内容説明
「地球市」と呼ばれるその世界は、全長1500フィート、七層から成る要塞のごとき都市だった。しかも年に36.5マイルずつレール上を進む可動式都市である。そんな閉鎖空間に生まれ育った主人公ヘルワードは、成人を迎えた日に初めて都市の外へ出ることを許された。だがそこで彼が見たのは…月も太陽もいびつに歪んだ異常な光景だった。英国SF協会賞に輝く、鬼才の最高傑作。
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- 評価
伝説の文庫レーベル本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tetchy
46
世界の理をじっくり丹念に描くことで読者は主人公ヘルワードと同じようになぜ都市は動かなければならないのか?というこの世界の摂理を徐々に理解していく。しかしそんな摂理は第4部で驚くべき転換を見せる。そして最終章で補完される驚きの真相は、ほとんどの読者がある有名なSF映画のラストシーンを想起するだろう。しかしだからといって本書を先行作の二番煎じと判断してはいけない。この作品は我々が住む世界の原理原則が科学者、数学者によって作られた論理の上で成り立っていることであり、それが果たして真理なのかを問う物語なのだから。2013/07/17
MATHILDA&LEON
31
久々に再読。1度目はかなり昔に読み、その時にはイマイチ理解しきれずモヤモヤとしたまま終わったが、時を経て改めてじっくりと読み返してみると、以前は分からなかったことも多少は見えてくる。この物語に関しては、たぶん何度も読むことで理解とともに味わいが増すのだろう。“歩みを止めたら死んでしまう都市”から何故か『風の谷のナウシカ』の王蟲を連想。2016/03/28
山口透析鉄
26
この本は昔のサンリオSF文庫本を図書館経由で借りて読みました。国会図書館の蔵書だったらしく、当時住んでいた文京区の図書館内で一気に読んで返したのを覚えています。もう30年以上も前です。 負の曲率に従った世界で太陽の形も異なる世界をずっと移動している都市の話に痺れました。 どういう種明かしになるのかな?と期待したらかなり驚いた記憶が……再読したい本です。そういうのが一杯あります。2024/11/07
宇宙猫
22
★★★★★ 「隣接界」が合わなかったし、50年前に書かれたものだからどうかと思ったけど、無茶苦茶おもしろかった。最近の難しすぎる科学設定より、この時代の強引さの方が楽しく読める。明かされる結末も分かり易くてよかった。2025/04/19
おーすが
16
秘密ギルドによって荒地をつねに移動させられる都市、という強烈ビジュアルでもって、導入から魅力されたが、読み進むうちに謎は益々深まり…。壮大な世界観に比べ、人物の心理描写は意外と淡白。でも物語にギミックが多く最後まで驚かせてくれる。こういうSF、久しぶり。プリーストの玩具箱を覗いている感じ。時間単位はマイルだと思ってたけど途中で年も出て来てどっちでもいいんか?と混乱した。2024/06/30