出版社内容情報
田舎町に住む小学六年生の拓人は、幼い頃に神隠しに遭い、その間の記憶を失っている。そんな彼の前に、弓月小夜子と名乗る年上の少女が現れた。以前、拓人の母とともに三人で暮らしたことがあるというが、拓人はどうしても思いだせない。母の入院のため、夏休みを小夜子(サヤ)と過ごすことになった拓人。だが、サヤはなぜか自分のことを語ろうとしない。拓人の記憶に時折よぎるのは、降りしきる花びらと、深山で鳴りつづけるバイオリンの音、月が狂ったように輝く海――なぜ俺はサヤを忘れてる? 少年時代のきらめきと切なさを描いた傑作。
内容説明
田舎町に住む小学六年生の拓人は幼い頃に神隠しに遭い、その間の記憶を失っている。そんな彼の前に、弓月小夜子と名乗る年上の少女が現れた。以前、拓人の母と三人で暮らしたことがあるというが、拓人は思いだせない。母の入院のため夏休みを小夜子と過ごすことになるものの、彼女は自分について話さず…。“彩雲国物語”の著者が贈る、少年時代のきらめきと切なさに満ちた傑作。
著者等紹介
雪乃紗衣[ユキノサイ]
2002年、『彩雲国綺譚』で第1回ビーンズ小説賞の読者賞と奨励賞を受賞。翌年には同作を改題・改稿した『彩雲国物語 はじまりの風は紅く』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mayu
75
拓人は、幼い頃に神隠しにあい、その時の記憶がない。ある夏、かつて一緒に住んでいたという年上の少女が訪ねてくるが、拓人はどうしても彼女のことを思い出せない。夏の入道雲と青い空、近くの神社の夏祭り、鬱蒼と茂った森に囲まれた底なし沼。眩しいほど輝いていた特別な夏。ノスタルジックな雰囲気の中で、現実と、結界を越えた先の幻想を行き来する。たしかにあったはずの想いを引き寄せ、記憶を取り戻した時、拓人はまた新たな喪失を迎える。最後は、拓人と彼女が選んだ永遠の夏の中なのか。美しく、ちょっと不思議、そして切ない夏の物語。2022/08/14
優希
56
面白かったです。ゆっくり流れる夏休みが愛おしい。1日 1日と流れていく時間が楽しさと切なさに満ちあふれているように思いました。少年時代の夏休みはきらめきでできているのですね。2022/11/08
よっち
34
田舎町に住む小学六年生の拓人は、幼い頃に神隠しに遭い、その間の記憶を失っている。そんな拓人の前に、以前拓人の母と三人で暮らしていたことがあるという弓月小夜子と名乗る年上の少女が現れるひと夏の物語。母親が入院して小学生最後の夏休みを小夜子と二人で過ごすことになった拓人。親友の彰や会えば喧嘩する数馬も交えて過ごす夏休みの日々と、なかなか思い出せないサヤと過ごした日々の記憶。時系列的に入り組んでいてやや状況が把握しづらいところもありましたけど、思い出した過去と、とても優しくてやるせない結末が印象的な物語でした。2022/07/24
うみ
21
眩しくて切なくて、夏が五感に訴えてかけてくる今読んで良かった一冊。 雪乃さんの文体に引き込まれて、いつの間にか目の前に入道雲、木漏れ日、神社、蝉時雨、鬱蒼とした森が広がってる感覚。夏のあの何か始まる予感を連れてくる"感じ"が肌に伝わってきて、暑さとか匂いまで感じた気がした。白黒の文字なのに色鮮やかというか…この世界の余韻から抜けたくなくて、でも少年達の戻らない夏の結末はどうなったのか早く見届けたくて、夢中になって読んだ。雪乃さんの文体はまりそう。2022/07/30
昼夜
17
もう二度と戻らない夏休みを想うとき、いつもこの表紙のように青空と大きい入道雲がいるけれど本当にあの日々は求めているほど美しかったのか。晩夏に「永遠の夏をあとに」が沁みて、いや、断じて違うと思った。ノスタルジックに浸りたいときはYoutubeのミックスリストと共に再読しよう。2022/08/28