内容説明
明治以降、日本の怪奇小説は、怪異を客観化することで大きく革新された。幻想の科学的な解釈。社会の合理主義から逸脱し怪奇を紡ぎ出す、意識の闇への沈潜。あるいは、疑問や躊躇を抱きつつ怪奇幻想を受容し肯定する懐疑精神…。さらに、戦後半世紀の変化が怪奇小説にさらなる変容をもたらす。ミステリ、SF等のジャンルを超えた作家たちによる、多彩な17編を収める最終巻。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
踊る猫
33
いよいよ現代の小説が中心の最終巻へ。小松左京・半村良・筒井康隆といったサイエンス・フィクションの書き手はホラーを書かせても唯一無二の面白さを発揮する。特に筒井康隆「遠い座敷」が面白く、ジャンルを横断して面白いものを書ける筒井康隆の本領を垣間見たという気がした。それ以外にも良い作品が目白押し。いや、つまらない作品もないでもないがこれは完全に好みの問題なので語らない方が良いだろう。日本でしか書かれ得なかったホラーの面白さを十二分に未読し尽くしたという気がする。このアンソロジー、夏になると読み返す一冊となるかも2019/08/05
メタボン
28
☆☆☆★ 星新一の作品としては異色の「門のある家」(ごたごた気流に収録)が良かった。筒井康隆「遠い座敷」小松左京「くだんのはは」は何度読んでも良い。都築道夫「はだか川心中」(似たような作品があったような気がする)。他印象に残った作品は、三浦哲郎「楕円形の故郷」中井英夫「影人」阿刀田高「縄」赤江瀑「海贄考」高橋克彦「大好きな姉」。2023/05/25
藤月はな(灯れ松明の火)
19
「お守り」は不条理の恐怖の中に一面化する個性を描いていると思います。「出口」は鰻の正体に嫌な気分に。「名笛秘曲」は事実が重なり合う瞬間、本当に薄気味が悪かったです。「門のある家」と「くだんのはは」、「楕円形の故郷」、「縄」がとても良い。吸血鬼譚の「影人」は中井英夫作品らしく、耽美で「ぼろんじ」は澁澤龍彦作品らしく、淫靡。「海贄考」、「風」の収録も嬉しいです^^「大好きな姉」は女になると経験することを誤解していた主人公の罪な無知を馬鹿にしていたのですがまさか・・・・・。2012/08/15
あたびー
15
ずっと以前図書館から借りて読んだ本が、ブックオフオンラインから届いた。読み始めるやいなやあっという間に引きずり込まれて、次へ次へと読み進みたくなる魔術の様な短編群。東雅夫氏が、概ね年代順に編んだと言う3冊組の3巻目であるので、私の子供時代に一世を風靡していた星新一、小松左京、筒井康隆3氏の作品も。別に怪異は起こらないのに何とも言えない嫌な味の吉行淳之介「出口」。徹頭徹尾正体不明の半村良「箪笥」。終盤一転冷水を浴びせられる高橋克彦「大好きな姉」。幻想とはこの作品のこと皆川博子「風」。などなど。2019/02/04
miroku
12
既読作品も多いが、面白そうな人も数人見つけた♪ 楽しみが増えた♪2011/08/17