内容説明
亡き親友との銀河の覇者となる約束を果すべく決意を新たにしたラインハルトに、イゼルローン攻略のための大計が献じられた。その裏で暗躍する第三勢力フェザーンの狙いとは。一方、ユリアンの初陣からの帰還に安堵する間もなく、ヤンは査問会に召喚され、同盟首都に向かう。だがその隙を衝くようにイゼルローンの眼前に帝国軍要塞が出現。巨大要塞同士の戦いの火蓋が切られた。
著者等紹介
田中芳樹[タナカヨシキ]
1952年、熊本県生まれ。学習院大学大学院修了。78年「緑の草原に…」で幻影城新人賞受賞。88年「銀河英雄伝説」で第19回星雲賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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カピバラKS
134
●ヤン提督の舎弟ユリアンの見事な初陣、ヤン提督の意外な口達者ぶりが明らかになる査問会そして白色彗星帝国対自動惑星ゴルバ戦の如き様相のイゼルローン要塞対ガイエスブルク要塞戦を描く。●ところで、戦闘描写については、一般に映像表現と比べて作文表現は不得手とされる。しかし本書での宇宙艦載機戦は「ビームがきらめいて闇を灼き、ミサイルの曳光が宙をぬい、艦艇の爆発光は超短命の恒星となって四方を照らす」と描かれ、修辞巧みで躍動感に溢れる。●作文表現による戦闘描写も味があって佳いものだ。2024/07/03
ぶち
110
同盟の中央にいる政治家の腐敗が目につく巻でした。ヤンの言葉「国家が消滅して最も困るのは国家に寄生する権力中枢の連中であり、彼らを喜ばせるために人間が犠牲になる必要はない」は、どこかの国の現在を見せつけられたような気持になります。帝国側では、キルヒアイスを失くしたラインハルトが孤独を深めていきます。「おれの周囲には、おれを理解しようとしない奴ばかり残る。それとも、やはり、おれ自身の罪か」という述懐には切なくなってしまいます。そして、両陣営を操るように暗躍するフェザーン。どういう結果を招いていくのでしょう。2021/03/23
おかむー
100
安定の名作第三巻。シリーズ再読の読者にしてみるとアッちゃんことアッテンボローがこの巻で初登場だったという事実が意外。後半の存在感からすると最初から出てるイメージあるからね。『たいへんよくできました』。ユリアンの初陣に始まる前半はどちらかといえば同盟側の比重が大きめで、査問会を舞台にしたヤンの舌戦が痛快。後半でのイゼルローンvsガイエスブルグを軸にした白兵戦、艦隊戦、要塞戦という派手さが山場ではあるけれど、それぞれの場面での人の心の動きを掘り下げてこその戦術、計略だからこそ説得力がある。2016/03/27
金吾
98
○権勢を握った政治家や御用学者の嫌な部分が遺憾なく表現されており、それをヤン提督が論破していく様は胸がすきました。テミストクレスやハンニバルの例にもあるように英雄は危険な立場だなと思いました。2020/06/30
fukumasagami
87
ケンプもミュラーも、火球となって炸裂する僚艦を、いくつも眼前に見た。戦線と司令部との距離は、事実上零となっていた。帝国軍は全面敗北の深淵に、いまやなだれ落ちようとしている。「退却するな!」怒号するケンプの額から、汗が玉となって飛んだ。 「退却してはならん。あと一歩だ。あと一歩で銀河系宇宙が吾々のものになるのだぞ!」2021/05/29