内容説明
円卓の旗のもと騎士たちは集い、アーサー王の治世はその理想を全うしたかに見えた。しかし、無二の親友ランスロットは妻のグェネヴィアと道ならぬ恋を育み、おまけに国王の失墜を狙う策謀まで渦巻きはじめていた。少年ウォートの運命とは、悲劇の王として生きることにあったのか?波瀾万丈の物語は、やがて苦渋に満ちた人間ドラマへ。叙事詩、ついにクライマックスを迎える。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
121
前半のアーサーの少年時代の長閑な時は読んでいて楽しかった。森の散策の中でのマーリンや、過去からの王たちとの出会いなど牧歌的な雰囲気に散りばめられたコミック的要素が、彼が王となってからも続くのだが、主役はやはりランスロットに取って代わる。もはや時代が何が何だかわからなくなりながらも、騎士たちの活躍は読んでいて楽しい。微妙な終わりとも思えるのだが、他の方の感想を拝見するに、この話のトーンを維持するには必要だったのかもしれない。やはり本家本元をきちんと再読してから戻ってこよう。2017/08/12
NAO
70
マリーンがいなくなり、アーサー王は力ではなく、正義を信じる騎士の組織を作った。円卓の旗のもとに騎士たちは集まり、アーサー王の治世は、彼の理想通りのものとなったかにみえた。妻に裏切られ息子に殺されるという既定の事実があるため、後半は、ファンタジーとはいえ、重い人間ドラマとならざるをえない。前半のように奇抜なことがらを盛り込むこともあまりできず、この作品らしさをだすのは大変だったのではないだろうか。2020/03/09
syaori
43
危惧したとおり〈力〉によって打ち立てられた〈正義〉は行き詰まってしまいます。皮肉にもアーサーが実現した平和が力の行き場をなくしてしまうことに。戦いはなくなったのに戦う人間は残っていて、それを霊的なものに向けるための聖杯探求の効果もなく、力によらない正義、法律は彼を縛る。一人の正義は他の誰かの不幸なのか、正義とは何なのか、なぜ人は戦うのか。答えの出ない問題の中で、最後は彼が灯した理想の火を思い涙が止まりませんでした。今も人は戦っているけれど、彼から託された尊い気高い火を、どうか燃やし続けていられますように。2017/10/31
星落秋風五丈原
28
【ガーディアン必読1000冊】ランスロットも「完璧」というイメージとは異なり容貌にコンプレックスを抱く人間として描かれる。本来上下巻で完結するはずだったが『The Book of Merlyn』へ繋がる。第二次大戦中執筆していたホワイトは戦争自体にも疑問を抱きアーサーとの問答の中で「不正は理性によって正さなくてはならないのじゃ、力ではなく」とマーリンに言わせる。モ―ドレッドとの最後の戦いに挑む前のアーサー王の戦争論は、まぎれもなくホワイトの同時代人のみならず未来のイングランドに生きる人々へのメッセージ。2015/11/09
明智紫苑
14
再読。意図的に時代錯誤要素を組み込む事により、アーサー王伝説の政治的な面を明らかにしている。まさしく、現代的だ。2018/10/24
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- 和書
- 許されざる絆