内容説明
ウクライナ、中東、北方四島、そして北極へ。東西南北に張り巡らされるロシアの新勢力圏。露わになるロシアの軍事的野望の向かう先は?混迷する世界秩序を理解するための必読書!
目次
はじめに―交錯するロシアの東西
第1章 「ロシア」とはどこまでか―ソ連崩壊後のロシアをめぐる地政学
第2章 「主権」と「勢力圏」―ロシアの秩序観
第3章 「占領」の風景―グルジアとバルト三国
第4章 ロシアの「勢力圏」とウクライナ危機
第5章 砂漠の赤い星―中東におけるロシアの復活
第6章 北方領土をめぐる日米中露の四角形
第7章 新たな地政的正面 北極
おわりに―巨人の見る夢
著者等紹介
小泉悠[コイズミユウ]
1982年千葉県生まれ。早稲田大学社会科学部、早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了(政治学修士)。民間企業、外務省専門分析員、未来工学研究所研究員、国立国会図書館非常勤調査員などを経て2019年から東京大学先端科学技術研究センター特任助教。専門はロシアの安全保障政策、軍事政策等(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まーくん
106
元々著者の専門はロシアの軍事安全保障政策であったという。ウクライナ戦争が始まり、その豊富なロシアの軍事知識に基づいた的確な判断からメディアによく登場するが、見通せなかった事には、率直に判断の甘さや間違いを認める誠実さが好感されている。本書は今次のウクライナ戦争前の著作で2014年のロシアによるクリミア併合を受けて、ロシアの秩序観~「主権」と「勢力圏」を手懸りとして帝国ロシアの地政学について分析している。ロシア(プーチン)の考える主権の概念では軍事・政治同盟の枠内にある場合、上位者にその主権は制限される。⇒2023/09/26
アキ
78
ロシアから見た地政学。ロシア人は地政学と言う言葉が好きらしい。ロシアが介入を起こしている場所はグルジア、ウクライナなど旧ソ連国。ロシア民族の多いウクライナ・ベラルーシはほとんどロシアと思っている。ロシアはドイツでさえ主権国と認めていない。中国やインドなど軍事力も主権もある国のみ主権国とみなす。もちろん日本はアメリカの言うなりの半主権国であり、北方領土に最新の戦闘機を配置しているロシアにとって日本に引き渡すことは露ほど思っていないのだろう。敵を作ることでアイデンティティーを保ってきた。次は北極海が標的になる2019/10/28
南北
77
ロシアの地政学についての本です。すべての主権国家に「主権」が存在するのではなく、政治・軍事同盟の盟主だけが「主権」をもち、「主権」を持つ国の周辺にある中小国は「勢力圏」とするのがロシア流の考え方です。したがって日本やドイツは「主権国家」ではないという発言にもつながるのです。こうした考え方が北方領土やバルト三国・ウクライナなどでどう受け止められているかについて解説されていますので、理解しやすいと思います。天然ガス資源に支えられている部分は価格の変動を織り込んでいないので、やや過大評価のような気がしますが。2020/03/04
ぶ~よん
73
2019年に刊行されたロシアの地政学書。今ほどウクライナとの関係が緊張状態ではなかった時代に、ロシアにとってのウクライナ、或いは旧ソ連を分かりやすく解説してくれる。日本人には理解し難い感情だが、ロシアにとっての国境はフラスコではなく浸透膜のようなものであり、グラデーション状にイメージされているということ。ロシア民族の住む場所には主権が及ぶという考え方で、彼らは彼らなりに侵攻を正当化する理由がある。だからと言って、今日行われている侵攻を正当化する本ではないので、興味のある人にはおすすめの一冊。2025/03/25
syaori
69
「「主権」とは、ごく一部の大国のみが保持しうる」というロシア独特の主権観を通しロシアの対外政策を見てゆく本。そこから浮び上がるのは、少数の「主権国家」がそれぞれに勢力圏を従えて並存するというロシアから見た世界の姿で、そこでは旧ソ連諸国は半主権国家としてロシアの影響下にあり、東欧の民主化支援をする米国は内政に干渉し世界秩序を不安定化している悪ということに。一国の動向は一つの視座からのみ読み解けるとは思いませんが、ウクライナ侵攻におけるロシアの立場もこの視点からだと理解しやすくなるようで、興味深く読みました。2022/10/06