内容説明
この惑星では、「わたし」という言葉が禁じられている。自己を主張するのは猥褻で卑しむべきことなのだ。サラ州の第二王子として生まれたキノールは、主権者だった父が逝去したのち、後を継いだ兄の粛清を逃れて国を出た。結ばれぬ絆姉妹への想いを胸に世界を遍歴するうち、彼は一人の地球人と巡りあう。やがて彼が迎えた“変化の時”とは。ネビュラ賞受賞の栄に輝く鬼才の野心作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はにまる
4
一人称で自分を語るのがタブーとなっている世界、という設定なのだが、日本語で一人称の"私"が無い文は普通なので、翻訳だとそのあたり表現の面白さを感じるのが難しいのかもしれない。物語は、いかにもシルヴァーバーグらしい中世的未来世界とドラッグカルチャー的幻想の物語。本書のメインのテーマではないが、この世界で語られている神話がユニーク。この惑星の神は、かつて地球から植民した人々がこの惑星で見出した神々であり、世界創造や人類創造の神ではない。なぜ彼らが植民者の神として神話が成立したのか考えると面白い2019/05/18
記憶喪失した男
1
製作意図のわからない本であった。 一人称を使わない惑星の物語という前ふりなのであるが、 主人公は物語の序盤から惑星の習慣に反抗し、一人称を使い始めるのである。 なので、まるで異世界描写になっていない。