出版社内容情報
夜霧と城館、墓地と黒い森、マントを羽織った黒衣の人影。ヨーロッパの最深部に見え隠れする魅惑的な光景は、日本においても、作家たちの情念を掻きたててやまなかった。その代表格たる須永朝彦と菊地秀行を巻頭に据えた本書は、日本の新旧文豪たちによる吸血鬼小説と名作翻訳の集大成である。
文人たちが織りなす、紅蓮の血と哀切な宿命の饗宴。巻頭に須永による蠱惑の手書き掌篇を、巻末に深井國による幻の吸血絵物語を特別収録!
内容説明
夜霧と城館、墓地と黒い森、マントを羽織った黒衣の人影。ヨーロッパの最深部に見え隠れする魅惑的な光景は、日本においても、作家たちの情念を掻きたててやまなかった。その代表格たる須永朝彦と菊地秀行を先陣に据えた本書は、日本の新旧文豪たちによる吸血鬼小説と名作翻訳の集大成である。巻頭に須永による蠱惑の手書き掌篇を、巻末に深井国による幻の吸血鬼絵物語を特別収録。
著者等紹介
東雅夫[ヒガシマサオ]
1958年神奈川県生まれ。早稲田大学卒。文芸評論家、アンソロジスト。『幻想文学』と『幽』の編集長を歴任。著書に『遠野物語と怪談の時代』(日本推理作家協会賞受賞)ほか(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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旅するランナー
219
【日本の夏は、やっぱり怪談】〈其の三・和洋折衷〉吸血鬼による呟き·接吻、奈落に落ちゐる痙攣·淫欲·悦楽。さういうものに、ほんたうに、妖気と神秘を感じたでせう。格調高く蠱惑的な文章に、すつかり魅了されてしまつた。退廃と禁忌の世界に誘われるのじや。 2022/08/13
パトラッシュ
127
欧州生まれの吸血鬼を日本の近代文学がいかに取り込み、文字通り血肉化してきたのか。ポリドリ作品はナポレオン時代の直後に生まれ、その後の政治的抑圧が厳しい時代にゴーチェらのロマン主義文学が興隆した。同じく前世紀前半の日本でも戦争へ向かう時代の空気を察知していた佐藤春夫や芥川は、同様な思いで翻訳紹介したのでは。戦後に平和を得ても今度は巨大な社会の重みにあえぐ人びとが、再び吸血鬼に現実破壊の夢を託したのが須永朝彦や菊池秀行作品に見えてくる。こうした経過を経て漫画やゲームに流れ込み、今日の隆盛への土台を築いたのだ。2022/09/29
KAZOO
98
編纂者の東さんの須永朝彦さんへのオマージュが詰まった吸血鬼の作品集です。須永さんや佐藤春夫、芥川龍之介の訳した海外物がありますが、主に日本の吸血鬼がらみの作品が多いという事でかなり楽しめました。特に日本のものではこの分野の大家である菊池秀光さんや日影丈吉、小泉八雲のものがめずらしく結構掘り出し物が多いように感じられました。また昔懐かしい深井国さんの絵が昔読んだSF小説(フィリップ・ホセ・ファーマーの階層宇宙シリーズ)を思い出させてくれました2023/12/24
HANA
79
深紅の貴族、憂い顔の捕食者。洋の東西を問わず、頽廃と沈鬱と耽美をカクテルにしたような吸血鬼の魅力を余すところなく収録した一冊。貴族的なバイロン型の吸血鬼がその中心なんだけど、冒頭の須永朝彦の一連の小説でその魅力は紹介されつくしているような。その耽美な世界を堪能しつくしたところで、日本人作家による一風変わった吸血鬼小説が用意されるという贅の尽くしっぷり。後半の海外の古典ともいうべき小説はほぼ既読なのだが、矢野目源一訳のシュウオップは何度読んでも素晴らしいな。吸血鬼というより貴族的な趣味に満ちた一冊でした。2022/08/16
藤月はな(灯れ松明の火)
64
『吸血鬼ラスヴァン』と似た作品がありつつも須永氏の『彼の最期』の手稿(原稿用紙のデザインもまた、洒落ているのだ!)も収録される贅沢な作り。淫魔的でありながらも『インタヴュー・ウィズ・ヴァンパイア』の成熟しているのに永遠に大人になれない彼女の悲哀を思い出させる「夜明けの吸血鬼」に対し、柴田錬三郎氏の「吸血鬼」の無粋で無自覚な罪に憤懣やるかたない中での終幕に思わず、喝采を挙げてしまう。しかし、「クラリモンド」は順当にしろ、まさか「忠五郎のはなし」も吸血鬼括りにされるとはな・・・。目から鱗である。2022/09/19
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