出版社内容情報
本書の概要
「授業が終わった後、ある子供が枝を抱きしめて、『これ、絶対持って帰る』と言いました。 じっくりと関わることで、枝が自分だけの宝物になったのでしょう」(本文より)。文部科学省教科調査官として全国を飛び回る著者が出会ったのは、自分らしくひたむきに表現し、鑑賞する子供の姿と、伴走者として寄り添う教師のまなざし。正解のない問いに対して自分なりの答えをつくる図画工作の学びは、混沌とした現代を生きていくために必要な感性を育み、心豊かな人生へとつながる「宝物」を子供たちにもたらします。子供の笑顔が輝く珠玉の授業実践12例を通して、図画工作の学びを支える教師の心掛けや手立てを伝える一冊です。
本書からわかること
図画工作はよりよく生きるための学び
図画工作では、単に上手な作品をつくれるようになればよいわけではありません。生活や社会の中で出会う形や色などと豊かに関わる資質・能力を身に付けることが、よりよい人生や社会をつくることにつながります。それは将来の役に立つというだけではなく、今感じたりつくったりすることそのものを楽しむ経験を大切にするということです。
第1章では、図画工作の学びが子供にとってどんな意味や価値があるのかということを考えます。自分はどうしたいのかという正解のない問いに挑む表現の活動や、対象のよさを味わいながら、自分なりの見方や感じ方を深めていく鑑賞の活動。それらを通して育まれる子供の感性は、不確実な時代において、今後より一層重要となるものです。
図画工作の授業づくりで大切にしたい5つのポイント
授業の主役は子供です。子供が夢中で活動し、自分らしさを発揮できるようにするために、教師はどうしたらよいのでしょうか。第2章では、5つのポイントを挙げながら、教師の手立てについて解説します。
①思いを表現するための材料や用具の準備
②豊かな活動が広がる場所の設定
③じっくり感じ、考え、表す時間の設定
④子供の活動を支える教師の関わり
⑤指導に生かす学習評価の視点
さらに、それらのポイントを踏まえた実際の授業研究の様子を、教師同士のやりとりを通して紹介しています。
ワクワク、ドキドキ、のびのび、キラキラ、じっくり……子供の心が動く瞬間を見つめて
第3章では、著者が見つめた12例の授業場面を通して、自分らしく輝く子供たちの姿と、それを支える教師の工夫を紹介します。ここでは子供の心の動きに着目し、以下のテーマごとに実際の授業の様子を生き生きと伝えます。子供が自分だけの「宝物」を生み出す瞬間を、ぜひあなたも味わってみてください。
【目次】
はじめに
第1章 子供にとっての図画工作とは
1 子供たちは図画工作で何を学ぶのか
2 同じ空間で共に学ぶ
3 地域の中で学ぶ
第2章 図画工作の授業づくり
1 図画工作の授業づくりで大切にしたいこと
2 思いを表現するための材料や用具の準備
3 豊かな活動が広がる場所の設定
4 じっくり感じ、考え、表す時間の設定
5 子供の活動を支える教師の関わり
6 指導に生かす学習評価の視点
7 授業研究の様子を見てみよう
第3章 心が動く図画工作の授業
〈ワクワク〉 この材料でどんなことができるだろう
事例1 地域の材料「木材」
1年:造形遊びをする活動
「つんで、ならべて」
事例2 見て、触って、違いに気付く「布」
4年:絵に表す活動
「布でえがこう」
事例3 地域の材料「カーテン」
6年:造形遊びをする活動
「光と風を感じて」
事例4 様々な材料「木材やアルミ缶など」
6年:立体に表す活動
「木と金属でいい感じ!」
〈ドキドキ〉 用具が体の一部になる
事例5 「わざ」を使って「段ボールカッター」
2年:工作に表す活動
「ダンボールでなかよしハウス」
事例6 心地よい音とともに「金づち」
3年:立体に表す活動
「釘LABO」
〈のびのび〉世界を多様に見る
事例7 図工のメガネをかける
1年:鑑賞
「えだとなかよし」
事例8 見方を変える
4年:鑑賞
「私のきれいを閉じ込めて」
事例9 様々な角度から見る、感じる、伝え合う
5年:鑑賞
「私の美術館・感・観」
〈キラキラ〉夢を抱き、未来を想像する
事例10 こんなところへ行ってみたい
1年:絵に表す活動
「とびきりすてきなのりものにのって、自分だけのぼうけんへ」
事例11 夢を形に
3年:工作に表す活動
「いしちゃんといっしょ」
〈じっくり〉自分を見つめる
事例12 自分の気持ちを表す
5年:絵に表す活動
「今、私の心は……」
おわりに