出版社内容情報
小さな花ばなに光る詩人の感性が、みごとに結晶した珠玉の六短編に、無限の色彩を感じる挿絵の絵本。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
(C17H26O4)
94
美しい色彩が次々と目の前に浮かんできます。その色彩の透き通った輝きが心に沁みます。例えば「コバルトの硝子の光のこな」「日光は今朝はかがやく琥珀の波」「藍晶石のさわやかな夜」そこに赤く燃えるようなダァリヤや、虹のように熟れためくらぶどうや。いのちのはかなさを感じるお話たちはどれもさみしいようですが、「すべてのおとろえるもの、しわむもの、さだめないもの、はかないもの、みなかぎりない命です」と虹は言います。(『めくらぶどうと虹』)画はいわさきちひろ。2020/05/10
ポップ
33
花は咲き誇り、鳥は舞い踊り、私たちに語りかけます。赤と黄はお構いなしで白を気にかける「まなづるとダァリヤ」、憧れの存在とお近づきになりたい「めくらぶどうと虹」、やんちゃとおせっかいの「ひのきとひなげし」、美しい蜂雀が語る「黄いろのトマト」、銀毛は光って飛び、ひばりは歌を贈る「おきなぐさ」。母なる木から千人の黄色い子供たちが旅立つ「いちょうの実」は何回目でも心を震わせます。期待と不安を兄弟や姉妹が分け合う姿は、何て健気でしょう。いわさきちひろの自在なタッチの水彩画は、詩的な童話と調和していました。2020/09/13
みずたま
21
日本語がとても美しい。まなづるとダァリヤ、めくらぶどうと虹、ひのきとひなげし、黄いろのトマト、おきなぐさ、いちょうの実の6編収録。宮沢賢治の世界にちひろさんの絵も合いますね。欲を言えば、挿絵がカラーだったらもっと良かったな。2015/06/26
クラムボン
11
童心社の「若い人の絵本シリーズ」から、アンデルセンの「絵のない絵本」に続いて読みました。花にまつわる童話が6篇、挿絵は同じく岩崎ちひろが描いている。表紙の「ひのきとひなげし」の赤色が印象的だが、挿絵は全てモノクロ…ここは色彩豊かな絵が見たかったが、色が無い分、目を凝らして絵を丁寧にじっくり見ることになる。6篇の内「おきなぐさ」と「いちょうの実」は、花や実が熟して風や鳥によって遠くへ運ばれる寸前を描いて、明日への不安と期待を感じるが、他の作品では哀しみがベースに漂っていて、そこが作品の持ち味でもあると思う。2025/03/30
izw
8
「本の力」の中で、著者の酒井京子さんが、自分が編集担当となって、いわさきちひろの黒姫のアトリエに付き添った体験を語っていたのを読んで、読んでみたくなり、図書館で予約しました。原画には表紙のような淡い色が付いているのかなあなどと想像しながら、墨絵のようなモノクロの優しいタッチの画を眺めて楽しみました。宮沢賢治の作品ながら、どの童話も初めて読むものでした。ほんわかした雰囲気で、まったりとした時間が過ぎ去った気がします。2021/11/10