出版社内容情報
吟遊詩人の競技会を前に、都には技自慢が集まっていた。優勝の呼び声も高いダリエン、そして強権的な兄から逃れ、女であることを隠しているリン。そんななか、〈視者〉ヴァラニルが人々に権力者である宮廷詩人を糾弾する歌を聞かせる。ダニエルとリンは、ヴァラニルが示す〈道〉を求めて都をあとにするが、宮廷詩人の放つ追っ手が、彼らに迫る。友情と裏切り、血の呪術、秘められた恋……。歌に満ちた世界を描く驚異の新人の話題作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
K
93
激動の下巻。登場人物やそれを取り巻く人間関係に至っては上巻と比べると影も形もない(笑)各々が離合集散しながら旅をしているため群像劇に近いです。さらには宮廷詩人の秘密や過去の伝説を解き明かすミステリ要素も。惜しむらくは本作の根幹を為す吟遊詩人の詩や魔法による事象が文章では"完全には"表現できないことでしょうか。とは言え神話を基に作り込まれた世界観にじっくりと浸ることが出来る良作であると思います。加えてあとがきで判明した三部作構成!まだまだこの世界観を味わうことが出来るとの事なので、次回作にも期待です(^^)2018/05/25
星落秋風五丈原
29
女性と男性、詩人と王権、権威と世俗の評判など、いくつかの対立軸が提示されるため、比較的物語世界を理解するのは容易い。つまりは王道を踏襲している。帯から、十二年に一度の競技会に向けて何かが発動するまでがクライマックスかと思ったが、主人公達が経験していくイベントに過ぎず、前半に登場する。作品中作者の思い入れが強いのはヒロイン二人。女性は富裕ならば婚姻によって家を結ぶ道具と看做され、吟遊詩人になる事は認められていない。いわば中世と同じような扱いであるが決まりきった定めに逆らおうとする力が、物語を動かしてゆく。 2017/12/28
かもめ通信
16
書評サイト本が好き!を通じての頂き物。主役級の人物が次々と登場し、それぞれの物語が語られていく群像劇。ときおりふいにおとずれる夢か幻かという不思議な場面が鮮やかで、まさに魔法の力を感じさせるものになっている。とりわけ身分や財があったとしても女は政略結婚の道具か、愛玩程度の扱いしか望めなさそうな社会にあって、やむを得ない事情からとはいえ、たくましく自分の道を切り開いていこうとする女性たちの力強さに思わず喝采をおくってしまう。デビュー作にして三部作の第一部とのこと。続編が楽しみだ。2018/01/10
彩音
12
とても読みやすく、上下巻でしたがあっという間に読んでしまいました。吟遊詩人と魔法がテーマだったのですが、ちょっと魔法要素が少ない…?とちらかというと、女への差別や王や権威の不条理など社会的要素が大きかったように思います。三部作らしいので次を楽しみにしたいです。2018/02/07
のん
8
登場人物達が繋がってくる。そしてそれぞれの道。 面白かったです。終わったと思ったら、3部作だそうです。ただ、続編ではないらしいので、嬉しいような残念なような。2018/06/28