出版社内容情報
『ずっとお城で暮らしてる』『丘の屋敷』「くじ」など
名作を遺した鬼才に捧げる18編
シャーリイ・ジャクスン賞、ブラム・ストーカー賞受賞
『丘の屋敷』『ずっとお城で暮らしてる』など数々の名作を遺した鬼才シャーリイ・ジャクスン。日常に潜む不安と恐怖、邪悪な超自然的存在との出会いや人間心理の奥底に流れる悪意を鮮やかな筆致で描いた彼女に敬意を表し、ケリー・リンク、ジョイス・キャロル・オーツら当代の幻想文学の名手が書き下ろした傑作18編を収録。シャーリイ・ジャクスン賞、ブラム・ストーカー賞受賞。
■目次
序文(エレン・ダトロウ)
M・リッカート「弔いの鳥」
エリザベス・ハンド「所有者直販物件」
ショーニン・マグワイア「深い森の中で――そこでは光が違う」
カルメン・マリア・マチャド「百マイルと一マイル」
カッサンドラ・コー「穏やかな死者たち」
ジョン・ランガン「生き物のようなもの」
カレン・ヒューラー「冥銭」
ベンジャミン・パーシィ「鬼女」
ジョイス・キャロル・オーツ「ご自由にお持ちください」
リチャード・カドリー「パリへの旅」
ポール・トレンブレイ「パーティー」
スティーブン・グレアム・ジョーンズ「精錬所への道」
ジェフリー・フォード「柵の出入り口」
ジェマ・ファイルズ「苦悩の梨」
ジョシュ・マラーマン「晩餐」
ジュヌヴィエーヴ・ヴァレンタイン「遅かれ早かれあなたの奥さんは……」
レアード・バロン「抜き足差し足」
ケリー・リンク「スキンダーのヴェール」
謝辞(エレン・ダトロウ)
編者紹介
訳者紹介
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
76
『猿の手』×『墓地を見下ろす家』な「冥銭」。死者との思い出を美化の甘さと拙さ、エゴが露呈していく過程は居た堪れなさ過ぎて「もう、止めてくれ!」と叫びたくなる。「鬼女」で過去の過ちを犯した島で出向いた妻にも母にもなり切れない女性が遭遇する恐怖譚。ライラがいないと言われる場面は『バニー・レイクは行方不明』や『ウィッカーマン』を思い出した。映画『ミッド・サマー』好きにお勧めの短編です!「晩餐」は一種のディストピアもの。兄の感化に肝を冷やすが密告された妹にとってこれ以上、自分を偽らなくて済む事と言う落差が凄まじい2024/01/04
あたびー
53
ようやっと読み終えました。何しろ500頁超えで余白も少なく字も小さく、かなりのヴォリュームなのです。シャーリィ・ジャクスン賞を受けた作家を中心に、彼女の作風に寄せた作品を書き下ろしています。編者はその筋の(どんな筋や😅)大家エレン・ダトロウ。大好きな作家も、初読みの作家も。「これってジャクスン風味?むしろキング?」と首を傾げながら読むのも楽しかったです。ホラーみのあるものもないものもありますが、皆一様に不思議感幻想感を抱え、必ず目を離せない女性が出てきます。強い女、蠱惑的な女、不安定な女、支配される女…2024/07/22
空猫
34
ジャクスンへのオマージュアンソロジー。実力派揃いなので短編とは言え濃厚で読み応えがあり読了に時間がかかった。多数が女性作家で特有の生々しさもあり。お気に入りは …「私たちにつきまとっているのは愛じゃない、後悔なんだね」カレン・ヒューラー『冥銭』。…「チェックインした時に、娘さんなんかいなかったけどね」ベンジャミン・パーシイ『鬼女』。返却期限ギリになってしまった。もっとじっくり読みたかった。 2024/02/02
翠埜もぐら
26
「所有者直販物件」が訳わからなかったけれどなんとなく好き。撤収の潔さも最後に「所有者直販物件」の看板引っこ抜く思い切りの良さも、この手の不条理物小説には珍しい。全然決着ついてないのに綺麗な終わりかただと思ってしまいました。「丘の屋敷」でシャーリー・ジャクソンを知ってから、「恐怖」ではない「不条理」な小説の面白さに目覚めてしまったのですが、白黒つけたがった若い頃には楽しめなかっただろうなぁ。日常に潜む悪夢はいただけないけれど、非日常に潜む悪夢は他人事だから楽しめるのかしら。2023/12/28
くさてる
25
トリビュートの名にふさわしく、不穏で不思議で不安な世界が並んでいる。といってもそのもののオマージュというわけではなく、独自の世界が広がって面白く読みました。お気に入りは、ごく普通の中年女性たちが陥る日常の罠がおぞましいハンド「所有物直販物件」さすがオーツというか遠慮してよオーツな「ご自由にお持ちください」読後いつまでも落ちつかない気持ちが残るヴァレンタイン「遅かれ早かれあなたの奥さんは…」ラストの不気味さがピカイチなバロン「抜き足差し足」やっぱリンクは最高だな!の「スキンダーのヴェール」です。おすすめ。2023/11/25