内容説明
カリフォルニア州に建造された巨大な陽子ビーム偏向装置が突如暴走事故を起こし、八人の男女がまきぞえとなった。その一人、ジャック・ハミルトンは、ほどなく病院で意識を取り戻す。身体には何の異状もなかった。だが、そこは彼が知っている現実世界とは違った、奇怪な宗教に支配される世界だったのだ。八人はもとの世界に帰る方法を探り始めるが…。高名な傑作初期長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
51
SFマガジン10月号でのディック特集について読友さんとコメントを交わしていた際、この本のことを知りました。陽子ビームの直撃を受けて異世界に飛ばされた8人。自分の持つ倫理観が他人にも適応されるとは限らない。このことがプリチェット夫婦のキリスト教の教義を歪めた偽善性やリースの強迫観念による狂った思想が現れた世界に現れていて怖いです。また、冷戦突入によるアカ狩りが台頭した1955年に描かれたためか、全体主義への批判もなされているのが興味深い。ラストがディック特有の仄暗さや虚しさを湛えたものじゃないのが意外でした2014/08/31
がんぞ
6
’55年初頭執筆、前年に一段落したマッカーシズムを反映して。兵器関連企業に勤務する主人公は妻が“左翼党新聞を取り、集会にも参加、ロ‥夫妻の助命嘆願署名、チャップリンの再入国禁止に抗議の新聞投書‥”つまりスパイとなりかねない由で失職する、とPKDでは類の無いリアルな導入。想定’59年=殆現在も異例《この世界が悪夢世界では無いのか?》/最初の悪夢《第二バーブ教》イスラム教系は実在するが、天動説実現宇宙はむしろキリスト教原理主義だろう。それをからかった一次原稿を修正したのでは無いか?自己防衛に主人公は攻撃的冷笑2016/11/08
カン
3
あえて虚空の眼の方を再読。ものすごく粗いけど所々に後のディックが見え隠れしてます。少なくとも、自分的にはアンドロイドは~よりも面白いと思ってます。2019/10/07
記憶喪失した男
3
SFマニアとこの作品が平行世界ものなのかどうかをとうとうと議論し、ぼくは平行世界ものではないと主張し、決裂。以後、ぼくは一部のSFファンに嫌われている。
もJTB
2
アルトネリコっていう深層心理に入って問題を解決することで現実のドラマも進行するガストが出してた美少女RPGがあるけど、それ系の小説。2013/10/24