出版社内容情報
〈強き者の島〉の王ブランの妹がアイルランドの上王に嫁いだとき、争いの種は蒔かれた。世界幻想文学大賞生涯功労賞を受けた大家が描く壮絶な悲劇。『マビノギオン』第2話。
内容説明
“強き者の島”の王ブランには三人の弟と一人の妹がいた。“旧き民”の習わしで王位は彼の息子ではなく、妹ブランウェンの息子が継ぐはずだった。だがアイルランドの上王が妹に求婚したとき、ブランの心は揺れた。妹が嫁げば自分の息子が王位を継げるではないか。こうしてブランウェンは異国に嫁ぎ、悲劇の種は蒔かれた。世界幻想文学大賞生涯功労賞の大家が描く、壮絶な悲劇。
著者等紹介
ウォルトン,エヴァンジェリン[ウォルトン,エヴァンジェリン] [Walton,Evangeline]
1907年、米インディアナ州生まれ。1936年“マビノギオン物語”の第4話THE VIRGIN AND THE SWINEを出版。その後いくつかの作品を発表したものの沈黙していたが、1970年代初頭リン・カーターによって再発見され、“マビノギオン物語”第1話、第2話、第3話も世にでることになり、称賛を浴びた。そしてその生涯におけるファンタジー文学への功績を認められ、1989年世界幻想文学大賞で生涯功労賞を贈られた。1996年歿
田村美佐子[タムラミサコ]
1969年生まれ。上智大学大学院文学研究科英米文学専攻博士前期課程修了(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鳩羽
11
誰かが悪かったわけではなく、民全体の習わしよりも夫や家族への情愛を優先させた。それが積もり積もって、あるいは連鎖して、旧き信仰が弱体化していく。そうなると、旧き民の末も運命を共にしなければならないのかもしれない。愛という権力を振りかざす新しき民が、もうすぐやってくるのだろうという斜陽の雰囲気を感じさせる。一巻目よりも、おもしろかった。2014/07/18
星落秋風五丈原
11
日本でも古代においては女性が王となったことがあり興味深い。 第一作の嫁取りに見られた既知は欲を満たすための策略に相思相愛で結ばれたカップルは、移ろいやすい愛情と誤解に身も心も傷ついていく悲劇のカップルにとって代わられる。生命=女、破壊=男とくっきりと分けられ第一作ではあれほど強かった女性達が男性達に打ちのめされる対照的な作品。その最たるものがブランウェンで、熱烈に恋い焦がれた夫によって料理女に身を落とされ、義兄に実子と夫を殺されたりと絶頂と奈落を味わう。ここまで一片の救いももたらされないヒロインも珍しい。2014/07/02
遊未
5
第二枝。平和に過ごす王家に求婚に現れたアイルランドの王マソルフ。愛と少し揺れ動いた心、善と悪の存在。悲劇の種は育ち全ての人々を覆い尽くします。後悔は積み重なっていくけれど、取り戻す術はありません。少しだけぶれた心が、感情が愛するものすべてを不幸にするし、全てを滅ぼしていしまいます。結果のみを目指すのが悪でしょうか。ブランウェンの死は救いでしょう。2020/12/30
mayuri(Toli)
5
この本すき! と思いました。1枝のアンヌウヴンもとても好きだったのですが、こちらの方が好きかも。 まず登場人物のなんと魅力的な事でしょうか。お話しとしては愛ゆえの、行き過ぎた肉親への愛情ゆえの痛々しすぎるほどの哀しみと戦の悲劇なのですが、とにかく登場人物が魅力的で、3枝、4枝未読でも、この2枝が一番の傑作なんじゃないかって思えるくらいよかったです。 スィールの子供たちの中で、唯一この世界に残された次男のマナウィダンが、第3枝でどうなるか楽しみだし、なんといっても次はプラデリが重要な位置なので、楽しみ。2016/04/04
ナギ
5
ウェールズ中世神話・騎士物語集「マビノギオン」の第2部。〈強き者の島〉の王・ブランが、嫡子相続を心密かに考え、本来の後継ぎである妹・ブランウェンをアイルランドの上王に嫁がせたことから、悲劇が生まれる。第1部の主役の息子も出てきたりと、何かと楽しい小説。2015/06/01