学の誕生」により東京大学文学博士学位を取得。文京女子短期大学(東京)講師などを経て現在は中央研究院中国文哲研究所(台北)副研究員。戦前期台湾の日本語文学、台湾文学を専攻。論文「楊逵と入田春彦―台湾人プロレタリア作家と総督府日本人警察官の交友をめぐって」(2001年第1回日本台湾学会賞受賞作)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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