感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぐうぐう
15
司政官シリーズがユニークなのは、権力内部から社会構造の問題点を炙り出そうとしている点だ。そしてさらにユニークなのは、権力と言いながらも、植民惑星を統治すべき司政官制度が、すでに形骸化の傾向が増し、落日の存在となっていることだ。連邦と住民の板ばさみとなる司政官は、まさしく中間管理職の悲哀を滲ませている。『消滅の光輪』の主人公、植民星ラクザーンの司政官マセは、そんな微妙な立場の中で、司政官がもともと持っていた力の復権を、あくまで公のために求めていく。その悩める姿が、本書の読みどころだ。2012/01/09
k16
14
20150818上巻読了。 派手さはないがジワジワくる。 しかしこのペース、下巻で退避完了するのか。 2015/08/18
本の蟲
11
作者の代表作「司政官」シリーズの長編にして第7回泉鏡花文学賞、第10回星雲賞受賞作。無数の官僚ロボット群を従え、植民星をたった一人で統治する絶対権力者、司政官。だがそれも過去の話。現在は連邦や地元の有力団体の調整役にして時代遅れの名誉職と考えられていた。そんな植民星の一つ、ラクザーン。近い将来ラクザーンの太陽が新星化し、人の住めない惑星になるという。植民者の退避計画の密命を帯びて新たな司政官が派遣されるが、司政官を軽んじる各団体、企業、真意の見えない先住民の間で苦悩する。果たして住民の退去は無事進むのか?2020/12/24
イツキ
11
滅亡が決まった惑星から住民を避難させようとする司政官の奮闘を描く物語。権威が形骸化した司政官と司政官を形だけのものと見做している経済体の駆け引き、何を考えているのか捉えきれない先住民たちとのやり取りがとても読み応えがあります。また、官僚ロボット達に囲まれロボット達を統制する司政官の役目と感情との折り合いをつけようとする自問や人間とロボットとの違いといった問いも印象的でした。2018/01/01
DEAN SAITO@1年100冊
9
一定の権限を与えられながらも、自分より強大な、より「大きな」動きを前にしてなすすべもない、1人の官僚の悲哀を痛々しいほどに描いた傑作。同じ司政官シリーズの、『引き潮のとき』の文庫化も待ち遠しい。2018/06/25