内容説明
過去のすべてを捨て、彼女は逃げていた。幼い息子と娘を道連れに。エリート・ビジネスマンの仮面に隠れ、家庭内暴力と我が子への性的虐待を繰り返したかつての夫から守るために。めざすはサンタフェ。そこで待つある人物が自分たちをかくまってくれるはず。でも、あの男は執拗だ。諦めずにどこまでも追ってくるだろう…。そのころ彼もまた逃亡の旅を続けていた。妻と二人の小さな息子を、虐待の果てに撃ち殺してきたばかりだった。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みも
2
96年初版の文庫。20年前だ。なんの予備知識もなく読み始めたが素晴らしい。訳者(務台夏子)が上手いのが、原文が良いのかはわからないが、簡潔でありながら登場人物の心象描写も見事。サンタフェを舞台に3方向から描かれるが、場面の散漫による混乱もなくそれぞれの人物がしっかり構築されている。デヴィッドの不気味さや彼のDV,離婚後のストーカーに追い詰められ、裁判で絶望し狂気に近づいてゆくケイトの心理の推移描写は秀逸。現代日本の社会にも通じる事件の恐怖がそこにはある。どこに行きつくのかわからない。さあ、下巻に進もう。2016/02/15