内容説明
世界が再び全面戦争の危機に直面した21世紀、ついに量子コンピュータは完成を見た。この世界は唯一の存在ではなく、同様に無数の世界が並行してあり、それらの相互干渉によって、いかなる物事が起こるのかが決定される。国防総省の極秘プロジェクトは、その別世界に干渉することで、現実の世界危機を回避できるというが…。量子力学の“多世界解釈”に基づく多元宇宙ハードSF。
著者等紹介
内田昌之[ウチダマサユキ]
1961年生まれ。神奈川大学外国語学部卒業。英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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乱読太郎の積んでる本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
白義
11
今ではある種のサブジャンルとなりつつある多世界SF。それをハードSFの巨匠ホーガンが真っ正面から扱うとこうなる、という見本のような作品。ドイチュに示唆された多世界解釈と生命、意識の関係はかなりガチな解釈だし、リバタリアニズム的な自由と、東洋思想が融合した現代SFに少ない超楽天性、健全さは相変わらずのホーガンらしさ。比較的新鮮なのは、ホーガンがこの世界の科学が、あまりにも速度が過剰ではないかと考えているように見えることだろうか2012/02/04
roughfractus02
7
多宇宙が舞台のSFでは、波動関数を収縮させる力を人間に与えると、他の生命体によって地球は宇宙から隔離され(G・イーガン『宇宙消失』)、収縮する力が与えられないと、無数の並行世界と人間の脳が量子レベルでコミュニケートする機械を用意して、読者に馴染む一つの宇宙なる通念を覆す。後者を採る本書は、他の世界の機械と並列処理を行なう量子コンピュータが、この世界の人物に対応する他の世界の人物に精神を飛ばして、世界の危機を他の世界の情報によって打開しようとする。物語はこの時主人公に、どの世界にいるべきかという選択を迫る。2018/09/12
ひげお
4
科学が政治や戦争の道具にならない世界を理想郷とする。 他の作品にも共通する著者の考え方が好きです。 抜け殻になったヒュー達の体がどうなるのかが気になりますが。 2013/02/09
tamanya7
4
「多世界解釈」に基づいた並行世界モノ。かなり強引な持っていき方だし、都合よすぎる点もままあるけれど、盛り上げ方うまいし、何より、この作者の大法螺(褒めている)は読んでいて楽しい。「別天地」へ渡った者も、残った者も、多元宇宙が自らを癒すための一因でしかなく、自我の拡張により変化•同化していく、という考えは、何となくアリな気がする。個人的にはカロムの生き方が一番好きかな。2012/11/11
ろい
3
ホーガンらしいゴリゴリの理論部分が、複雑なストーリーとは必ずしもリンクし切れていない作品。作品としては面白いし、多重世界の解釈も面白いのだが、移動元が圧倒的に有利になる点や、その間の意識は単純になくなるところなど干渉についての考察が今ひとつだったのが不満。なんだろうなぁ、この割り切れない感じ。2016/09/16