出版社内容情報
ベネデットには、11歳で孤児院に拾われるまでの記憶がない。あるのは繰り返し見る両親の死の悪夢だけだ。魔力を発現して以来、護衛剣士のリザベッタと共にヴェネツィア共和国の魔術師の一員として、陰の世界に生きている。あるとき魔術師たちは元首暗殺計画の情報を掴んだ。計画は未然に防いだが、その背後にはベネデットらを巻き込む陰謀が……。権謀術数のただ中に身を置く魔術師の姿を描く第五回ファンタジイ新人賞佳作作品。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
春一番
43
実際の歴史の陰で暗躍する魔術師を描いたファンタジー。この物語の魔術師は真理を目指し研究に没頭する隠者などではなく、国家の諜報員として権謀術数渦巻く裏社会を生きる即物主義者だ。そのためか魔術の設定も神秘めいたものというよりかはどこかシステマティックかつ現代的なもので、実戦で使えるのは両腕につけた腕輪に込められた6回分の魔術だけというもの。それをチェスのように戦略を組み立てて戦うという魔術の設定を理論的と好意的にとらえるか神秘性やよい意味での古めかしさがないと否定的にとらえるかで作品の評価が分かれると思う。2022/10/03
くたくた
39
第5回創元ファンタジイ新人賞佳作。中世ヴェネツィアを舞台に、詳細な歴史的背景に魔術師を掛け合わせた歴史ファンタジー大作の趣。緻密に構成されているのは疑わないが、全体的に言葉の選び方が雑なのがとても残念な気持ちにさせられる。この本そのものが「ウェルギリウスの呪文書」のようで、何かが起こりそうなエネルギーを感じるのに表現が良くないせいで没入できず心を動かされない。読書の喜びや高揚感を感じられないので、いきおい分析的に読む事になり、さらに文章の粗が気になってしまう、という悪循環に陥った。2024/12/11
よっち
36
16世紀ヴェネツィア共和国。護衛剣士リザベッタと共に魔術師の一員として陰の世界に生きるベネデットが、元首暗殺計画の情報を掴むファンタジー。仲間たちと計画を未然に防いだものの陰謀に巻き込まれるベネデットたちと、浮かび上がるリザベッタが仇として追い続けていた女魔術師の存在。それがベネデットが11歳で孤児院に拾われるまでの記憶がない理由や、古代の古文書を巡る当時の国際情勢も絡めた闘争に繋がる展開で、文章にはやや硬さも感じられましたけど、それが物語の重厚な雰囲気にも繋がっていて、なかなか読み応えがある物語でした。2022/05/24
宇宙猫
18
★★★★ 中世ヴェネツィアで魔術師はキリスト教に反する存在として、蔑まされながら諜報活動に使われたいた。魔術師ベネディクトは、ヴェネツィアに対するテロを追ううちに大きな陰謀に巻き込まれる。 バトルシーンが多く、腕輪に触れて魔術を発動して戦う様子が「魔法科高校の劣等生」みたい。主人公が迂闊で集中力を欠いて窮地に陥るので、「劣等生」のようなヒーローものじゃなくて壁を乗り越えるタイプかな。好きな世界観で楽しく読めた。2022/09/02
スプリント
13
歴史とうまくかみ合わさったファンタジー 魔法の概念と護衛剣士の役割も緻密に考えられていて違和感なく没入。2022/08/09