内容説明
ただ一人の富豪が所有する、この世に一台きりのタイムマシンが世界を変えてしまった。過去に干渉することで突然、目の前の相手が見知らぬ人間に変わり、見慣れた建物が姿を変えてしまうのだ。おれは私立探偵。だが、常に歴史が変わる―現在が変わりつづけるこの世界で、探偵に何ができるというのだろう。そのおれが、ある日、当の富豪に雇われた。奴は何者?空前絶後の時間SF。
著者等紹介
鏡明[カガミアキラ]
1948年山形県生まれ。作家、翻訳家、評論家。早稲田大学文学部卒。学生時代よりSF同人誌で活躍。1970年にメリット『蜃気楼の戦士』で翻訳家デビュー。同年、短編「オム」を発表し作家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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森オサム
69
著者初読み。世界に一台だけあるタイムマシン、それを動かせる人間も一人しか居ない。すなわちその人物は自由に過去を改変出来る「神」とも言える存在な訳です。そんな世界で私立探偵をしている男を主人公としたハードボイルド。タイムマシンで過去を変える事がタブーでは無い、と言う設定は斬新で、話をしている相手が目の前で別の人物に「異化」する事もある。何も信じられない異常な世界なのに、ちゃんとSFハードボイルドミステリーになってました。34年前に書かれた作品ですが古さは余り感じず、面白かったです。まあ不思議な物語でした。2018/08/16
ntahima
17
【Kindle-208(Unlimited)】標準タイム5時間58分。世界に1台だけ存在するタイムマシンが過去に介入し技術の進歩を加速させている社会。設定はタイムパラドクスを扱ったSFだが、展開はハードボイルド。そしてその本質は、過去さえも変化する世界での、余りにも切ない恋物語。但、ややM。ここでいう“切なさ”とは「懐かしい人と夢の中で再会して、楽しい語らいの時を送っている途中で突然目が覚める。まだ、夢の記憶は残っている。もう一度夢に戻ろうと足掻くが戻れない。薄れ行く記憶…。その時に感じる喪失感」枕中記。2017/12/25
昼と夜
17
ジェニファー!!やばい、めっちゃ面白かった!ピンチョンの後読んだから、あれ?私ピンチョン読んでたっけ?ってな感覚に陥るアメリカナイズなハードボイルド。2014/06/21
CCC
16
過去改変が珍しくなくなったので現実も歴史も不確かになった世界の話。因果関係がめちゃくちゃになりそうだが、そこは思ったほど壊れていなかった。「今」に案外強固なところがあったからだろうか。それよりブラックボックスの多さが気になった。ハードボイルドとラブロマンス要素が強く、気になる設定の多くが背景化してるのは、かゆいところに手が届いていない感じもする。ただなにはともあれ面白い設定だった。不条理になりそうでなりきらない独特の空気感がある。2024/11/19
不在証明
15
ハードボイルドSF。歴史改変モノ。SFとしての世界はそんなにカッチリと練り上げられておらずどちらかといえばエンタメ寄りで、しがない探偵屋稼業、どこかとぼけた主人公、妙に味のある掛け合い等々、『パルプ』を連想させる設定の数々。あちらには一歩及ばない気がするが、クスリとできる会話もあり楽しめる。―おれは勢い込んで答えた。「そいつはわかっている。H・G・ウェルズという奴だ。奴の職業は―」ジェニファーが吹き出した。「小説家っていうんじゃないでしょうね?」「そのとおりさ、そんなに有名な作家なのか?」― ヒント:偽名2016/08/10