内容説明
1948年。戦後のパリで、シュルレアリスムの巨星アンドレ・ブルトンが再会を約した、名もない若き天才。彼の創りだす詩は麻薬にも似て、人間を異界に導く途方もない力をそなえていた…。時を経て、その詩が昭和末期の日本で翻訳される。そして、ひとりまたひとりと、読む者たちは詩に冒されていく。言葉の持つ魔力を描いて読者を翻弄する、川又言語SFの粋。日本SF大賞受賞。
著者等紹介
川又千秋[カワマタチアキ]
1948年、北海道小樽市生まれ。作家、評論家。慶應義塾大学文学部卒。学生時代よりファン活動を始め、SF専門誌で評論を発表。『火星人先史』で第12回星雲賞を、『幻詩狩り』で第5回日本SF大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はらぺこ
34
読み易かった。 自分にはSFの知識が全く無いのでホラー小説を読んでる気分でした。2015/02/07
みなみ
27
読んだ者は皆魅了させられてしまい、やがて異界へと導かれてしまう詩集をテーマとしたSF。日本の出版社がひょんなことから、この危険な詩を翻訳して出版することとなり、内容が広まっていく。国の機関による高圧的な取締りが行われる様子は、退廃的な雰囲気もあって興味深かったし、実際にそんな詩集があれば自分も読みたくなってしまいそうだ。2024/04/27
田氏
25
ドゥバド。ハヤカワの某異常な論文にて、作中作の言語SFを「『幻詩狩り』があれば不要な作品群」と評価する場面があって、つまりは言語SFの系譜を振り返ったときのメルクマール的な作品なのかな、と解した。とは言っても、ハードな理詰めではなく、言語学や認識論に切り込むことになりかねない部分は、うまくぼやかされている。ドゥバド。登場するシュルレアリストたちはブルトン始め実在で、生きざま死にざまも史実に沿っているから、ひとり登場するたびにwikipediaに脱線して行ったり来たりドゥバんダりするのもまた一興。ドゥバド。2022/07/21
山田太郎
23
もうちょっと難解な話かと思ったが、えらく読みやすかった。このころのSFはなに読んでも楽しめるな。2012/09/13
ntahima
18
【Kindle-209(Unlimited)】標準タイム4時間58分。時代設定は現在、1940年代、そして2131年に三分される。展開は鈴木光司のカルト作品『リング』に似ているが、呪いなどというものではなく、寧ろアーサー・マッケンの傑作『パンの大神』の覚醒に近い。実在のシュルレアリストが多数登場し次々と死んでいく。いくらなんでもこれは創作だろうと思ったが、調べてみると事実らしい。この史実と虚構が巧みに組み合わされた構成となっている。時の切り替えが唐突な気もするが、結果的にそれが良質の余韻を醸し出している。2017/12/26